表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王の資質  作者: 誠也
11/77

11.小休止

 ベルはシャーリーと一頻り話すと満足したのか、直ぐに発っていった。ただ、ベルが発つ直前、シャーリーにこそっと耳打ちしていたのが気になる。何故なら、そのときシャーリーは顔を赤くし、大分取り乱していたのだから。また何やら余計なことを言ったのだろう。

 ベルが帰り、一息ついた所で俺も一眠りしようと思っていたら、シャーリーがまたどこかへ連れて行けと言う。また今度にしようという提案も虚しく却下された。さて、どこにするか。また仕事のついででは怒りだすだろう。セシルもいることだし、イマリの居る村が良いかな。あそこなら俺達のことを気にせず迎え入れてくれる筈だ。二人を連れ転位する。

 村に突然現れたら俺達を見て驚く住人は居たが、昨日の奴だと分かると快く迎え入れてくれた。シャーリーは人間の温かな反応に慣れないのかどぎまぎしている。


「レイ、また来てくれたんだな。」


 イマリだ。俺が来たことを聞き付けて、走って来てくれた様で、少し息が荒い。


「ああ、早速遊びに来た。今日は他にも連れがいるんだ。」


 イマリに二人を紹介する。すると、イマリは二人をじっと観察し、口を開く。


「レイってたらしなんだな。痛た!何すんのさ!」


 気付けばイマリの頭を小突いていた。いきなり人をたらし呼ばわりするものじゃない。しかし、セシルやシャーリーは何故か頷いている。元々のんびり屋だった俺は、たらしというほど付き合ったことのある女性はいないのだが。どうして最近こういう話ばかりなんだろう。もっと落ち着きたい。

 それからイマリを含め四人で村を回った。服や雑貨の店を見た後、村の子供達が遊んでいるのを見付け、輪に入る。少し疲れのあった俺は三人が楽しんでいるのを横目に草むらの上に転がる。のどかな雰囲気は時間の流れさえ忘れてしまいそうになるほど心地良く、飽きない。そのまま俺は眠りについた。

 ん、クスクスと笑う声が聞こえる。何だ?目を開けると三人の笑う顔が見える。「何だ?どうかしたか?」と問う俺に、「何でもない。」と口を揃える。怪しい。何かを乗せられてる感じではない。落書きか?試しに顔を少し擦ると手に黒のインクが移っていた。


「もうバレたか、つまんない。はい、これで拭きな。」


 イマリからタオルを受け取る。どんな風なのか気になるが、取り敢えず拭き取る。タオルをイマリに返すとき、仕返しに髪をわしゃわしゃした。「やめろ!」と言う割には嫌そうな顔はしていない。少し長めにやっていたが、横目でシャーリーが睨んできたので手を止めた。そういう反応はするなよ、イマリはまだ子供だろう。

 ふと、持ち歩いている懐中時計を見ると十七時を示していた。ここはジルヴァニアと時差は然程無い筈だからほぼこの通りだろう。三人にそろそろ帰るぞと伝えると、少し物足りなさそうな顔をする。


「またいつでも来れるだろう。それにあまり遅くなってはイマリの父親も心配するから今日はこの辺にしとかないか。」


 そういうと皆納得してくれた。

「また来る。」とイマリに別れを告げ、ロッジに戻った。帰ったら帰ったで、「お腹が空いた早くご飯作って。」と叫くシャーリー。本当に忙しない。仕方無いとキッチンへ向かおうとすると、「ぐう。」という腹の鳴く音が聞こえ、


「分かった、分かった、そこまで主張しなくても作るから待ってろ。」


 と言うと、セシルが恥ずかしそうな声で「ごめんねレイ、今の私なの。」と顔を赤くした。すると直ぐシャーリーに「デリカシーが無いわよレイ!」と怒られてしまった。今のは失敗したな、流れ的にシャーリーだと思い込んでいた。気を付けねば。それはそれとして、早く料理を作るとしよう。

 食後、風呂に湯を張る。雪は無かったが、北はやはり寒かった。冷えた体をゆっくり湯に浸かり温めよう。二人を先に入れ、上がってきた所で俺も入ることにした。脱衣所で上着を脱ぐと俺はそれに気付いた。腹に落書きがしてあったのだ。顔だけじゃ無かったのか、やられた。ふっ、何だか笑えてくるな。体を洗いインクを落とす。風呂から上がると、二人の笑う顔が見えた。


「レイどうだったのよ、なかなかの自信作だったんだけど?」


 ふうっと一息つき、二人の髪を順にわしゃわしゃした。「やめなさいよ!」と笑いながら叩いてくるシャーリー。痛いな、加減をしたらどうなんだ。セシルはというと、「あはは、ごめんね。」と言って笑うだけ。これだな二人の差は。

 それから少しして、二人は遊んだ疲れか眠気が来たようで、ベッドのある部屋へと向かった。例の如く俺のベッドが無くなったので、前と同じジルヴァニアの家具屋に出向いた。今度は時間にゆとりがある分、しっかりと吟味しよう。


『兄さん、兄さん。』


 リオか。前と同じ様なタイミングだな。


『どうしたリオ?』

『大変なんだよ兄さん!さっき父上が血を吐いて倒れたんだ!早く戻って来て!』

『分かった、直ぐに行く。』


 なんだと、父上が倒れた!?あんなに元気そうだったじゃないか。とにかく城に戻らねば。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ