次から次へと、よくもまぁ。
恥ずかしさのあまり、会場から走り去ったのはいいのだが適当に走ったため、ふときがつくと自分がどこにいるのかがさっぱりわからなくなってしまった。
誰もいない通路にいるのは大変嬉しいのだが、道がわからないのは困った。
「まぁ、いっか。」
とりあえず近くにあった階段に腰かける。
しばらくここで休憩をしようと座っていると、誰かが階段を降りてきた。
すみっこに座っているから邪魔にはならないだろうと思ったが、退いた方がいいかなぁと悩んでいると。
「あ、さっきのこ?」
うん?
振り返ると厳ついお兄さんがぞろぞろと降りてきていた。
あ、退きますね。
なんだかめんどくさくなりそうな予感がしてその場を離れようとする。
「ほんとだ。さっきのおちび。」
「あれ、凄かったな。」
「リンゴを潰したやつだろ。」
お兄さん方はわいわいと話ながら距離を積めてくる。
「どうも……」
既に逃げる気満々の私の気持ちを知ってか知らずか、お兄さんたちは陽気に近づいてくる。
別に私は、男性恐怖症ではない。
思春期の「お父さん嫌い」なんてのも私のなかには存在しない。道端であうおじさんに対してだって、嫌悪感を抱くなんてこともない。
ただのコミュ障か軽い対人恐怖症なだけで。
しかも、話さなきゃならない場面とかであれば頑張れるが、特に重要じゃないのなら頑張りたくないのだ。
「ちびちゃんさ、さっきのどうやったの?」
ちかいちかい……
こっちの人たち、パーソナルスペースせまくね?
あー、とか、うー、とか適当なことを言っているのかいないのかわからないくらいの音量で唸っていると、後ろからも声を掛けられる。
「あれ?久々のチビじゃん。」
聞き覚えのある声に振り返れば、ジャックだった。
「げ。」
「げってなんだよ。」
「あれ?ジャック、知り合い?」
「ああ、仲良しだよなっ。」
いえ、違います。しかも、なに楽しそうに言ってんの。
肩組もうとしないでくれる?
こいつらと知り合いかよ。
よくよく見れば、ジャックもお兄さんがたも金ラインの入った第一の団服だ。
「……さようなら。」
しかし、上手く間を抜けることが出来ない。
すぐにでもこの場から離れたいのに、サンドイッチ状態なのはどうしたら。
「ねーねー、教えてよー。」
さすがに何もされてない時点でこちらから手を出すわけにはいかない。
しかし、どう対処すればいいかわからずパニックになりかける。
泣きそう……
視界が滲みかけたその時、またもや私の名前が呼ばれる。