【閑話】夢物語
読んでも読まなくても本編には一切関係ありません。苦手な方はスルーしてください。
「ねぇねぇ!こっちの世界にも夢に見ると幸せになれるものがあるんだって!!」
いつもの通り、扉をノックをすることもなく、執務室に現れたのは凛だった。
「あのさ、せめてノックをしよう。」
窘めながら、こいつに自室の場所をばれないようにしなくては、と改めて心に決める。
しかし、無視していても無駄だということが私たちみんな、わかっていることなので、ため息ひとつで話を進める。
「夢に出てくるのがなんだって?」
「よくさ、初夢に見ると縁起がいいっていうやつがあるでしょ?」
「あぁ、一富士二鷹三茄子四扇五煙草六座頭のこと?」
「……ちょっと、急によくわからない呪文を唱え出したわよ。」
「俺に向かって相談しないでほしいっす。」
凛とウォルターが何故かがくぶるしながらこちらを見ている。
「一富士二鷹三茄子、までならわかる?」
「それ、それならわかるわ!!」
「三で終わりじゃなくて六まであるって話なだけなんだけど。」
「ふーん。でね?こっちの世界にもあるんだって。夢に出てくると縁起のいいもの。」
凛がもちこんだ話は合っているのかが甚だしく疑問なため、リアムをみる。
「あるな。」
「あるんだ。」
「だから言ったでしょ。で、それがね。なんだと思う?」
「知らない。」
「もうちょっと興味をもってよー。」
「そう思うなら話を進めましょうよ。」
「ぶー。もう、話しちゃうんだから。ドラゴンがタマゴを持ってる夢がいいんだって!!」
それは……御利益あるのか、な?
特に私の疑問をもろともしない凛は、自分の最近の夢について語りだした。
「こないだね。お菓子に囲まれる夢をみたの。五段重ねぐらいのケーキの回りにモンブランとかチーズケーキとかのケーキ類が並べてあって、ほかにはマフィンとかフィナンシェとか……あとあと、チョコの滝もあってね!!」
うっとりと、嬉々として。
うわ~。ドン引きだ。私だったら、ただの地獄絵図だ。
「……胸焼けしそう。」
「そんな夢を嬉々として話されても……」
私以外もドン引きだった。
「愛奈はないの?最近の夢。あとは、よくみる夢とか。」
「最近は見ないけど……ちょっと前までよくみた夢は、夕暮れ迫る時間に一人、日本家屋にいてひたすら誰かいないか探す夢とか。あとは、小屋みたいなところクラスメイト四、五人とにいて、風が吹くと小屋が傾いていくのね。で、一人が滑っていっちゃって壁に当たると、一面だけ傾いた下側の壁が取れるの。するとあらビックリ。実は、結構な高さの崖ギリギリに小屋は建っていて、はるか下は森になってて。だから、必死に落ちないように床にしがみつくんだけど、どんどん傾斜はキツくなっていって、クラスメイトたちが一人、また一人と叫びながら落ちていくって夢。」
「……それ、どのタイミングで目が覚めるんだ?」
「私も落ちて「あ、死ぬんだ」と思うところぐらいかな。目が覚めるタイミングで布団にぐっってからだが沈む感じがするよ。」
「その情報はいらない……」
どうやら、凛の夢もドン引きだったが、私の夢もドン引きだったようである。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
みなさん、初夢見ました?