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目立ちたくないんですよ

 四つ並んだ平均台のひとつを登る。

 平均台へと続く階段を登りながら隣の平均台をみれば、先に進んだ彼がしがみついているのが見えてきた。


「た、高すぎる……」


 どうやら高所恐怖症らしい。

 私は高いところ平気だし、平均台だって体操習っていたときにさんざんやっているので恐怖はない。

 むしろ、この上で前転とか側転とかしてたから平気だ。(下にマットはあったけど)


「おー、高いところが苦手なのか?なかなか前に進めない彼を横目にアイナ選手、すいすいと進んでいく!しかも、平均台の側面を足の内側で撫でていくほどの余裕だー。」


 癖だな。やりたくてやってるわけではないのだから、そんなマイク(魔道具)を通して大声でいうなよ。恥ずかしい。


「しかも、顔色も変えずに平均台から飛び降りたー!!」


 上手いこと着地も決まったので、そのまま次に進む。

 次のコーナーに着き、袋を履くのだが……


「でかいな。」


 身長的にも、胴回り的にもでかいサイズの麻袋は、ジャンプして進むどころではない。


「おや?袋がだいぶ大きかったらしく、フツーに歩いて進んでいきます!!」


 しかし、走ると裾を踏みそうなのでもたもた歩いていると、後ろからきた人に抜かされる。


「お先に!!」


 別に一番になろうとも目立とうとも思ってないので、どうぞどうぞと見送る。


 そして、最後はリンゴ。


 どうやら、置いてあるコップにリンゴを握りつぶして果汁をためるらしい。


 先に着いた人が握りつぶしているが、果汁が飛び散ってなかなかコップに入っていない。


「なるほど。」

「さて、最後はリンゴ潰し。なかなかコップにいれるのが難しいですよー。おっ、アイナ選手は魔法でいくみたいですよ。リンゴを投げて、そのまま、え?は?」


 実況するなら、ちゃんとしろよ。

 観客席も戸惑いの声をあげているが無視だ。


 私はリンゴを空中に投げるとそのまま握りつぶすイメージで魔法を発動した。

 魔法名は、「圧縮」としよう。

 均等に圧力をかけて果汁を搾る。

 初めは爆発させようかとも思ったが、果汁を搾らなきゃいけないなら、爆発させちゃだめだし、果汁やらリンゴの欠片が飛んできてベタベタになるのもゴメンだったので、圧縮にしたのだ。


 あっという間にコップに果汁が搾れ、気を緩めた瞬間に圧が緩んだところからリンゴが爆発した。


「うぉっ。あぶなっ。」


 もっと慎重に使う魔法だな、これ。


「よ、よくわかりませんが、アイナ選手、リンゴを潰せたようです。」


 出来たと認めてもらえたので、ゴールへ向かう。


「ゴール!一番はアイナ選手!!」


 今まで、一番なんて取ったことがないので、嬉しくてその場で小さく跳ねる。


 客席から盛大な拍手が起こる。


 しかし、すぐに自分が人生最大ぐらい目立っていることに気付き、そそくさと退場したのだった。

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