春のある晴れた日に
うららかな春風が心地よい今日この頃、皆様どうお過ごしでしょうか。
私は今、森に来ています。
そして、目の前にはよだれを滴しながら口をパカリとあけ、息づかい荒くこちらに飛びかかろうとしている魔物がいます。
なぜ、こうなった。
私は心のなかで悪態をつく。
ことの発端は三時間ほど前に遡る。
「狩り?」
「まぁ、狩りというか魔物退治。」
私の疑問に苦笑いで返したのは副分隊長のノアだった。
「魔物退治に行くの? 今から? 」
「まぁ、普通なら今日⁉ ってなるだろうねぇ」
「実は、他の班が行くはずだったんだが……」
詳しく話してくれたのは、分隊長のアレンだ。
要約すると。
今日、召喚された【勇者】──大納言 吉宗と、【騎士】── 鏡 春人。 さらに第一騎士団の一班(五人)と、第二の一班(五人)で合同チームを組み、魔物退治に行くはずだった。
しかし、最初の予定で行くはずだった第二の班が前の予定が押したとかで行けなくなった。そこでうちの班が代打で行くことになった、と。
「さいで。でも、私も行くの?」
役立たずな私がついていっても、足手まといでは?
「大丈夫です。今回は、勇者と騎士による二人の練習なので。」
言われて思い出す。
へたれでびびりな二人は、殺生に抵抗感を持っている。
まぁ、私だって殺す殺されるのない平和な日本で生きてきたので、流石に最初は私だって無理だと思っていた。
実際は、サックリドライに殺れたんだけど。
「つまり、実質的な退治要員ってこと?」
「そうだね。」
なるほど。
「じゃあ、30分後に出発しますので。」
で、やって来たのは南の森。
総勢13人でやってきたのだが、明らかに軽装じゃないのが二人。
「だだだ、大丈夫なんですよね?」
既に腰がひけている春人が第一班の団員に聞いている。
もちと吉宗は、戦争にでもいくの?というくらい、のフル装備である。
「大丈夫だって。南の森は、奥まで行かなきゃ雑魚しかいないから。」
言われた通り、森に入ってすぐのところで遭遇したのはスライムだし、ちょっと進んでもウサギみたいなやつやタヌキみたいなやつしか遭遇しない。
しかし、それにたいしても春人は、逃げ腰である。
「だめすぎじゃない?」
私のこぼした一言に隣にいたウォルターが返事を寄越す。
「まぁ、見た目が可愛いっすからね。可哀想って思っちゃうと殺れなくなるっすよ。」
「それに関しては、お前はなんとも思わないのか?」
近くにいたリアムも会話に参加してくる。
「んー。可愛いとも可哀想ともおもうけど、そんなこと言ってたら何もできないし、あれ以上のものが出てきたとき対処できなくて困るのは自分でしょ?」