身長は正義だ
そう。絶対的に足りないのだ。
かっこいいに必要な、身長が。
小さい頃から身体測定で小さすぎて、健診に引っ掛かっていたのだ。
でも、あの人曰く、「お姉ちゃんより、大きく生まれてきたから、大きくなるよ」と言っていた。
家族みんな割と身長がある方だったから希望を抱いていたのだ。
しかし、現実は甘くなかった。
一向に伸びない身長。
中学の制服を買うときに、「これから伸びるだろう」とスカートを膝下ちょっと長めで買ったのに、スカートは一向に膝に近づいていかなかった。
お姉ちゃんは、中三で身長が伸び、勿体無いけどと、もうワンセット買ったというのに……
「ぐっ。身長……」
「身長って、そんなに大事?」
「身長が高い人にはこの気持ちはわからないでしょうね。」
「えー、ちっちゃいほうが絶対可愛いって!!」
「そう言えば、この前図書室で上の棚の本が取れなくてピョンピョンしてたよな。」
「見てたの?!」
「お、おう。なにやってんだろうなって……」
ま、まさか、リアムに見られていたとは……
「台を持ってくるとか、誰かに頼むとかすればよかったのに。」
「ギリギリ届くかと思って。」
「結局届いてなかったがな。」
ぐぐぐ。
「やっぱり、身長は大事だ。」
うんうんと一人納得しているが、周りが誰一人と同意をしてくれない。
アウェー感がすごい。
だれも同意してくれない寂しさを感じながら、グラウンドに目を向ける。
丁度次の試合が始まろうとしていた。
次は、団服をきた正規さんと見習いさんだった。
見習いの人は、服がスーツみたいに裾が短いため、一目でわかる。
スーツもかっこいいよねー。
しかし、今グラウンドにいる人は、服に着られてる感がすごいな。
世の中にはブレザーの似合う人と学ランが似合う人がいる。
どちらかというと学ラン派の人かな。
うん?それにしたって、なんだか見覚えがあるぞ?
「あれ?あれってお嬢の友達じゃないっすか?」
「断じて友達じゃないけど、予想の通りだと思う。あいつ、なにやってんだ?」
そう、それは明輝だった。
「そう言えば、第三で見習いやってるっていってたね。」
「へー、予選を勝ち抜いたのか。剣術に心得が?」
「ないでしょうね。でも、運動神経は無駄にいいからなぁ。」
アレンの質問に答えておきながら、なんだか腹が立つ。
私は、運動神経悪いからなぁ。
「アイナも運動神経悪くないですよ。」
「気休めはいいです。」
ピシャリとアレンの慰めをぶったぎって、冷めた気持ちでグラウンドを見つめるのだった。