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王の資質  作者: 誠也
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57.任命

 城の前には国民達が溢れ返っている。また選挙のときの様に、声を掛け集めたのだ。その場で俺は皆に人間について俺の意思を強く訴えた。国民に理解して貰うために。

 先の会議と同様に賛同する者、反対する者の割合は半々。しかし、反対派の意見を聞くと何となくと言うものが大半だ。魔族に対する人間の反応然り、魔族もまた人間に対して偏見があるのだろう。俺も初めはそうだったが、セシルやイマリ、ミーファ達と出会いその印象は変わった。皆知らないから恐れているのだと。相手を理解できたときそれは何事もなかったの様に解消されるものだと俺は思う。

 引き続き、反対派に訴える。歩み寄ってみないかと。

 すると少しずつだが、反対派の数も減っていった。しかし、それでもまだゼロではない。少数派であっても、この意見は無視できない。放っておくとその内彼等が牙を剥き、クーデターへ発展する恐れもあるからだ。

 これもまた、相談会という形を取り、苦情をその度に処理することで対応するとしよう。

 翌日、再び大臣達を集め会議を開いた。この度、友好を結ぶということになったのだが、俺達魔族はまだ人間のことをまるで知らない。初代が彼等と友好を結んだとは言えそれ以来何もやり取りをしていないのだから。そこで、有識者を召集した。呼び寄せたのはミルマール。父上の病気を治したことで今ここに居る者達にも彼女のことは知られている。


「すまないなミルマール。あまり慣れない場だとは思うが、俺達に色々と教えてくれ。」

「わ、分かりました。」


 今日の会議に呼ぶ為、彼女に声をかけたとき、それは驚きとても連れて来られる様な状態ではなかった。彼女にとって魔族の国に行くというのは死にに行く様なものなのだろう。しかし、今俺が魔王であり、身の安全を保証すると根気よく伝えると、なんとか承諾してくれた。

 そして今彼女は恐る恐る席から立ち上がった。皆物珍しく彼女を見るとそれがまた彼女を萎縮させた。このままは彼女が持たないな。俺は質問を彼女に振り、気を紛らわしていく。

 彼女が言うに人間の王はここより遥か西に位置するブルクレイルと言う都市に居るらしい。人間の間では魔族について昔から恐ろしく、凶悪な存在だと伝え続けられていたそうだ。

 しかし、彼女は俺に会ったときの印象はその伝えられてきたこととは大きく乖離している様に感じ、人間としても魔族について知っていけば溝は埋まって行くのではないかとのことだった。

 大方は分かった。さて、早速人間の王と面会を取り付けようと思うのだが、俺が単身で行くと言うと、こぞって止められる。まあ、今は一国の主。簡単に行って良い立場では無いと言うのは分かるが。


「じゃあさ、私が行くよお兄ちゃん。」

「ベル!」


 確かにベルなら任せても大丈夫そうだが、他の反応はどうだ?左右を見渡すと深く考えている者、良いのではないかと賛成する者と否定的な意見は無さそうだった。


「よし、ではベルにこの件を任せる。」


 本当は俺が行きたかったんだけどな。

 と、こんな具合に彼女に人間との交渉を取り付ける役を任命した。まあ、ミルマールに同伴を頼んだから襲われたりする心配も無いだろう。ベル、頼んだぞ。

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