表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヴァンパイアロード殺し

作者: 虎馬チキン


 我が輩はヴァンパイアロードである。そして転生者である。名前はどうでもいい。


 ヴァンパイアに転生した時、俺は歓喜した。

 だってヴァンパイアだぞ、ヴァンパイア。しかもヴァンパイアロード。吸血鬼の王。最高クラスの当たり種族だと思った。


 でも、世の中そんなに甘く無かった。


 まず気になったのはモンスターの発生方法だ。

 この世界の事など何も知らない俺だが、自分の置かれた状況だけでも、多少の推測は出来る。  


 俺は気づいた時には洞窟の中で仁王立ちしていた。

 多分ポップしたんだろう。周りに俺の誕生に繋がるようなものは何一つ無かった。


 そして俺がいる洞窟は狭い。

 大きめのテントと同じくらいの大きさしかない。ギリギリ立てるレベル。

 もはや洞窟じゃ無いな。穴だ、穴。


 これがダンジョンとかなら、良かった。

 ヴァンパイアロードがダンジョンボスとしてポップするとかなら、違和感が無い。

 だがテントレベルの穴でポップするヴァンパイアロード。

 何故だろう、雑魚臭が凄い。

 そしてシュールだ。かっこ悪い。

 すぐに旅立とうと思うのも当然だ。


 しかしここで問題発生。

 空は晴天だ。見事に雲一つ無い。

 ヴァンパイアに対する嫌がらせとしては満点だ。


 だが俺は行けるだろうと思った。

 ヴァンパイアロードと言えば、吸血鬼の王。そして真祖。真祖が吸血鬼の弱点を克服しているのは定番だ。

 そして外に出た。なんの躊躇も無く。

 

 三歩歩いた所で、消滅しかけている事に気づいた。


 痛覚が無いから気づくのが遅れた。

 前世から数えて、生まれて初めて、痛覚の必要性を実感した。


 命からがら洞窟に逃げ帰って思う。

 誇り高きヴァンパイアロードが三歩散歩しただけで瀕死とか冗談キツい。

 そして笑えない。


 しかも、この周辺には、日光を遮る物が何も無い。ものの見事に何も無い。

 発生地点から動けないモンスターとか、何その悪質なバグ。

 

 だがまだ慌てる時間じゃ無い。

 今がダメでも夜を待てば良い。

 ヴァンパイアは夜の王とも言われている。大丈夫だ。


 ……夜が来ねー。


 何言ってんだと思うが、マジで来ないんだから仕方ない。

 ふざけた事に、この世界には太陽が複数あった。

 そして、互いの隙を補うようにローテーションを組んでいる。

 チームワーク強すぎだろ。

 そして相変わらず、雲一つ無い。


 おかしい!いくら何でもこれはおかしい!

 なんでこの世界、ヴァンパイアに対してだけこんなにメタ張ってんの!?

 なんでヴァンパイアに対してだけ、対策完璧なの!?

 神か!神なのか!神様がヴァンパイア嫌いなのか!




 その後もいろんな事して、現状からの脱出を試みた。


 眷属召還で部下を呼んで、傘代わりにしようとしてみた。


 一瞬で消滅した。一秒も保たなかった。

 もしかしたら、ヴァンパイアロードだけが日に弱いくて、眷属なら大丈夫なんじゃという、淡い希望は砕け散った。

 むしろ、三歩でも歩けた分マシらしい。


 じゃあもう、外に行くのは諦めて、洞窟を拡張して、引きこもってやろうと思った。

 

 いくらヴァンパイアロードとは言え、生まれたて、レベル1の力では洞窟に傷一つ付ける事もできなかった。

 血液武器化とか使ってみても、拳が砕ける始末。

 痛覚は無いし、再生速度も速いけど、意味が無かった。


 蝙蝠変身?

 それこそ無意味だ。蝙蝠になっても、弱点は変わらない。

 



 詰んだ。




 終わったわこれ。

 俺はこんな、寝返りをうっただけで消滅するような所で一生を過ごすのか。

 しかも、予想が正しければ、ヴァンパイアロードに寿命なんて無い。


 気分は孫悟空だ。

 大岩の下に封印された、お猿さん。

 三蔵法師が来なければ何も出来ない。


 


 もういい、寝る!寝てやる!

 元々俺はヒキニートだ。なんて事無いもんねー!

 永遠に惰眠を貪ってくれるわー!




 結論。異世界チートなんて、ろくなもんじゃねーよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 爪立てて地道に掘り進めるか、迷い込んだ小動物を糧に何とかレベルアップするか。 それくらいしか出来ない? [一言] そして考えるのを止めた、とENDマークでも出て来そうだな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ