~裕志♯4~
5話1シリーズで考えて、とりあえず4話目!
「え?よくある《会社に必要とされていますか?》ではなく?」
「そうです。あなたが会社を必要としているかです。」
「それは必要でしょう!給料貰わなければ生活できないですし。」
「ふむ。それはごもっともです。少し端折りすぎましたかな。質問をやり直させて下さい。
あなたは今の会社に必要としているものがありますか?」
「必要としているもの・・・給料意外でですか?」
「はい。もし本当にお給料だけならば部署が変わったとて問題ではないでしょう?極端に言えば違う会社であってもいいわけだ。」
「つまりは会社を辞める・・・と?」
「いえいえ。そう言っているのではありません。しかし、それも1つの答えでしょう。」
ジョッキについた水滴が滑り落ちるのを眺めながら裕志は考えた。
(なんだ?意外と難しい質問だぞ。必要なもの?求めていること?やりたいことで言えば車造りをしたい。だけど理不尽や不遇には耐えられない・・・辞めることは考えてなかったし、助けてくれる仲間もいる・・・俺は何がしたいんだ?)
徐にビールを一気に飲んだ。そして、
「仲間が必要です。中には自分のように理不尽な思いをしている人もいますし、逆に僕を必要としてくれる人がいるのではないかと思います。」
「それは必要なものですね。では、そのお仲間と一緒に考えてみては如何ですか?会社に必要としているものを。」
「そうですね。一度真剣に話し合ってみます。これまで愚痴の言い合っていただけでその先を考えたことなどありませんでした。またお邪魔してもいいですか?」
「はい。いつでもお越し下さって構いませんよ。」
支払い裕を済ませ裕志は店を出た。
それから数日後
カランカランとベルが鳴り扉が開く。
「いらっしゃいませ。」
「こんばんは。また来ました。」
「これはこれは、ようこそお越し下さいました。」
「へぇ・・・いい店だな。お前1人でこんな所に来てたのか。」
「ん?まぁ偶然入ったんだけどな。」
裕志が仲間の1人《慎二》を連れて再び店を訪れたのだ。
「すみません。ビールを2杯お願いします。」
「畏まりました。」
この慎二もまた悩まされていた。
「慎二はあの会社で何がしたいんだ?」
「仕事量が多すぎてそんなこと考える余裕ねぇよ」
「それでいいのか?お前ただの社蓄になってるぞ?入社したときはお互い夢があったじゃないか!」
2人は同期入社で[俺達の手でいい車を作ろう!]と燃えていたのだ。
しかし、現実は違った。
慎二は日々の業務に追われていた。
次々に指示が飛び、抱えきれないほどの仕事があった。
流石にこれではダメだと上司に相談したが、
「なぜこんなことも終わらせられないんだ?」
と取り合ってもらえない。
「なぁ慎二、俺達このままじゃダメだろ?それに俺達みたいな人は一杯いると思うんだ。そういう人のためにもさ・・・」
それから2人は数時間真剣に話し込み帰って行った。
別の日、裕志が2人連れて来た。
また別の日には慎二が1人連れて来店。
そんなことが何度も繰り返された。
時には熱くなり大きな声を出すこともあった。
しかし皆帰りがけには笑顔になっていた。
ある日の業務中。
裕志のPCに1通のメールが入った。
「ん?誰だ?」
見覚えのないアドレス。
しかし社内の物には違いない。
メールには
《初めまして。あなた方の活動に興味があります。もしご都合が許すのであれば今夜にでも一度お話しできませんでしょうか?》
(これまで誘うことはあっても誘われたことはなかったな)
一瞬考えたが応じることにした。
慎二にも声を掛け来てもらうことに。
場所はいつもの店〝Consultation〞
裕志と慎二は先に店に入り相手を待つことに。
そして約束の時間になった。
扉が開き入ってきた男性を見て2人は驚いた。
「「専務!?」」
(おま・・・何で開発部門統括の専務なんだよ!?)
(いや、俺だって知らなかったんだよ!)
(アドレスから誰かくらいはわかるだろうが!)
(あ・・・)
ヒソヒソと話す2人に対し
「お待たせして申し訳ありませんね。」
と穏やかに声をかけた。
「「とんでもありません!」」
慌てて起立し答える。
「まぁまぁそんな畏まらず、今日は私からお願いしたわけですから気楽に飲みましょう。」
ニコニコしならがら席についた。
「ほう。此処があなた方の隠れ家ですか。落ち着いていて良いお店ですね。何よりお酒の種類が豊富だ。」
「いらっしゃいませ。お飲み物は如何なさいましょう?」
「このお酒は珍しいですね?」
「はい。それは年代物で御座いまして、口当たりが良いですよ。」
「お勧めの飲み方はありますか?」
「いい氷もありますから、ロックなど良いかと」
「では、このウィスキーをロックで」
「畏まりました。」
店主とのやり取りを見つつ、慎二が恐る恐る質問をした。
「あの、何故専務が僕らのことをご存知なんですか?」
「ああ、部下の1人にね少し心配な人がいたんですが、ある日を境に生き生きし始めましてね。その人にあなた方のことを聞いたんです。」
「どのようにお聞きになったかわかりませんが、活動というほどのことでもないですよ?」
「そうそう。私らはこの店〝Consultation〞のサービスを真似しているだけです。」
「お店のサービス?」
彼らが専務と呼ぶ人物はそう言いながら店主の方を見る。
氷を削りながら店主は答えた。
「ええ、私の趣味みたいなものですが、悩みなどのお話を伺うことをしているのですよ。」
店主は賑やかに答えた。
「ほう。それじゃあ2人は社内の〝Consultation〞ということですか。しかし、その切っ掛けは何です?」
2人はこれまでのことを説明した。
「なるほど。私も薄々は気付いていましたが此処までとは・・・そして裕志さんが異動となったのは私のせいかも知れない。」
「どういう意味ですか?」
「その質問をしたのは恐らく私なんです。」
「え?」
裕志の異動の切っ掛けとなった役員報告は、この専務に対して行われたものだったのだ。
沈黙の中、グラスの氷がカランと音をたてた。
裕志編は次で完結!の予定で未定です・・・




