ゴニョゴニョ
リアム視点です。
「説明してほしいんだが。」
久々の何の感情も浮かばない無表情で固まったアイナに声をかける。
「なんの?」
心ここにあらずの返答にため息をつく。
「だから、おまえが今考えていることの説明。」
「……。」
「おーい。」
目の前で手をヒラヒラと振ってみる。
すると、めんどくさそうに俺の手を払い落とす。
「うざい。」
「返事をしないのが悪いんだろ。」
「はいはい。」
いつもの調子が戻ってきたようなので、もう一度説明をこう。
「で?」
「……私の心当たりが当たってないかもしれないし、てか、むしろ当たってほしくない。」
「おまえの感想はいい。」
「……心当たり。だいたい、あっちの世界の人がこっちに簡単にこれる訳じゃないよね。考え違いだ。忘れて。」
アイナはそういって笑うが表情は冴えない。
「つまり、元の世界に条件のあうヤツがいるってことだな。」
「うわー。察しがいいのは、いいのか悪いのか。ウォルターなら絶対わからないのに。」
「当たりか。」
「まぁ、そういうこと。」
「で、そいつのことをおまえはよく思ってない。」
「ブラボー。大当たり。」
全然「当たり」「嬉しい」っぽさのない言い方でめんどくさそうに拍手をしていた。
「どんなヤツなんだ?」
「だから、足が速くて、身長が私と同じぐらいの小さいヤツで、同じ世界のヤツなら身バレする可能性のある容姿で、『テル』と言う名前の人。」
「それ以外で!!」
「やだ。思い出すだけで吐きそう。ってか、前は実際に吐くぐらいだったし。」
そんなに嫌いな奴に出会ったことないな。
何をしたらそんなに嫌われるんだろうか。
あ、こいつのこれまでだったら、それぐらいあるかもな。
「あー。でも、ここまできたら、当たりかどうか確認しなきゃいけないよね。」
「そんなに嫌ならしなくてもいいと思うが?」
「でも、もしあいつだったら私の今後の生活がかかってるし、魔道具と勇者出現のタイミングがよすぎるのも考えないと。」
真面目すぎる返答にあきれつつも、「生活がかかる」について質問する。
「生活がかかるって言うのは?」
「知り合いに魔法が使えるとこをみられるのか恥ずかしくないのかとか、あとは……」
「?」
「まぁ、あとはゴニョゴニョ。」
「そのゴニョゴニョを聞いているんだが。」
それ以上は話す気はないようで、教えてはくれなかった。
その「ゴニョゴニョ」が一番聞いておかなければならなかったことだとは思っていたが、これ以上心底嫌いだといっているヤツの話題を繋げることは俺にはできなかった。