理科的な実験
理科の実験だと言う名目でアイスキャンディを作ったのだから、容器が試験管だったのだ。
たしか、氷に塩を入れると速く冷える実験だった。
冷静に考えれば、試験管に入れて食べちゃだめだろと思うのだが、当時小学生だった私たちは先生の「消毒してあるから」を鵜呑みにしたのである。
実際に調子悪くなる人は誰もいなかった。
しかし、思い出してみれば結構適当なことをしてきたような気がする。
空き缶に穴を空けて、中に粗目を入れ、下からアルコールランプで熱し、綿菓子を作る授業をしたり(グループ毎にどう回すかは自分たちで考えなさいだったが、結局うまく行かず先生が電動ドリルと合体させて作ってくれた)、魚の解剖をしたときには、給食の時間に魚のフライが一品増えたりした。
それも今考えれば、理科と言うより、家庭科な気がする。
やりたい放題だな。
閑話休題。
「なるほどねぇ。」
納得するマダムに提案をする。
「それっぽい材料があれば、今からでも出来るんじゃないですかね。」
こっちには魔法もあるんだし。
私の言葉にマダムが目をキラキラさせて、部屋を飛び出して行った。
しばらくすると、細身のグラスにジュースが入った物と箸を二セット持って帰ってきた。
「はい!」
「私がやるの?」
「当たり前でしょ。」
笑顔で、はい!とグラスを渡される。
はいはい、やれば良いんでしょ。
グラスに両手で箸を一本ずつ立てて、そのまま氷魔法で冷す。
「たぶん、時間をかけて冷やし固めた方のが美味しいとは思いますが。」
さすが、魔法は便利だ。
あっという間にジュースが固まる。
「で、後は周りが少し溶けたところを見計らって外せば出来上がりです。」
ちなみに私は、冷え性なので、グラスを握って温めるなんてことが無駄だと言うことを知っている。
すると、何を思ったのかマダムがグラスを近くにあった金槌の様なもので叩き割る。
「え!なにやってんの?」
「この方が早いでしょ?」
いやいや、ウインクしたってだめだかんな。
「はい、どうぞ。」
「どうぞ、じゃないですよ。」
しかし、いくら言ったって引かないだろうとしぶしぶアイスキャンディを受けとる。
もう一つも同じようにマダムがグラスを割るのを眺めながら、アイスキャンディをなめる。
やっぱり、急速冷凍は味が落ちるな。
だが、アイスキャンディという物自体を食べたことのないマダムは、大喜びをして食べていたのだった。