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【閑話】聖女様の憂鬱

読んでも読まなくても本編には一切関係ありません。苦手な方はスルーしてください。

「あーあ、なんか面白いことないかなぁ。」


 城内をぶらぶらと歩きながら、私は鼻歌混じりに呟く。

 最近、愛奈が遊んでくれないのでつまらないのだ。


「ん?何だか美味しそうな匂いがする。」


 クンクンと鼻を動かし、匂いのする方に歩いていくと、行き着いた先は食堂だった。


「こんにちはー。何だか美味しそうな匂いがしますね~。」


 中に誰がいるとか考えることなどせず突撃すると、カウンターにいたおばちゃんが私に気づいて笑いかけてくれた。


「おや、見ない顔だね。」


 私のご飯は、王族の人たちと同じ厨房で作られているし、自室で食べるためここにきたのははじめてなのである。


「美味しそうな匂いですね。」

「あぁ、今、カツドンを作ってるのさ。」

「え、カツドン!!チョー久しぶり!」

「カツドンを知ってるのかい?」

「もちろん。でも、こっちの世界にもあったなんて知らなかった。愛奈に教えてあげなくっちゃ。」

「アイナ?アイナを知ってるのかい?カツドンを教えてくれたのはアイナだよ。他にもフレンチトーストとかフライドポテトにクッパなんかも教えてもらったよ。」

「え!まじで?あー、あの子、なにもできませんっていいながら、そつなくこなすからなぁ。」


 愛奈って頭良いもんね。

 私は愛嬌しかないおバカだから、あの子の考えていることや話していることがたまにわからない。

 私のが年上なのに。


「あんたはアイナの友達かい?」

「そうね。友達よ。」


 あの子はきっと認めないけど。


 ふふっと笑う私をみて、おばさんはなぜか寂しそうな顔をする。


「ん?どうかしましたぁ?」

「あの子もあんたぐらい笑ってくれたらいいのにねぇ。」


 その言葉に私の胸はズキリと痛む。


 あの子と関わるたび、あの子の苦しみを知り、自分はなんてぬるま湯のなかで生きてきたんだと思い知らされる。


 私がめんどくさくなり、自分から突き放したり、離してしまった親や他人との関わりもあの子はいつだって突き放されたり、離されたり、いくら手を伸ばしても取り合ってもらえなかった方。


 そんなことをされ続けていたら、笑うことだって忘れてしまうだろう。

 私だったら、自分から手を離すのは良いが、離されるのは許せない。

 それくらいわがままに生きればいいのに。


「そうですね。あの子は真面目すぎる!」

「本当に。もっと息抜きをして、ここにだって遊びに来てくれればいいのに。」

「そう!私だって最近かまってもらってないんですよぉ。」

「あらあら、そうなの?じゃぁ。なにかリクエストしてくれたら作ってあげるよ。」

「ほんと!」

「た・だ・し・私たちの知らないレシピだったら、教えてくれなきゃ作れないからね。」


 盛り上がった気持ちは一瞬にして急降下する。


 そりゃそうだ。


 そして考え込む。

 私の知っているレシピ……あったかな?


 マカロンとか作ってもらったけど、あれは「こんなのが食べたい!!」って言葉で伝えたし。


 お菓子は買うものだったし、台所に立った記憶はない。

 調理実習だって、班の子がほぼやってくれていた。


「やばい。私、家庭科「(煙突)」だったんだった。」


お付き合いいただき、ありがとうございました。

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