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白と黒の歯車  作者: 凍梨
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森の中で



そこは暗い森の中の小屋だった。

ギルドで薬草を摘む依頼を受けて入った森を散策している途中。

この依頼を達成するだけならもうちょっと手前で摘んで撤収でもいいんだけど、どうせなら品質のいい薬草を渡してご機嫌取りをしたいし、奥に行けば魔物も出てくるからそれも狩って剥ぎ取った素材売ればお小遣いを増やせる!美味しいおやつを手にするんだ!と思って歩いていた途中目に入ったのがその小屋だった。

すごく古ぼけてていつ倒壊してもおかしくないんじゃないかな、という印象を遠目からも受けた。

だけど少し疲れてるしお昼休憩するのに借りよう。なんて近づいてみたら、ただの古ぼけた小屋ではないことに気づく。


なんか、見張りみたいなのが立ってる…?


不思議に思ってそっと近づいてみるとちょうど小屋の中から出てきた青年と見張りみたいな人が何か話しているのが聞こえた。内容自体は聞き取れないけど。


これがもっと身なりの整ってる騎士風の人たちなら「これはやんごとなき身分の人を守る為なんだな」と思って見なかったふりを出来るのだけど、どう言い繕ってもゴロツキにしか見えない人たちだった。


ええ、これ誘拐とかなんかやばいやつですよね?

自警団に行って救援を迎えに行くべきですよね?


ディール兄さん辺りに頼めば着いて来てくれるとはずだし・・・よし、引き返そう。少し離れたら大急ぎで走り抜けよう。そう決めたのでそっと離れようと踵を返した。

ふと思ったけど、物語の中とかでこういう場面って離れるとき物音させちゃうよね。という割と緊張感のない考えだった。考えだったのだけど…


―――パキっと枝を踏みしめた音が静かな音が鳴り響く。


「誰だ!!!」


やらかした…と頭を一瞬抑えたけど気を取り直す。

どうにかこの場を凌がないと…。いつもの格好なら警戒を解かれやすいとは思うんだけど、それはそれで怪しいのかな。一瞬村娘ご愛用のスカートの裾を掴むけど、すぐに腰に携えた剣を外し抱えるように抱きしめてから怯えるよう木の陰から姿を見せることにした。


「ごめんなさい、あの…道に迷っちゃって…」


なるべく、おそるおそる答える風を装ってみた。

これで油断して帰してくれればいいんだけど…


「村娘か…?」

元々外に立ってた方の見張りが小さく呟く


「は、はい…薬草を摘みに来たら迷ってしまったみたいで…人がいたので道を聞こうと思って・・・ダメですか?」

「道を聞きたい、ねぇ・・・」


小屋から出てきたほうの男がゆったりと目の前まで近づいてくる。

まるで厳選するように、じっくりと見つめられた。

このままやり過ごせたらいいんですけど…


「……まぁ、見られた以上関係ないんですがねぇ…ッ!」


そう言いながら素早く抜きだした剣を振りぬかれる。

首を一直線に切り落とそうとする剣を、鞘に収めたままの剣を盾に威力を落として致命傷を避ける。首筋に薄い傷はできてしまったけど、それだけで済んで結果的には上々。

衝撃を押し殺したと判断した直後にそのまま剣を普段の持ち方に変える。


「あ…ぶなっ…」


思わずそう呟いたあとに数歩下がって対峙する形になる。


「殺されてしまったらどうするつもりですか!あれ、普通のお嬢さんならやられてましたからね!」

「そりゃこんなところに来る女性がただの村娘と思う方が可笑しいだろう…よッ!」


下がった距離を詰めるように相手が地面を蹴り今度は足を狙う一線が繰り出される。


「あ、やっぱりそうですよね!私でもそう思います!」


納得しながらこちらも地面を蹴り接近すると相手の男が一瞬怯むもそのまま剣は私の左足を掠め傷をつくる。

あ、結構痛い。

けれど私はそのまま突き進んでその男の頭に鞘つきの剣を振りかぶった。


「おりゃあああああああ!!」


信じられないものを見るような目で私をみた男はそのまま倒れこむ。

足を狙うのは定石だと思う。普通動きとか怯むし、そのあとゆっくりトドメ刺しやすいから。


「ハァ!?」


そのまま残った見張りの方の人が間抜けな声を出して驚愕してる間にそのままの勢いで距離を詰める。

その人は目つきを変えて槍を腹部目掛けて突き刺してきた。

剣を振り切られるよりはラッキー。

ど真ん中狙いのその槍の軌道からわずかにずらしてそのまま突き進む。

外しきれなかった槍の刃によって腹部にジリッと熱を帯びた鉄を押し当てられたような痛みが走る。

―――でも、まだいける。

勢いを殺さすそのまま突き進む私に目を見開き驚いてる。


「おま・・・なんで!?」


驚いてる間に目の前にたどり着く。

慌てて一歩下がる相手。

―――残念。飛びのかないと意味ないよ。

そう胸中で呟きながら…


「もういっちょおおおおおおおおおお!」


右足を軸に二度目の剣でのフルスイング。

結果、その男も倒れたのだった。


こんな森の奥深くの小屋に見張りが二人。しかも目撃したら命狙ってくるということは絶対やばいやつだよね…。


物か人かわからないけど何かはある。


触らぬ神に祟り無しなので逃げてもいいんだけど、これがか弱い女の子が捕まってるとかになると放っておいて逃げたら目覚めが悪い。


そんなことを思いながら気絶させた二人を持ってたロープで縛る。


参った。これで中に複数人『悪い人』がいた場合、縛るものがない。そもそも殺さずに勝てる確証もない訳だからそのときに考えよう…。


頬を二回ほどパンと叩き気を引き締めてからそっと小屋観察する。


ああ、なんだ。小さな窓があるじゃないか。


足音を殺し、そっと覗き込む。




「ふぁ・・・」




ナニアレ・・・。


思わず小さなため息がこぼれた。


中には恐らくさっきの見張りの仲間が一人と、縛られ捕らえられた人が一人。


その捕らえられた人がそりゃもう凄いのだ。


陰気臭い暗い部屋の中でもはっきりとキレイだとわかる。


絹のように美しい金色の髪がキラキラと輝いて見えた。


状況が明らかに悪いからこそ怯えを僅かに覗かせているものの、穏やかな海を映したような深い青色の瞳。


その美しさを一層際立たせる美しい顔立ち、均整の取れた顔立ち。


ちょっと小さめという点すら“愛らしい”という賛辞で片付けられてしまいそうな、作り物のような人がそこにいた。




(うわぁ・・・人形みたい。女の子ならさぞ囲ってしまいたいと願われるだろうに)




まぁ、どう見ても男性のような支度をしてるので残念だが男性のようだ。


アレはアレで女性がほっとかないであろう。割といい服を着ている気がするんだけど、あんな顔みたことないなぁ…。


そんなどうでもいいことを考えつつ音を立てないように侵入経路を探る。


本当は他にも仲間がいるかもしれない。増援が来る前にカタをつけてしまいたい。




けれどぐるりと見回した結果でたのは入れそうな入り口は初めからある扉だけ。


扉の横に立ちドアノブに手をかけ、一つ深呼吸。


いつものアレはいつでも発動できるようにしてある。武器も今度は鞘から出してある。室内で人質がいる状態で捕獲優先にできる自信はないから“できれば”でいいと思ってる。


現行犯で捕まえたのがそこら辺に二人転がってるしね。これ以上は無茶する必要がない。


大人の男性は怖いけど、大丈夫。初めてじゃない。何度もしてきた。


私を助けてくれた人に報いるために、一人でも愛されてる人を救うのだ。


ずっとそう決めてきた。


もちろん今すぐ死ぬ気はないけれど、一人でも多く、目の前の人を生かしていずれ死ぬ。


そうすることで、私は私でいられるのだから。




気持ちを落ち着けて、叶うかもわからない素敵な未来を夢に描いて、それを掴めると信じて立ち向かおう。




ーーーさぁ、戦闘開始といきましょう。











勢いで書き出した結果、プロローグと本編の落差半端ないな…って思ってます。

所謂剣と魔法の学園ファンタジーになる予定です。

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