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王の資質  作者: 誠也
52/77

52.闘技大会予選

 城下町に大量のチラシが舞う。そのチラシにはこう書かれていた。


『王国主催闘技大会!

 優勝賞金 金貨百枚

 参加条件、人数制限なし。

 開催場所 ジルヴァニア闘技場

 開催日時 ○○○○』


 優勝賞金金貨百枚。これを見た者達は皆目の色を変えた。これ程の大金の出る大会に特に条件も無く参加できる。それに王国が主催ということは嘘では無いということ。皆もしかしたら自分がと想像を膨らませる。

 翌日には町行く人の話題はそれで持ち切りとなった。自分が出ると張り切る者、観戦を楽しみにする者、賭けを企む者など様々だ。この話は次第にジルヴァニアを飛び出し、近隣の町にも伝わった。

 うむ、いい具合に広まっている。これなら予定通り、兵を城下町に入れることができるな。念話でレイラさんへ確認を入れると向こうにも話は伝わっており、兵を分けてジルヴァニアへ送っているとのことだった。後は焦らず体制を整えるとしよう。

 それにしても闘技大会の開催について発案したときは中々に苦戦した。大臣達からは予算もあまり無いのに催しなど何故するのだという意見が多かったからな。国の活性化の為だとか、新たに軍に引き入れる人材探しに良いだとかで押し通した訳だが、これで怪しまれていないか少し不安だ。

 闘技大会当日城下町には人が溢れ返った。大会参加者と見えるゴツい者が多く、心なしか気温が上がった様に思う。さて、俺もそろそろ準備して会場に行かないとな。

 闘技場は直径五百メートルの円形をしたの石造りの建物で、二十万人分の観客席と中心に広い舞台がある。今は何万という観客と参加選手で熱気に包まれていた。また、屋台や売り子の姿も見え、祭りらしく感じる。

 俺は王であるため、特別観覧席に座った。見やすくていいが、俺自身が見せ物になっている感じもあり、何とも言えないな。


「それでは開会式を始めます。まずは魔王様より御言葉を頂きます。」


 オルフに促され立ち上がる。


「現魔王のレイだ。今日はこれ程の民が集まってくれて嬉しく思う。先の王を決める演説の中で、もう一人の王候補であったゼノはこう言った。我等魔族の中には潜在的な戦闘衝動があると。俺自身もこれに対し思う所があり、何かできないかと考えていた。そこで今回の闘技大会だ。この大会で完全に戦闘衝動を押さえられるとは思っていないが、一つの発散する場として楽しんで貰いたい。では、参加選手全員の健闘を祈る。」


 会場が拍手に包まれる。俺は席に戻り、ルール説明が始まった。今回の大会はまず四ブロックの予選から始まる。予選はバトルロイヤルで行われ、自己申告による戦意喪失や気絶等の戦闘不能状態、舞台から落ちると失格。武器、魔法は使用可。最後まで残った者が準決勝に進む。準決勝は抽選により対戦相手を決め、一対一で戦う。勝敗は予選と同じ方法で決する。

 ルール説明が終わると、早速第一ブロックの参加選手が舞台に出てきた。今回の参加者が約一万人だから一ブロック当たり二千五百人。舞台は広いとは言え、もう少しブロックを分けた方が良かっただろうか?まあ、今回は作戦のためだと結構適当にした催しだったからな。もし次もということになると修正すれば良いか。

 用意されていた大きなドラが鳴り第一ブロック予選が始まる。選手の叫び声や剣を打つ音が響く。中でも一際目立っているのが赤い鎧を纏った竜人の剣士。その剣の一振りで多くの参加者を吹き飛ばしているのだから。彼の活躍で開始五分足らずで残り選手は三割程となっている。まあ何と言っても彼は師匠のお孫さんだからな。彼はアザミツと言って、俺が師匠の弟子となった頃に共に鍛えて貰った仲である。今は軍に入っており、実力は若手で一番だ。今日は軍の力を見せるためにとディープ大臣が送り込んだらしい。普通の奴は彼には敵わないよな。更に五分後予想通りアザミツが勝ち残った。

 続いて第二ブロック。このブロックには突出した者が二名いた。槍使いの馬人と二刀流剣士の犬人だ。その二人を残し、他の者は既に舞台の外へと出ている。槍使いはリーチを生かし懐に踏み込ませない様に戦い、二刀流剣士は攻めあぐねている状況だ。そのまま剣を弾き、勝敗が決した。今回は相性の問題だろうな、だが槍使いの勝ちだ。

 第三ブロックは特にこれといった者はいなかった。先程までと違い、長い試合となる。最後に残ったのはゴツい猿人のハンマー使いだった。

 次で予選は最後か。ん?アイツは!その狐人は舞台に上がるなり、こちらをじっと見てくる。しゅ、シュンメイ!ここまで来てしまったか、あの様子だとまだあのときのままだろう。彼女の容姿に他の選手、観客は見とれているが、この試合は彼女で決まりだな。試合開始のドラが鳴ったその瞬間彼女の姿が消える。次に彼女が姿を現したときには他の選手は闘技場の壁まで弾き飛ばされていた。その間僅かに三十秒。観客は皆唖然とし、状況が飲み込めない。その後司会の宣言により、シュンメイの勝利が伝わると、会場に割れんばかりの歓声が広がった。

 さすがだな。これで準決勝に進む四人が決まった。個人的にはアザミツとシュンメイの試合が見たい所だが、抽選次第。さて、どうなるか。

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