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○の叔父  作者: 朝倉義政
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嘆いたところで始まらない。幸いうちの村は尾張の中ほどにある。うちが襲われる心配は……微妙にある。大名同士が殴り合いをしている横で、ヒャッハーたちが入ってくる。このヒャッハーというのは多くの場合、食い詰めている他国の人間だ。

うちの村は庄内川近くにあり、その上流地域である東美濃から侵攻してくる可能性があるのだ。俺が生まれる前にも襲いに来たことがあるらしい。

それに対する備えは特にない。動物が入ってこないようにするための柵しかなく、それ以外だとできる事がないのだ。俺が武士階級とかだっら築城だとか、いろいろあるのかもしれないがあいにくと農民ですしおすし。

そしてうちの村はそこまで多くないが、他の村には“労役”というものがある。税金の一種だが、税金の率が全体的におかしい。きっとこれもっヒャッハーが湧かざるを得ない理由だろう。労役が主に発生するのは夏と冬、これはヒャッハー期間と重なる。夏と冬はやることが少ないので農村から人を引き抜いてもいいとか思っているんだろうか?

とんでもない夏だって農作業はしっかりとある。農薬がないから雑草、害虫がどこからともなく大量発生するし、大雨に備えて水路の整備も怠れない。冬は春に向けて堆肥作りをしなきゃならないし、麦の世話だってある。

しかし現実は非常である。男での多くはヒャッハーと労役に取られて、どれもままならない。雑草や害虫はどうにかなる。しかし水路の整備にはどうしても男手がいる。水路が崩れないように木の板で作った杭を打ってあるのだが、年月の経過により腐るので古いものを交換しなければならない。今年の夏は何とかなったが、遠からずダメになる。水路が崩れれば稲の育成に大きく影響が出てしまう。

村長にそのことを伝えてもダメだった。別段今壊れて困っているわけでもないというのがその理由だが、壊れる前に整備しろと言いたい。いや言った、言ってやった。返ってきた答えは


「金も人もないから無理」


と正論で返された。村の男衆で15~30前の連中は軒並みヒャッハーしに出かけてしまうのがこの村だ。このおかげで労役が少ない反面、ヒャッハー中は力仕事がほぼできない状態になっている。

見回りの回数を増やすと言っていたがどうだか。幸い今年はもうヒャッハーを全力でしなくても済む程度の収入が有ったので、堆肥作りの人出は借りれそうだ。堆肥の効果を実感してもらえれば、餓死者が出るようなことはそうそうないだろう。


それはさておき稲刈り脱穀納税暴動の4コンボが発生した。

詳しくはこうだ。無事に稲刈りが終わり、俵に脱穀した米を詰める。それが終わったら秋祭りだ。親父達は酒を飲み、俺はこの世界にきて初めての白米を貪っていた。いややっぱり米は良い。粟だの稗だの虫だのを食べていたこの身では、米への欲求が抑えきれなかった。

米は良い。大事なことだから2度言った。好きなだけ米が食べられた現代が懐かしくも羨ましい。

そんなお祭りが終われば納税の時間である。一年間丹精……はそこまで込めてないが、それなりに苦労して作った米を武家に納めるのだ。納税は国民の義務、ではなくヒャッハーの親玉へのショバ代なのだから払わなければならない。払わなければヒャッハーを差し向けられてしまうかもしれない。

代官が来て納める米を回収しに来た。

おけおけ。

代官が既定の数より多く持っていこうとした。

Fuk○'n son of a ○itch!!

気が付かないとでも思ったか。農民だけで計算ができないと思い込んだのが運の尽き。この村には俺がいる。8割でも酷いと思っていたところを9割近く持っていこうとしやがった。そのことを村長に指摘して、親父を含むわが村が誇るヒャッハー達を徴集。

最初は小僧の戯言だと大声を出し自分の上司から渡されたであろう命令書を振りかざして、一緒に来た侍たちに武器を抜かせようとしていたが、親父達が完全武装で囲めばそうはいかない。侍たちは10名ほど、それに対してこっちには戦闘慣れした足軽40名。この場だけ見れば数が違うんだよ、数が。

代官から文書をかっさらい、村長親父俺代官立ち合いの元長老に読んでもらうことになった。内容はこう。


「今年の戦での働きに感謝する。今年の年貢は恩賞として6割とする 織田大和守」


ホッホーウ。若いの、やってくれるね。


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