自己申告で名乗れます。
「でも、勇者なんて自己申告みたいなもんでしょ?」
「まぁ、鑑定の魔道具は高価ですし、自称勇者はたまにいますね。」
「きっとその人の職業は、詐欺師だね。」
「そおっすね。又はホラ吹きっす。」
「と、言うことは私だって勝手に名乗れるわけだ、職業。」
「まぁ、自称〇〇ですけど。」
「なんて名乗りたいんっすか?」
うーん。
自分の職業ねぇ。中学生は、こっちにない職業だから違うのがいいなぁ。
事務員?書類整理係とか?
「特に思い付くものがなかった。」
ステータスに表示されると腹が立つが、自分で考えろと言われると難しいな。
「その民間勇者だか自称勇者は、役に立つ訳?」
「話を聞いた限りではそうですね。」
「よし。その勇者の情報を集めよう。」
突然のノアの陽気な声になんで?と首を傾げて見せる。
「だってさ、そんなに役に立つのなら、連携した方が効率的だよ。」
「そうだな。」
「と言うわけで、聞き込みに行こう!!」
は?
「誰が?」
「僕とアイナちゃん。」
「その人選はなぜに?」
「なんとなく?」
「却下。」
「えー、じゃぁ誰が言い訳?」
「ノア以外。」
「いーじゃん、一緒にいこーよー。」
可愛くおねだりしたってだめ。
行きたいなら他の人とどうぞ。
「アイナちゃんと行きたいの!!」
「知らん。」
しばらくの間、押し問答をしていたが結局私が折れて(途中でめんどくさくなって)、二人でホワイト会に行くこととなった。
「来たけど……」
ついたところは、普通の民家みたいな建物だった。
二階建てで、看板が出ていなければ普通のお宅みたいだ。
そして、看板には。
「お父さん犬?」
某CMに出てくるような白い犬が描かれていた。
「知ってるの?」
「いえ……なんというか、私の知ってるキャラ(?)に似てたので。」
そんな話をしながら建物にはいると直ぐにカウンターがあり、受付嬢なのだろう。お姉さんが一人たっていた。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょう?」
完璧なるスマイルゼロ円で出迎えてくれた。
「あー、ここに勇者さんがいると聞いたのですけど。」
「えぇ、どのようなご用件でしょう?」
「勇者さんに会わせていただけます?」
突然やって来て会わせろといわれ、「いいですよ」なんて返事が来るとは思っていない。
案の定お姉さんは、申し訳なさそうな顔をして断りの言葉を口にする。
「申し訳ござません。生憎と外に出ております。」
「では、勇者さんがどんな方か教えていただけませんか?」
「どんな方か、ですか?」
「えぇ、雰囲気でも見た目でも何でもいいので。」
始めは、ちょっとした興味があったのだが、別にいないならいないでよかったのだ。
私の好奇心からすれば、「はいそうですか」と引き下がっても良かった。
しかし、ここまできてあっさり引くのもなんなので、ちょっとした質問をしたのだ。
さも、ミーハー気分で聞いています感を出しながらお姉さんに聞いてみる。
お姉さんは、自分の唇に人差し指を当てて思案したあと、ぽん、と手を叩いて教えてくれた。
「めちゃくちゃ足が速いですよ。」
え、それって勇者に必要な要素なのか?
それとも逃げ足がって意味でかな?