41.悩み相談
その小柄な少女は肩までの茶の髪をし、人形の様な印象を受け、その風柄は静という字がよく似合う。だが、俺達を見るなり、その顔は次第に乱れていった。
「アイン久しぶり!元気だった?」
「べっ、ベルちゃん。それに、レレレレレレレイくん。」
何気ないベルの一言にもこの有り様だ。横に居るベルの目付きが変わり、それを俺に向ける。またこのベルか。分かってる、分かってるとベルに目で合図する。その後アインを落ち着かせるように声をかけたのだが、逆効果だったのか更に悪化してしまう。仕方無くベルに任せ、俺は落ち着くまで何もしないことにした。
十分程だろうか、漸く慣れてくれたのか会話ができるところまでは来た。
「遅くなったけど、おめでとう。王様だなんてやっぱりレイくんは凄いね。」
「ありがとう。でも、ここからがスタートだからな、まだまだ勉強しないといけないんだ。」
「ふふ、元々のんびり屋だったレイくんとは思えない発言だね。」
「流石にのんびりもしてられないさ。やりたくないからと言って何もしない訳にはいかない。もう俺だけの問題ないじゃないからな。」
「うん、私も応援するね。」
その後、アインとカスティーヨの町を歩くことになった。アインのお気に入りのパン屋に図書館。それらの場所での彼女はいきいきとしており、本来の姿が窺える。
「ねえ、ベルちゃんはこれからどうするの?王様にはレイくんがなったわけだし。」
「そうだな~、取り敢えずはお兄ちゃんのコネで文官にしてもらう予定かな。」
と、にやにやしながらこちらを見てくる。本当にしたたかだな。確かに助けてもらうとは言ったが、正式に試験を受けてもらい、合格した上で助けてもらう。その方が後のことを考えてもいいだろう。
「アインは将来どうするの?領主はアインのお兄さんのアポロさんが継ぐんだよね?」
そうアインには兄が居る。今は領主を継ぐ為、他の領を訪れ見聞を広めているそうだ。その為アインとしてはここの領主以外の道を探さなくてはいけない。王族であるし、どこか他貴族と結婚するというのが一般的ではあるが。
「あんまり考えたことないかな。というよりも考えないようにしてたのかも。私恥ずかしがり屋で人前だと慣れるまで上手く話せないし、これといってできることもないし、もうこのまま家にずっといれたらって思ってた。甘すぎる考えだよね。どうしたらいいかな?」
アイン・・・。容姿も可愛らしいし、話せばいい娘だって分かる。貴族ということもあって引く手あまただ。しかしその話をするまでが本人には酷く難しいことなのだろう。話ができなければ、相手方の印象も上がりにくい。仕事をするにしても恥ずかしがり屋が克服できないといろいろと難しいな。
だが、こういう悩みを解決してこそ豊かな生を国民に送る為にやらなければならないことだ。
アインは先ほど行った図書館もそうだが本が好きな娘だ。司書なんかいいと思うが、人と接する仕事であるし、少し厳しいか。だとしたら作家はどうだろうか。物語を作ったり、他にも史実を纏め歴史書を作ったりと書くものにも選択肢が幾つかある。その中からできるものを考えるのはどうだろう。しかし、アインが好んでやれる仕事であるかが大切だ。あまり乗り気でなければ苦痛にもなるからな。とは言えまずはアインに考えてもらうことが先だろう。
アインに伝えてみると彼女は目を閉じ首を傾げる。少しして、
「ありがとうレイくん。ちょっとは希望が持てそうだよ。私の道が見つかったら一番に報告させてね。」
と笑顔を見せたくれた。
力になれただろうか。ふっ、王としての初めての仕事かもしれんな。さて、明日からまた頑張るとしよう。国民達の為に。




