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王の資質  作者: 誠也
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17.深海の王者

 翌日リオと共にベルの居るホーカンの町を訪れた。ここホーカンの町は魔族の領地の最北端にあり、気温が年中氷点下という寒冷地だ。辺りには雪はもちろん、建物の屋根から長い氷柱が垂れているのが見える。

 ベルの泊まっている宿を訪ね、店主に呼び出しを頼んだ。


「おはようお兄ちゃん。お、リオも来たんだ。」

「一応ね。兄さんや姉さんだけでも大丈夫だろうけど何か手伝えないかなって思ってさ。」


「うん、うん、いい子いい子。」とベルがリオの頭を撫でる。そのリオは「もうそんな歳じゃないよ。」と軽く息を吐いた。

 宿の食堂で温かいコーヒーを飲みながら作戦会議を始めた。


「まず一角鯨ロロノフなんだけど、ブラッドリー老師の探知魔法で分かった場所に転位したらまあ周り一面海で、自分の魔力探知でロロノフを探したんだけど、鯨みたいな大きい動物の反応が無かったんだ。それでさ、ここの深海の調査員の人に話を聞きに行ったら生息圏が海底一万メートルらしくて、私の魔力探知の範囲外で、しかもそんな深海まで私の魔法じゃ行けないなって、半分お手上げ状態だったんだよ。」

「うーん、海底一万メートルともなると水の中でも活動できる〝潜水〟の魔法と、明かりの〝投光〟の魔法、それから水圧に耐える〝重耐圧〟の魔法が必要だね。」

「そうそう、私〝重耐圧〟が使えないから、行ったらペっちゃんこになっちゃうんだ。お兄ちゃんは使えるでしょ?」

「いや、俺も〝耐圧〟までしか使えんぞ。」

「そんな~困ったな~。」


 とベルが額に手を当てる。


「〝重耐圧〟なら僕使えるよ。」


 ベルと共にリオの方にバッと顔を向ける。


「それ、ホント?」

「うん、嘘じゃないよ。」


 するとベルは「ホントいい子だね~。」とリオを再び撫でる。リオはもう諦めたという感じでベルの反応を受け入れた。

 それから話を進め、目処がついた。まず魔法で深海に適応できるようにし、転移魔法で移動、その後魔力探知でロロノフを探し、戦闘。このとき〝重耐圧〟が解けないようにリオを俺が守り、ベルがロロノフと戦う様になった。俺とベルが逆でもいいのだが、ベル本人が強く「私がやりたい。」と言うので尊重することにした。


『ご主人、一角鯨ロロノフって結構強いよ。それこそ竜種並かな。それに相手の有利な水の中だし、妹さん大丈夫?』

『ベルもそれなりに腕は立つが、お前が言うなら心配だな。リジル、一旦お前をベルに渡してもいいか?』

『そだね、相性はどうか分かんないけど、いいよ~。』


 事情をベルに話してリジルを渡した。すると直ぐに打ち解けたようでベルの表情が明るさを増した。それから外でいろいろと試してみると、一部を除いてだが、概ね使いこなせていた。リジルもベルに合格点を出したらしいので、問題無いだろう。

 準備を整え深海へと向かった。




 海底一万メートル。そこは光も差し込まない暗闇と静寂の場所。明かりの魔法を使ってるけど、その範囲は精々半径十メートル。少し頼りなく感じるな。

 魔力探知を使いながら転移魔法を使いロロノフを探す。

 !何か大きい反応がある。これがロロノフかな?


『ベルちゃん、多分それがロロノフだよ。』

『リジィー分かるの?』

『まあね、前に戦ったときと似たような反応だし。じゃあ、ちゃちゃっとやっちゃおー。』


 二人にも伝えて、反応のあった場所に転位した。

 な、何これ!?目の前に白い大きな壁が現れた。いや、壁じゃない。落ち着いて見ると、全長二百メートルはある超巨大生物の体だった。これが一角鯨ロロノフ、大きすぎるよ。


『来るよ、ベルちゃん!』


 リジィーのその声の後にロロノフはこちらに気付いたのか、体を振り、攻撃してくる。その巨体に似つかわしくない速さで、私は対応に遅れ、直撃してしまった。重い一撃。遮蔽物の無い海の中をどこまでも行きそうな勢いで飛ばされる。それを背後に風魔法を放って受け止めた。痛たた。


『えっと、大丈夫そうだね。アイツの攻撃気付いたんだけど言うのちょっと遅かった、ごめんごめん。』

『いいよリジィー、今のは私のせい。それより、反撃行くよ。』

『オッケ~。』


 飛ばされた位置から見てもかなり大きいな、頭の部分に生えてる角も十メートルはありそう。角だけ切り落とせるかな。

 いや、まずは動きを鈍らせよう。〝豪衝撃〟。右拳を突き出し、強烈な衝撃波を発生させる。音速程のそれはロロノフの胴体を捉え、衝撃波を受けた箇所は少し凹んだ。でもそれだけ、凹みは直ぐに戻り、ロロノフも何も無い様に泳ぎ回っている。


『ベルちゃん、アイツ結構脂肪が厚いから、今のじゃ反応薄いかも。今度は直接叩き込んでみようよ。』

『了解。』

『一応ブーストしとくよ。』


 リジィーから魔力が流れ、体に力がみなぎってくる。これなら。転位魔法でロロノフの直ぐ真下に潜り込み、その腹に向けて拳を突き出した。〝豪衝撃〟。ロロノフの皮膚が大きく波打ち、拳にその衝撃がロロノフの体を貫いたのが伝わった。ロロノフは痛みに体をくねらせている。やった。


『まだだよ、ベルちゃん!』


 動きを止めたと思ったロロノフは激しく動き出した。円を描くように泳ぐロロノフの中心に渦が発生した。うぅ、引き込まれそう。お兄ちゃん達はちょっと距離を取ったみたい。私の遠距離からの攻撃魔法は効かなさそうだし、どうしよっかな。


『ベルちゃん、私の必殺技使ってみない?』

『ん、リジィー何かあるの?』

『もち。それに、私まだぜーんぜん本気じゃないよ。』

『ホント!?それはスゴいな、リジィーって何者?』

『ただの大人のお姉さんだよ~。それよりベルちゃん、私に魔力を送ってちょ。』


 リジィーに言われた通り、魔力を送って見ると、私の魔力半分をごっそり持っていかれた。


『キタキタキター、じゃベルちゃん私を渦に向けて縦に振って。』


 リジィーを渦に向けて縦に振ると、巨大な光の斬撃が飛び出した。その斬撃は渦を切り裂き、かき消す。また、ロロノフの尾びれを捉え、切断した。それでもなお、斬撃は消えずその形を保ったまま遥か遠くに飛んでいった。

 わわわわ、これってヤバくないかな。


『リジィー、やり過ぎじゃない?』

『そうかな?まあ、あんま気にしないで。ほら、ロロノフももう大丈夫そうだよ。』


 ロロノフを見ると、尾びれが無くなった為に上手く泳げなくなっていて、出血も凄い量だった。最後に脳天を切り込み、仕留めた。動かなくなったロロノフの角を採取する。それを見てお兄ちゃん達も近付いてくる。


「お兄ちゃん、終わったよ。」

「お疲れ様。リジルありがとな。」

『いいって、いいって。』

「そうそうお兄ちゃん、リジィーって何者なの?」

「ん、こいつは伝説の鍛冶職人ローゼン・マイヤーが晩年作り上げた傑作で、かつて曾祖父の第七代魔王が愛用してたんだ。その一撃は天を裂き、大地を一瞬で焦土と化すと言われたほどの剣なんだが、まあこの通りのヤツだ。」

『なによご主人、最後のとこ酷くな~い。』


 そんなに凄かったんだリジィーって。でも何でお兄ちゃんがリジィーを持ってるんだろ?まあ別にいっか。

 その後、仕留めたロロノフをアイテムボックスに入れようと思ったんだけど、大き過ぎて入りきらなかった。転位魔法で運ぶにも運べる質量を遥かにオーバーしてたから、粉々に切り刻んで、お兄ちゃんとリオのアイテムボックスに分けて入れることでなんとか収まった。

 さあ、早く戻ってお父様を助けなきゃ。

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