【閑話】テンポの速い暗い歌
「♪~」
「今日はご機嫌っすね。」
「え、いつも私が不機嫌だと?」
「いや、鼻歌うたっていたのでご機嫌だなぁと……」
鼻歌を歌っていたらウォルターに毎日不機嫌認定されました。
こんにちは、アイナです。
「だから違うっす。いいことでもあったのかなぁって。」
「いいことがないと歌っちゃダメなの?てか、私は良いことがほぼない人みたいな言い方だね?」
「あーー。違うっす!!なんでそういう解釈になるんすか!」
「なんとなく?」
「え、なんとなくで攻められているんすか?」
「ふふ、冗談。」
「もー、ほんとにやめてくださいっすぅ。」
うん。ごめん、ごめん。
「で、それ、なんの歌っすか?」
「さくら さくら」
「それが題名っすか?」
「ちょっと待って、サクラってなに?」
今まで無言だったノアが会話に入ってきた。
「バラ科の落葉樹。春になるとピンクの花を付ける木の名前。」
「へー。他にはどんな歌があるの?」
「春の歌ですか?さくらが出てくる歌ですか?」
「サクラが出てくる歌ってそんないっぱいあるの?」
「まぁ、私の住んでいた国は、さくらが有名な国だったので。」
「そうなんすか。じゃぁじゃぁ、全然違う歌もあるんすか?たくさん?」
「そりゃまぁ。」
「じゃあ、アイナちゃんの好きな歌は?」
「私の好きな歌?」
「そう。どんなのが好き?」
「えー。♪~~~とか♪~~~とか、かな。」
今度は童謡ではなく、Jポップを口ずさむ。
ちなみに選考条件は、『月』か『星』が出てくるもの。
するとウォルターが目を真ん丸くした。
「……意外っす。」
「なにが?」
「そんな明るい感じの歌が好きなんすか?」
「お前、ほとほと失礼なやつだな。」
「でもほんと。意外かも。」
「ノアまで……私のことをなんだと思っているんだ……」
「あと他には?」
え゛。そんなキラキラした目で見られても……
「じゃぁ……♪~~~と♪~~~とか。」
今度の選考条件は、『君』。
「おぉ。」
「なに、その反応。」
「なんか、本当に以外っす。テンポの速い曲が好きなんすね。」
「バラードって聞きなれないとイライラしない?」
「落ち着くとかじゃなくてイライラするの?」
「うん。落ち着きは……しないかな。」
「へー。なるほど。」
「あぁちなみに、テンポの速い曲が好きなのは合っていますが、今、歌ったのは明るい歌じゃないので訂正します。」
「明るい歌じゃないんすか?」
「離ればなれになった人を思って流れ星を見つめる歌、手が届かない人を月に例えた歌。次に歌ったのが落ち込んでても明日は無情にもやってくるって歌と忘れられない人に向かって手紙を書く歌。」
「うわっ。その説明だと付きまとい気味に聞こえるんだけど。」
「えぇ、私もストーカーの曲だと認識してます。」
「そんな曲が好きなんっすか?もっと前向きな歌詞なんすか!!」
普通に前向きな歌詞の歌も好きだよ。
だから、そんな目で私を見んなっ。