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第6話

 最悪の夢(?)から目覚めて気晴らしも兼ねて日課に決めた魔力操作を行うと、ほんの微かだが昨日より魔力が柔らかくなった気がする。

 体感を俺の個人的な意見で言えば魔力は超固い物で粘土細工をしている感じだ。なので凝り固まった魔力も日々捏ね続けていけばいずれ柔らかくなりスムーズに動かすことが出来るようになるだろう。

 ここで出てきた疑問は魔法を使えば魔力が捏ねられるのかということだ。

 結果でいえば否である。

 どうやら魔法を使う時に魔力は必要分を千切って使っている感じで、大本の魔力は動いていなかった。

 なので魔力を捏ねるには魔力そのものを動かすしかない、そこで俺はただ捏ねるだけではつまらないのでラノベでお馴染の身体に魔力を循環させて身体強化させる方法を常に行うことにした。

 といっても実際のところ魔力を循環させただけで身体強化が出来ているのか分からないなぁ・・・・・壁でも殴ってみるか?


 馬鹿なことを考えているところにメルシャがやってきた、どうやら起こしに来てくれたようだ。


「おはようございます、お早いお目覚めですね」

「おはよう」

「朝食をすぐにお持ちできますが、どうされますか?」

「んじゃ、お願いするよ」


 朝食は西洋風の朝食といった感じで、俺としては米の方が良かったが贅沢は言ってられないか。


 朝食を終えてしばらくすると王様からの呼び出しだ。


 まだ2度目だが謁見の間の堅苦しさは慣れないなぁ。


「トウヤ殿、此度はこちらの都合で召喚びだして大変申し訳なかった」

「いえ、ある意味事故のようなものですので私は気にしておりません」

「そう言ってもらえると助かる。・・・それでそなた処遇であるが、次の送還に必要な魔力が魔法陣に溜まるまで王城に客分として滞在してもらうことになったのだがどうだろうか?」


 より詳しく聞いてみると思ったよりかなりの好待遇だったが、色々と制限も付いてくるし数年も窮屈な思いをするのはちょっと嫌だ。やはりここは俺の案を採用してもらったほうが良いな。


「大変有り難いお話なのですが、私には勿体ないと思われます。ですので1~2ヶ月分の生活費と簡単な中古の装備だけ頂ければ、送還の魔力が溜まるまで普通の平民として外で生活したいと考えているのですが」

「そうなるとこちらから全く支援はできなくなるが、それでも良いのか?」


 その分制限が全く付かない、せっかくの異世界なのだから俺としては自由に世界を見て回りたい。


「はい、構いません」

「・・・そうか」


 王様はほっとしたような残念なような感じの返事だ。


「あい分かった、支度をさせるので部屋で待たれよ」

「ありがとうございます」


 部屋に戻ってベッドに倒れこむ、はぁ疲れた~。

 思った以上に話が簡単に決まった、もう少し何か言ってくるかなと思ったけど。聖剣が使えないから最低限の補償だけすればどうでもいいって考えかもしれないな。



 コンコン!



 ゆっくり寛いでいると誰か来た、ちょっと早い感じはするがたぶん支度が整ったのだろう。


「どうぞ~」

「失礼します」


 入ってきたのはディオラさんとルーシア王女だった、支度が出来たわけじゃないのか?


「ルーシア様がお話があるそうです、あとこちらが用意された荷物となります」

「あっ、準備が出来たんだ。それで話って?」


 ルーシア王女の寂しそうな表情から察するに楽しい話でないことはたしかだろう。


「お父様から聞きました、ほんとにお城から出て行かれるのですか?」

「あぁ、城はたしかに安全だけどせっかく異世界に来たんだから色々と見て回りたいと思ってね」

「そうですか、これから毎日トウヤ様の世界の話が聞けるかと楽しみにしておりましたのに」


 残念なのは俺が居なくなることじゃなくて話が聞けないからか、まっそんなもんだよ。


「次会う時までに色々面白そうな話を仕入れとくよ」

「絶対ですよ」

「よろしいですか、トウヤ様は城を出てからどうされる予定でしょうか?」

「う~ん、町を見てから考えるって感じかな」

「それでしたら初めに冒険者ギルドに行って冒険者登録されるのがよろしいかと」

「どうしてか聞いていい?」

「はい。どの町や国に入るにも身分証が必要ですが、トウヤ様は召喚されて来られたので身分証を持っておられません。そこでギルドで登録して貰えるギルドカードです、それが身分証となりますので」


 現在身元不明だから怪しい人物・・・うん、身分証は必要だな。


「分かった、真っ先にギルドに行くようにするよ」

「それがよろしいかと」

「あの、ディオラ、冒険者ということは魔物と戦ったりするのですよね」

「魔物だけではありませんが討伐・護衛等の依頼が主になるでしょうからそうなります」

「トウヤ様の世界は凄く平和なのですよね、戦ったりできるのですか?」


 全てがってわけではないが俺の周りは平和なわけだし、もっともな意見だ。


「でしたら今の時間訓練場を騎士団が使用していますので参加してみてはどうでしょう」

「それは良い考えですディオラ、トウヤ様さっそく行ってみましょう」


 早めにこの世界の人達の強さを知りたかったところだし、訓練参加はまさに渡りに船だ。



==============================



 やって来ました訓練場、目の前には10代~20代と思われる男達が木剣を持って1対1を行っている光景が広がっているんだが・・・。


「思ったより人が少ないな」

「今ここに居るのは第五騎士団の方々のみですから」


 ついボソッとでた言葉にディオラさんが返してくれる。


「第五騎士団?」

「今年入団した新人が配属されるところです、見習い騎士を育成する場所といったところでしょうか。ここで数年間訓練や色々な仕事を学び、後に上が希望するところやその者の適正にあったとこに配属されます」


 見習いかぁ、だけど動きは悪くないし素人ってわけじゃないようだ。


「いちおう騎士になるには試験がありますから最低限の実力はあります」

「たしかに最低限の実力はありそうだ。なかでもあの人とあの人は他よりも上だろう」


 模擬戦をしている騎士達のなかで誰が見ても他とは実力が上の2人を指差す。1人は10代の男で、もう1人は20代の男だ。


「リュカ様とバリドワード伯爵家四男のコイズ様ですね」


 20代の男がリュカで10代の男がコイズか、リュカが名前だけなのは平民だからだそうだ。


「リュカ様は10年近く冒険者をしていたそうですので実力は実戦に基づいたものでしょう」


 たしかに、分かる奴には分かる感じにリュカは相手を指導するかのように実力を抑えてやっているように見える。これは指導者としても優れていると感じられるほどだ。


「コイズ様は幼少より武術訓練をなさっておいでで、その際に天才と言われていた・・そうです」

「ふ~ん、天才ねぇ」


 自分を誇示するかのように実力を出して相手を倒しているが、天才と言えるかと聞かれたらNoと俺は言うかな。あえていうなら早熟と言った方がピッタリな気がする。

 それにしても騎士-見習いとはいえ-なのだからそれなりに高い実力を持ってるだろうと期待していたのだが、正直言って師匠のとこにいた門下生や師範代の方が上だ。唯一リュカの実力だけはまだ分かりかねていると言ったところだろうか。

 リュカ以外はハッキリ言って・・・


「期待はずれだな」(ボソッ)


 俺はもう興味無しとばかり溜息を洩らす。


「おい、貴様!」


 大声が聞こえた方を見ると、近くで模擬戦をしていた男の1人が怒った感じに俺を指差していた。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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