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王の資質  作者: 誠也
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22.情報収集

 第二の試験が始まり、今は挑戦者はベルだ。もう来週に差し迫った俺は情報収集に勤しんでいた。

 まずは最初に挑戦したユリスから話を聞こうと今日は城に来ている。部屋のドアをノックするが、返事がない。念のため魔力探知を使うが反応もない。留守か、他にユリスの行きそうな場所は()()()だろうな。

 城の西側の塔。そこは国家研究員達の研究区画になっている。上は三階から魔法、薬剤、生物の研究室の順となり、ユリスは良く生物研究室に顔を出している。

 一階の生物研究室は研究に使う獣の臭い、植物の香りが混ざっていつ来ても独特な臭いがする。辺りを見渡すと珍しい動植物を相手に鋭い目を向けメモを取る研究員ばかり。自分だけの世界に没頭する楽しさは分かるが傍から見ると異様な光景だ。俺もこういうときがあるが、注意しよう。

 さてユリスだが、思っていた通りここに居た。ユリスは俺より少し年上の青年研究員と談笑していた。ユリスに声をかける。


「レイ兄ど~したの?珍しいじゃん、ここに来るなんて。」

「少しお前に聞きたいことがあるんだ。」


 ユリスに修練の塔について聞いてみた。試験の結果としてはユリスは八階で駄目だったらしい。一階から三階は一撃で仕留められるレベル。四、五階は三十秒以内に方がつくレベル。六、七階は少し苦戦するもなんとか倒せるレベル。駄目だった八階は槍使いで、遠距離は魔法で間合いに誘導され、近付くと素早い突きを仕掛けてくる戦法らしい。相手のリーチが長いせいで上手く攻められなかったのが敗因だとユリスは言う。いずれにしろユリスの基準だが、参考にはなった。


「ねぇレイ兄、試験のこと教えたんだからさ~、代わりにまた勝負してよ。いいでしょ?」

「またか、別にいいが。」

「やった!そうだ、ぺスタあれ使わせて!」


 ぺスタとは先程の研究員のことだ。ユリスに言われていそいそと何かを取り出すぺスタ。その彼の手には大鎌があった。それもただの鎌ではない。刃は鋭く光を反射し、峰には五つの目玉が並んでおり、おどろおどろしい。何だ、この鎌は?


「ユリス様、()()まだ研究途中なので後で感触を教えて下さいね。」

「オッケー、任せて!じゃレイ兄外に行こ。」


 ユリスと城の庭に出る。周りは丁度誰も居なかった。適当に距離を取る。


「ユリスいつでもいいぞ。」

「じゃ~行っくよ~。」


 ユリスは鎌を振りかぶり、こちらに駆け出す。前と同じか。ん!?ユリスの姿がぶれる。その後ユリスが五人に分身した。五人相手は手が足りんな。馬鹿正直に受け止めるのはやめよう。

 ユリス達の後に転位で回り込む。・・・筈だったが、変わらず前方からユリスが走ってくる。何だ?転位をしたのに先程と景色が変わらない。幻術か、〝解幻術〟。これで・・・いや、まだ駄目だ。仕方無い五人まとめて相手してやる。

 五方向から一斉に降りかかる鎌を剣を抜き薙ぐ。速さは断然こちらが上。ユリスを後方に払い飛ばす。五人全てに当たった感触がある。幻ではないのか。

 では、このまま動きを止める。〝烈氷〟。氷魔法だがこれも発動しない。あの鎌もしかして相手の魔法を打ち消すことができるのか?だとしたら相当厄介な物を作ったものだ。

 魔法は使えない、()()()()な剣でやるしかないか。まあ、ユリス相手にはそれで十分だ。

 剣を構え、踏み込む。飛び出す速度はユリスに反応できない。一人ずつ捉え捩じ伏せる。「ぐはぁ。」と地面に横たわり動きを止めたユリスから鎌を取り上げた。すると分身は姿を消し、ユリスと鎌の本体だけが残った。

 鎌を持つと峰に付く目玉が全てこちらを向いた。少しおぞましいな。


『あんさん、やりまんな。坊っちゃんこないにこてんぱんにして。』

『お前話せるのか?』

『そうですとも、わてはバルベルデ。これでもローゼンはんに作られた名器なんでっせ。』


 この鎌もあのローゼンが作った武器だったのか。だとしたらさっきの思いもしなかった展開も頷ける。


『あ、リジルはん、お久しゅう。』

『バルやん、おひさ~。五百年ぶりくらい?』

『そうやな~、暴走した炎竜王イグレプシスを退治するのに集まったときやからそのくらいになるやろか。いや~なんやうれし~わ~。』


 リジルとも知り合いか。話を聞くとさっきの勝負はまだ本気ではなかった様だ。ユリスではバルベルデの力をあまり解放できていなかったらしい。リジルも相当の力だからなきっとこのバルベルデも凄まじい能力を持っているのだろう。

 少ししてユリスが起き上がる。


「いってー。またやられちゃった。」

「正直に言って俺とお前ではまだ差が大き過ぎる。お前も良い師匠を見付けたらもっと強くなるかもな。」

「はいは~い、考えときま~す。」


 気の無い返事だ。こればっかりは本人の意思次第、しつこく言うつもり無いが、こうも響かないとは少し自信を無くす。

 その後はユリスと別れ、今度は兵士たちに話を聞いて回った。

 一般の兵士達はユリスよりも低い階までしか到達しておらず、それ以降の情報は得られなかった。あとは出たとこ勝負ということか。本当に集めたかった上の階の情報は無理だったが、仕方無い。やるだけやろう。

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