51.会議
つい先程レイラさんから連絡が入った。「五万程兵が集まった、こちらはいつでも大丈夫だ。」と。これで後は町に潜む構成員の把握だ。
こちらの進捗状況は全体の四分の三といった所だろうか。町には約百万人がおり、これをたった三人で調査しているのだ。二ヶ月でこれはかなり早い方だろう。今回の件は敵に知られてはいけないからと少数であたらせているのはやはり負担が大きいだろうか。時間が取れれば何か休まる様なことをしてやりたい。
三人に頑張って貰っている分こちらも直ぐに動ける様、体制を整えなければならない。現状でレイラさんと話を詰めておくとしよう。彼女に念話を飛ばし、午後からカスティーヨの屋敷にお邪魔する様に約束を取った。
午前中に承認書類を片付け、屋敷へと飛んだ。屋敷の前にはレイラさんが待っていてくれた。
「時間通りだなレイ。さあ、こちらへ来てくれ。」
彼女に導かれるまま屋敷の中を歩く。着いたのは屋敷の二階のある一室。扉を開けると中は広い会議室であり、今回集められたであろう兵の幹部が用意されている各席の横に立ち、待っていた。皆俺を見るなり頭を下げる。やはりこういうのは慣れないな。足早に用意された席に着き、皆を座らせる。
レイラさんの進行で、まずは集まった者について簡単に説明を受けた。長年軍で活動し実績のある者、経験は無いものの素質のある者など様々だ。だが彼女が選んだ人材だ、期待できるだろう。
紹介が終わり本題に入る。今回の作戦についてだ。攻略のポイントは三点。まず地上の構成員を捕らえること。地下への出入口を塞ぎ内部の制圧。そして、民に被害を与えないことの三つだ。
それらを実行するにはこちらの動きを読ませない様にしなければならない。もしバレてしまえば、敵を逃がし、民に被害が出てしまう。
その為には五万の兵を城下町に上手く紛れ込ませる必要がある。一度に町へ入れる訳にはいかないから、少しずつにはなるだろう。しかし、時間がかかる。その間に作戦が漏れてしまうかもしれない。転移魔法を使い、他に誰も居ない場所に入ったとしても、魔力探知で見張られている場合バレてしまう。
何か良い策は無いだろうか?
「魔王様、恐れながら発言よろしいでしょうか?」
声の先に羊人の青年が居た。確かピーターと言ったな。レイラさんが頭の良い奴だと言っていた者か。
「いいぞ、話してくれ。」
「では、兵を城下町へ入れる良い方法ですが、何かジルヴァニアで催しをしては如何でしょうか?町の外からも人が入る様なものであれば、容易に五万の兵を入れることができます。」
「なるほど。だがそうすると、他にも多くの民が町に入る。そうなれば敵を捕らえるときに他の民が巻き込まれる恐れも増すかもしれない。それについては考えがあるか?」
「はい、今回の作戦を夜に決行するのです。催しは午前から昼にかけてのものとし、夜は皆自宅か宿に戻り、眠りにつく。町の通りに出歩く人の数も減るでしょう。更に集客の範囲を近隣の町だけに絞れば、日帰りでと考える者もいるでしょうし、危険度は下がる筈です。」
「ふむ、いい案だ。採用する。」
「ありがとうございます。」
ピーターは礼をし、顔を綻ばせる。彼の案で道筋は見えた。催しか、屈強な男達ばかり町に入れるものとなると、闘技大会とかだろうか?まあ、そこは何とでもなる。後は三人からの連絡を待つだけだな。




