王領騎士団と騎士ヴァン
役場内の王領騎士団の詰所前からになります。
母様と俺は村役場に若干そぐわない王領騎士団があるフロアの王家の紋と剣と盾の木製プレートが見える玄関口にいる。
母様は俺を抱えたまま、王領騎士団所の詰所らしきところに行き、一人だけそこに居た軽装鎧を装備した若い男の騎士らしい人に声をかけた。
「あの、申し訳ございません。アルバートの妻ですが、アルバートはこちらに居ますでしょうか?」
突然、声を掛けられてびっくりっとした若い騎士は続けて挨拶をしていた。
「こ、これはミレーヌ様、ぼ、僕は最近こちらの騎士団に赴任しまして、アルバート副隊長にはお世話になっております。アルバート副隊長は、ただいま――他の騎士団員と共に鍛錬場におりまして、今はここにいらしゃりません。お呼びして参ります! ――」
「いいですわ、みなさまにご挨拶と代官様への用事もあって来ましたので」
「はい、あっ……、そこに抱かれていらっしゃるのは、ご子息でしょうか?」
「ええ、そうよアルフと言うのよろしくね」
「おおー、初めてましてアルフ殿、僕はアルバート様の部下でヴァンです、二十歳、ど、独身です」
(……ちょっと、俺にそんな挨拶されてもなぁー、リリは絶対にやらんからな)
「はぃー」
「わ、これはこれはご挨拶、ありがとうございます、アルフ殿――」
「いえいえ、単に知らない人の声に反応してるだけですわ」
母様は少し笑いながら若い騎士団の騎士に話しかけていた。
(あなたも若干残念な団員ですね……でも天然物でも好きですよ)
「は、そうですよね、――ミレーヌ様の噂もお聞きしていたものでツイツイ緊張のあまりに、失礼しました」
「はぁ――、代官様の用事がすみましたら、またこちらに寄らせてもらいます。それまでにあの人に知らせて頂ければ、いいですわ」
「了解しました、アルフ殿」
突然、俺の中の残念騎士2号に認定した騎士が敬礼してきた。
(天然物なのか養殖物なのか、ちょっとわからなくなった……)
「じゃあ、よろしくね、ヴァン君」
「――は、はい、ミレーヌ様」
(あれれ、以前から知ってるのかな? ヴァン君って……)
母様は王領騎士団の詰所から奥にある壁際の長椅子に腰掛けて俺の声が聞こえてないのかしばらく休憩を取っていた。
1刻程は掛かっていないけどずっと俺抱えて歩いてきたんだよ。疲れるよね、やっぱ母は大変なんだよ――。
「はぃー」(お疲れ様、母様ー)
俺は母様が休息を取っている間に騎士団のことを『神様からの知識』を使って探ってみた。
この国の騎士団はいくつかの騎士団に別れていて、まず騎士団とは貴族や王家が治める各領地を守護する目的で、騎士や魔法士とその附属員から結成された武官と文官の集まりで簡単言えば職業軍人のことだ。
父様はノーマン王領のホーク村に駐屯している駐屯武官って感じで、職務や立場は特別に区別されることなく王領騎士団所属の士爵階級を持つがこの駐屯部隊の副隊長の騎士ということだ。
その他にも、この国の王都がある最大の王都領には王都を守護する近衛騎士団と王宮を守護する王宮騎士団、各貴族領を警備する騎士団がある。
貴族領の騎士団は、貴族が統括していて、例えば母様の爺様がその統括長となりウェールズ領騎士団と称されるようだ。
もっと条件をいろいろ付けないと規模などの知識は引き出せないようで、この国の人口の10%は騎士団に所属していた。
俺が考えてるうちに、母様は椅子から立ち上がり奥にある階段で二階に上がり、代官の受付らしき女性の前にたどり着いた。
――
ここから、母様と代官様との話はこの後のエピソードで……。
――
代官様との話が終わり、母様は二階から降りてまた王領騎士団の詰め所の前まで歩いて来た。
そこには王領騎士団の団員6人程、机や長椅子に腰掛けながら雑談か職務の話しをしている声がしていて、母様は父様を見つけたのか少し大きい声で呼んでいた。
「あなたー」
父様はその声が聞こえたようで急いでこちらにやって来て。
「ミレーヌ、代官様の用件は終わったのか」
「はい、のちほど代官様がそのことであなたにも相談があるとおっしゃていましたよ」
「そうか、じゃあ、昼食と休息が終わったら伺うとしよう」
その後、父様は振り返り声が通る大きさで騎士団員達をこちらに呼んでいた。
「職務中すまんが、みんなちょっと来てくれるか」
と騎士団員達の6名ほどが集まって来た。
「ここに居るのが全員じゃないが俺の息子を紹介する……」
父様が俺のことを紹介しようとすると例のヴァンが突然割り込んで来た。
「任務、御苦労様でしたアルフ殿!」
「う……と言うことだ……俺の息子だよろしく頼む……あとヴァンは素振り五百回な……」
「えー、酷いです、副隊長ー」
「おめでとうございます、ミレーヌ様、アルバート副隊長」*5
「はぃー」(よろしくな)
「ありがとう――みんな! 今度、我が家でささやかなだけど、お祝いをするからみんなで来てくれるよ、日程はあとで調整する」
「わかりました。是非うかがいます!ありがとうございます! 副隊長ー」*5
皆が色々と騎士団の方々が挨拶をしてくれたが、若干1名は――除く。
(そろそろ、立ち直ろうな残念な騎士)
「では、そろそろ戻りますね、私は……」
「そうか、俺はまだ職務があるから、帰りはいつも通りだ」
「副隊長ー、僕がアルフ殿とミレーヌ様を荷馬車で送って来ます、あ、あくまでも村の巡回ですけど」
にっこりっと笑い残念な騎士がナイスな提案をしてきた。
「そ、そうか……そうだな……巡回の時間だな……」
「……」*5
(ナイスだ、残念な騎士よ地位は不動だけどな)
「では、ミレーヌ様、準備して参りますので、あと少ししたら入り口においで下さい」
「はい、ではお言葉にに甘えてお願いします」
残念な騎士は駆け足で"ガシャガシャ"と音をたてながら外に出て行った。
母様は、しばらくして村役場の入り口に行くと残念な騎士が荷馬車っぽいホロ無しの荷馬車の前で待っていた。
「申し訳ないです、ミレーヌ様、ホロ付きの荷馬車は今隊長達が使ってるもので荷台にお願いします」
と踏み台を用意して載せてくれた。母様は、横向きに座り俺は正面が見える感じで荷馬車に乗り込んだ。残念な騎士のヴァンは踏み台を荷馬車に積むと御者台に腰掛け《《馬らしい動物》》を操っていた。
「わふーヒヒーン」っと荷馬車を引く動物が鳴いて、うちの方に向かって走り出した。
俺は非常に困惑しているヴァンが連れて来た初めて見た動物、今は――馬?らしき荷馬車を引く動物が気になって気になってしかたない。
そう――思っていたが母様と残念な騎士ヴァンの話に耳を傾けた。
「アルバート様には一ケ月前の新任のときから随分とお世話になっています、いつもドジなこの僕にいつも優しく厳しく接して貰ってます」
「そうですか、まあ普段はああいう人ですけど、いざとなると全然違いますからね」
「ですよね、僕の憧れの騎士様です、アルバート様は、剣技もさる事ながら武功も……」
(えっと残念症状は移ったりするんでしょうか……非常に不安です……)
「まあー、アルバートも幸せですね、傍に憧れて思ってくれる人がいれば」
「ここの王領騎士団員、いや王領騎士団の全員が憧れてる存在ですよ、――なにせ西方の奇跡、微笑みの魔女を仕留めた英雄様ですから」
ヤバって感じで口を塞ぐ残念な騎士に母様はニコッと笑って冷たい表情で言葉を返した。
「そ、そうね、ただ、私は仕留められておりませんよ! ヴァン君は素振り五百回追加ね」
(残念な騎士ヴァンよ、お前はもう立派な母様の部下決定だ)
「そ、そんなーミレーヌ様までー」
と母様は楽しそうに笑っていた俺はと言うと荷馬車と母様に揺られながら周りの景色を楽しんでいた。
――いやそんなのはあとだ。
俺から見える荷台から、荷馬車を引く動物は後ろから見ると馬にしか見えない。ただ、一点を除いては、筋肉質のいい身体、お尻にある尻尾、長い首から生えるたてがみ――『ヒヒーン』と鳴く声。…………前世のアニメで出てくるヤックルに思えた。――鳴くまでは気にしなかった。
(……なぜにヤギ顔で髭と角生えてるんだ! おまえ達は、……ヤギ馬だな今日から)
「わふーヒヒーン」
突然、自分を主張するがことくヤギ馬は鳴いた。――最初の鳴き声はまだ不思議だが。
母様と俺を乗せたヤギ馬の荷馬車は荷物を載せていないこともあるが意外にも速かった、体感的な感覚になるが母様の足より5倍は速いだろうか。ヴァンは母様や俺を乗せているから全力は出していないだろ、実際はもっと速いかもしれない。
そう考えているいつの間にか、母様は半刻以上は歩いていたと思う道のりがもう、我が家が遠くに見える小高い丘の上だった。
しばらくすると我が家について踏み台を下ろしくれると母様は荷台からそっと降りて残念な騎士に挨拶した。
「ありがとう――ヴァン君も、お祝い是非楽しみして来て下さいね、あと素振り五百回忘れずにね」
「は、はい……ありがとうございます。では、私は《《村の巡回》》がありますので、これでにて失礼いたします。アルフ殿もお元気で……お互い元気で会えるように願っています」
「はぃ~」(今日で死ぬなよ――、元気でなー残念な騎士よ)
「わふー、ヒヒーン」
ヤギ馬が鳴き、荷馬車は去って行ったが、俺には心なしかドナドナドナードナーっと荷馬車が言っている気がしていた。
(外出すべてが他力本願でしたけどね……、――実際の意味は違います!)
――つづく
この日はあと、母様と代官様と、この日の締めに短めの執筆が計二話つづきます。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
この日はあと、母様と代官様と、この日の締めに短めの執筆が計二話つづきます。




