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天国へは行けなかった

 目の前に流れるのはチョコの滝。

 滝から流れてくるチョコの川のそばでは、色とりどりな棒つきキャンディやペロペロキャンディーが咲き乱れている。


 こんなところにいたら、虫歯になりそう。

 ってか、匂いが甘い……


 光景にドン引きしつつも、自分の言葉に引っ掛かる。


 匂いが、甘い?


 ついさっきまで、その事について考えていたような気がする。


 そこまで考えて、目を覚ます。


「夢か。」


 眠る前のあの甘い匂いと凛から聞いたお菓子の夢で、ひどい目に合うところだったと起き上がろうとして、両手が後ろで縛られていることに気が付く。


 そこで、あぁ、誘拐事件に巻き込まれたんだったと思い出す。

 視線を巡らせば、どうやら荷物置き場のような部屋にいることがわかった。

 元はそれなりの部屋だったのだろう。結構大きな窓があり、ぼろぼろだが、カーテンもつけられている。さすがにガラスは割れてない。

 部屋のすみには木箱がつまれていたり、木屑に戻った机や椅子も放り込まれている。


 そして、隣に凛が寝転がっている。


「凛、凛、起きろ。」


 小さい声で呼び掛けるが返ってくるのは、「むにゃむにゃ」、「もっと食べる……」、「チョコうまうま」などの寝言だ。


 だめだ。

 サックリあきらめて、反対側の人にも声をかけてみる。


「もしもし。大丈夫ですか?」

「……」


 こっちは、反応がない。


 直ぐやられたひとだよね。だったらしばらくこのままでいっか。


 こっちも直ぐにあきらめて、魔法が使えるか試してみるが、さすがに使えなかった。


「ですよねー。」


 ごそごそと動いていると手に何か冷たいものが当たる。


 なんだこれ。


 ツンツンとつつき、指で形をなぞってみる。


「いたっ。」


 指に痛みが走り、ついつい声が出てしまった。

 どうやらガラスの欠片らしいそれを、上手いこと右手に握り、縄を切ることにした。


 しかし、上手くいかず、反対の手を切ったり、余分な力が入りガラスを持っている手に食い込む。


「……っ。」


 悪戦苦闘していると、直ぐやられた人が身動ぎする。


「っっった。……どこだ、ここ?」

「その声……明輝?」

「は?愛奈?」


 どうやら、当たりのようだ。


「なにやってんの?」

「いや、助けにきたんじゃん。」

「いや、やられるの早すぎだから。」


 明輝と話ながらも手は休めない。

 プチン、と一本、紐がきれた。


 よし、と思ったと同時に部屋の扉が開く。


「おっ、目ぇ覚めたか。」


 犯人のおっさんの一人が現れた。

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