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○の叔父  作者: 朝倉義政
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朝起きたら、古い民家。床は板張り、壁も板。竈で飯を炊く昔懐かしいを通り越して、いつの時代だと突っ込みたくなるような家に子供の体で目が覚めた。

白昼夢か。ははは、珍しいものを見た。これは会社でいい話のタネになるぞ、と最初の内は思った。そんな余裕はあっという間に飛んでったけど。

家はには俺を含めて家族4人で住んでいる。爺さん婆さんは俺が生まれる前に逝ったという。

家の主にして親父の名前は弥助と言って村の実力者の一人だ。織田大和守(誰?)の足軽頭で合戦があった時はこの村、中村の男衆を率いて参陣する。村の中ではお殿様みたいなおっさんだ。口より先に手が出るので必死こいて逃げ回っている。以前怒らせたときは半殺しにされた。キチすぎる。よく日に焼けていて真黒な肌をしていて腕が長い、膝ぐらいまである。劉備かなんかかと思ったが、それの上に猿顔が乗っているのでチンパンジー(野生)のオスみたいだ。毛深いし。

おふくろの名前はとち。近くの山田村から嫁いできたという。物静かでいつもにこにこしているが、俺は知っている。親父ですらおふくろには頭が上がらないということを。ちっちゃくてぽっちゃりな体系をしている。そして夫婦仲は円満である。毎晩煩い。

そして我が兄弥右衛門。親父+おふくろという計算式によりチンパンジーからネアンデルタール人位に進化した顔立ちと同じ計算式により親父より一回り小さい体格を持つこの家の跡継ぎだ。なお今年で12になる。性格は親父にそっくりで、よく俺の事を陰でいじめようとしてくる。逃げるけどな。

兄弟はあと姉が1人と兄が2人いたらしいが兄二人は病死、姉は御器所村という所に嫁いでいったらしい。なお面識はない。

この家での俺の扱いは“しゃべる家畜”といった程度だ。体の発達具合を見ると3~4歳位だと思う。あと栄養失調気味。アフリカ難民の飢餓状態の子供の写真を見たことがあるだろうか? 全身ガリガリなのに腹だけ出っ張ている状態に近い。

まあ1日2食でその2食も、まず親父次に兄貴とおふくろの順番で最後に俺といった順番で食べるから、満足に食べれたためしがほとんどない。おふくろが残してくれようとするんだが、兄貴が食べちゃうんだなこれを。それにおふくろがしっかり食べないと、親父が俺の分を奪ってでも食べさせようとするようになってからは、申し訳なさそうに食べるようになった。で俺の分はなべ底に残る物をかき集めて食べる……といったものに。

当然だが食べた気にならないので、農作業を手伝いつつ食料を確保している。俺の仕事は今のところ水汲みのみなので頑張れば十分時間は作れる。ちなみに俺が採って食べているのは魚とか、お肉とかそんな良い物じゃない。てかそういったものが採れるような所はしっかりと人が住んでいて、彼らが独占している。そんな既得権益握っている人たちがいるので、もし魚を捕る手段を持っていたり、獣を狩る技術があっても取れない。もし取ってしまったら戦争だ。

結果として俺の主食は、なんと……虫。実際子供の手で捕まえられて、大人や周りに取られない食い物は虫しかなかった。田んぼにいる泥鰌や田螺は、勝手に取ると親父に殺される(以前やって半殺しにされた)。虫の料理法は焼くことのみ。塩すらないが、腹に物が入るだけでありがたい。あとは野草や茸の類を集めて食べている。ドングリを始めとする木の実が手に入ればいいんだが、今に季節は春。早々手に入らない。しかも数少ない落ちている木の実は、野生動物と奪い合いになるのでなかなか手に入らない。兎とか鹿ならいい奴らは襲ってこないから。猪さん狼さん、そして野生のわんわんお。とっても怖い。猪は目を見ながらじりじり下がればあんまり襲ってこない。狼さんは、以前親父達が一家族潰したので当面出てこない。しかし野生のわんわんおは違う。どっからともなくやってきて、気が付くと群れになって襲ってくる。ほんと山は地獄だぜ。

そんなこんなで、よく虫やらなんやらを食べている俺の事を陰で“虫吉”とか呼んでいる。何と言われても気にはならない。それよりも腹に溜まるものが欲しい。切実に欲しい。




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