天使が迎えに来るかもしれない
もう少しでマダムの店に着くと言うところで、前からあわてて走って来る人がいた。
しかも、その人は周りの人たちにぶつかりながら走っている。
危ないなぁと思いながら、道の隅っこによる。
凛が手を離してくれないため、ちょっとまごつきながら、二人で避ける。
てか、そろそろ手を離してくれないかなぁ。
「え?」
始めはなにが起こったのかがわからなかった。
気がつくと、裏路地側に二人揃って尻餅をついていた。
状況がわかり、凛がバランスを崩して巻き込まれたのかと思った。
しかし、直ぐに違うと気づく。
「おー、本当に上玉だな。」
見たことのないおっさんが三人いたのだ。
なんだかニマニマ笑っていて、いい人ではないのは明らかである。
凛も悪い部類の人たちだと気づいたのだろう。
凛があからさまに顔色を変えたのを見て、私はわ小さく舌打ちをする。
直ぐに立ち上がり、逃げる準備をしようとするが、隣のお姫様は立ち上がらない。
「凛?」
不機嫌丸出しで、何してるの?と言外に匂わせながら呼び掛ければ、
「あ、足に力が……」
なんとも情けない一言に再び舌打ちをする。
しかも、手を離してくれないため、私は引っ張られる形になっている。
「とりあえず、手を離して!」
「逃げられる前に捕まえろ!!」
おっさんたちが一斉に動き出す。
頭から袋を被せようとしてくる。
めちゃくちゃに暴れようとするが、隣の役立たずがしがみついて来るためあっさりと捕まる。
視界が暗くなる。
「もー。」
ばたばたと足をバタつかせる。
そんなことをしていると。
「ちょっと、まったー!!」
誰かが助けに入ってくれたようだ。
「うぇっ。」
どすんだかバタンだか音がしたと思ったら、直ぐに沈黙させられた。
早いな。
「こいつも一緒に連れてくぞ。」
「早くしろ!!」
むむむー!!
もう一度暴れようとするが、それより先に甘ったるい匂いがしてくる。
臭っさ。なにこれ。めっちゃ甘い匂い!!臭っさ。
思わず息を止める。
しかし、いつまでも息を止めることは出来ない。
しかも、なんだか眠くなってきたよ、パトラッシュ。
あっという間に意識を手放してしまったのだった。