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○の叔父  作者: 朝倉義政
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 源助はデカい。俺が90㎝位で庄衛門が110㎝位なのに対して140㎝位ある。年を聞けば今年で9歳だという。まさかの庄衛門と1つ違い。そんな源助は今


 「なんでわがざまば、だいじょぶなんでずが」


 俺の近侍ということで一緒に修行をつけられている。ここら辺の雪は徐々に解けてきたが、川の水はまだまだ冷たい。


 「ぞうだぞうだ、わが、あなだばばがだ」

 「だいじょうぶじゃ、ないが」

 「「うぞだ!!」」


 当然庄衛門も俺も一緒にしても随分と仲良くなるのが早いもんです。源助は今惣兵衛の家に居候しているから当然と言えば当然でもある。初めは屋敷で暮らさせるつもりだったが、それを庄衛門がインターセプトした。いくら何でも、今日初めて会った人物を義父上と同じ屋敷に住まわせる訳にはいかないという。実に立派な言い分ではあるが、庄衛門俺はいいのかと突っ込みたい。




 「へぇ、近江ではそんなことが起きていたのか」

 「はい若様。うちの家には直接は関係なかったのですが、流民や山賊などが流入してきて田畑を荒らすので大変でした」

 「なるほど、だから源助殿は甲斐へ行くことになったのですか」

 「ええ庄衛門殿。親戚の伝手を借りて、清白寺に行くはずでした。何しろ私は食べる量が多くて。私が減れば幼い兄弟たちが十分に食べられます」


 近江では去年大戦があったらしい。それというのも覚えているだろうか? いつぞや俺の生家である木下家について話したと思う。そのとき話した長男、京極中務小輔高清が跡継ぎ問題で再度国を追われたのだそうだ。

 原因は跡継ぎ問題。長男に譲るか次男に譲るかで家中が分裂。結局長男を押していた浅井備前に京極中務小輔は敗北し、尾張に逃げ込んだという。

 へーほー。え、まじで? 知らんかった……って当然か。その頃俺農民だったし。今はどこに居んのかな?

 殿の家には居ないから候補は伊勢守さんちか、大和守さんちのどっちかかな。

 ほむほむ。

 ほむ。


高安貞勝

 「義父上失礼足します」


 珍しいことに幸吉が夜分遅くに参った。この養い子は思った以上に拾い物だった。幼い故まだ小さいが、手足は大きく骨も太い。大きく育つだろう。それに武才の方も良いものを持っている。特に弓については天性の勘のようなモノを持っているようで、今後の成長が楽しみだ。農民上がりだが、頭の方は心配していない。そっちについては信貞様のお墨付きだ。

 それよりも木綿の件について聞くと、どうにも言葉を濁らせよる。昔三河の人間に聞いてというが、こいつ今年でようやく6つだろうに。昔っていつの話だ?


 「義父上? お疲れでしたらまた後日うかがいますが」


 それに妙に聡い。


 「そこまで疲れておるわけではない。何の用だ」


 服部織部に対して細作を放つ準備をしていただけだからな。小塚には戻るときには里から何人か連れて来るように言っている。今までの人数と合わせてどう配置するかが問題だ。


 「今この尾張に京極中務小輔様がおられるとか」

 「どこから……、そうか新しい近侍は近江の出身だったな」


 隠しているわけでもないが、そうそう広まることのない情報だ。それにしてもそれがどうしたというのか・


 「義父上は中務小輔様がどこのお家に逗留なされているのかはご存知でしょうか?」

 「知っておる」

 「伊勢様ですか、それとも大和様ですか?」

 「大和守様の所だ。それで……」


 どうしたという言葉は口から出る前に飲み込む羽目になる。


 「かの御仁を使いまして、少々したい事がございます」


 目の前の小僧の笑みが、明かりの炎が揺れたせいだろう。一瞬とても禍々しいものに見えた気がした。


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