噂の彼女
観客席視点です。
「あ、アイナちゃん!こっちこっち~。」
隣のイケメンさんがさっきからキョロキョロしているなぁと思ったら、先ほどみたことのない魔法を使った女の子が出入り口辺りでキョロキョロしていた。
呼ばれたアイナは、一瞬嬉しそうな顔をして、隣の男と一緒にこっちへやってきた。
「お疲れ様ー。一番おめでとー。」
「ども。」
ちょっと照れ臭そうな顔をしていたが、それも一瞬にして消えてしまった。
「あれ、なにやったんですか?」
さも事も無げに今、みんなの疑問中の疑問をもう一人のイケメンがアイナに質問を投げ掛ける。
「あー、あれですか?『圧縮』です。早い話が握りつぶす魔法です。はじめは爆発させようかと思ったんですけど、果汁搾らなきゃいけないし、服汚れるのやだったので。結局爆発しちゃいましたけど。」
「……そうですか。」
「最初は爆発させようとしたの?」
「潰す目的なら爆発させた方のが手っ取り早くないですか?ちなみに爆発は春の季語らしいですよ。」
えー。この子かわいい顔して、平然とすっぱり切り捨てるな。
なんていうか、冷めてる?その上でずれてる?のか。
同じように聞き耳をたてていた、周りの男たちも同じような感想を抱いてるようだった。
そして、目の前のイケメン二人がため息を付く姿をみて、
「え、なんでそんな疲れてるんですか?」
アイナは、よくわからないみたいな顔をしている。
「ところで、なんでエドと一緒にいるの?」
「さっき」
「そこで会ったんです。ソラの道案内をしていた所で偶然。私も道案内をしてもらいました。」
エドと呼ばれた彼の言葉を遮るようにして、アイナが答えた。
ねっ、と同意を求められたエドが頷いている。
「なんか、隠してません?」
「何を隠すっていうんですか?なにもありませんよ。」
突然の疑惑の目を向けられても平然と何もない、むしろなんで疑われるのかわからないみたいな顔をするアイナ。
「あっ、もう次の競技が始まるんじゃないんですか?ソラが出るんですよね?」
「そうですね。」
「あと、ウォルターも出ますよ。」
「え、そうなんですか?あれ?リアムは?」
「リアムは予選落ちしたんだよ。」
「組み合わせが悪かったみたいだな。」
「へ?卵運びで組み合わせ?」
どうやら、この子は卵運びを初めて見るらしい。
自分の想像と違うようで、グラウンドを見ながら首をかしげていた。