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第3話

「始めにもう一度言っておきますが、私は魔法について詳しくありません」


 さっきも言っていたな、まあメルシャさんはメイドだからこれは仕方ない。


「大丈夫、とりあえずどんなものか聞きたいだけだから」

「それでは、まず魔法ですが分類は<詠唱>と<魔法陣>の2つに分けられます。<詠唱>は唱えて発動させるもの、<魔法陣>は描いて発動させるものと思って下さって結構です」


 やっぱり詠唱といったらはあの厨二的なものになるんだろうなあ、魔法陣はこっちに来た時に見た幾何学模様みたいなものだろうか。


「<詠唱>を実演してみます。我求めるところに水の祝福を、清浄なる水の恵みを今ここに・・・『ウォーター』」


 メルシャさんの右手の先から水が飛び出しコップを満たす。

 もっと長くなるかと思っていたけど、予想以上に詠唱は短く簡単なものであった。

 渡された水も至って普通で飲み水としても十分である。


「これが水魔法の最も初歩となります、見ての通り水を出すだけの魔法です」

「色々な用途にかなり使えそうなのに初歩なんだ」

「はい、あと次の魔法ですが。我求めるは暗闇を照らす灯り、燃える火を今ここに・・・『灯火トーチ』」


 メルシャさんの右手の指先にライターのより少し大きめの火が灯る。


「こちらが火魔法の初歩となります。私は長時間の維持が出来ませんので灯火としては無理ですが、ロウソク等の点火には使えていますので特に問題ありません」

「これも初歩なんだ」

「えぇ、これらは魔力消費が少なく攻撃性もほとんどありませんから。私が使える魔法はこの2つです」


 話を聞いた限り魔力消費量と威力だけで魔法のランクを付けてるようである。


「それではどうぞやってみて下さい」

「・・・えっと、魔法を見せてもらっただけで何にも習ってないんだけど?」

「大丈夫ですよ、十分な魔力を保有していれば誰でも詠唱するだけで使えますので」


 メルシャさんは笑顔だが、俺の内心はバクバク状態である。

 元の世界に魔法なんてなかったので魔力を保有しているかどうか不安だからだ。

 魔力消費が少ない魔法ですら使えなかったら魔法は諦めなければならないのかあ。


「どうかなさいましたか?」


 メルシャさんが心配そうに声をかけてくる。

 えーい、ここは異世界召喚もののテンプレである主人公最強を信じてやるかっ!


「我求めるところに水の祝福を、清浄なる水の恵みを今ここに・・・『ウォーター』」


 ていうか、ステータスというテンプレすら無かったのに主人公最強テンプレなんてあるのか?

 それに、そもそも俺身代わりだから主人公じゃないじゃん!

 右手を突き出しそんな事を思い浮かべながら詠唱を終えると、身体の中で何かが右手に集まってくる感触あった。

 その集まってきた何かが放出されるようにして、右手の先から水がでてくる。


「・・・できた」


 少しずつ込み上げてくる気持ちを抑えながら、出来るだけ平静を装いもう1つの方を試す。


「我求めるは暗闇を照らす灯り、燃える火を今ここに・・・『灯火トーチ』」


 先程と似たような感触があり、指先に火が灯る。


「よっしゃー!」


 間違いなく魔法が発動したのを確認すると、今度こそ気持ちを表にだした。


「おめでとうございます。今は魔力が少ないとしても魔法を使い続けたら保有魔力は増えるそうですので頑張って下さい」

「メルシャさんは魔力を増やして他の魔法を覚えたいとは考えなかったの?」

「考えたことはありますが、魔力を増やす為にはけっこう魔法を使わないといけないのです。ですが使いすぎると魔力枯渇状態となり体調不良、悪ければ気を失ったりします。しかも、それだけやって増える量は微々たるものらしいのです。働かなければならない私としては体調不良になるわけにいきません」

「なんか世知辛いなあ」

「そうですね。なので本格的に増やすのは諦めました、それに今のままでも十分ですので」


 何が起こるか分からない世の中じゃ体調は万全のほうがいいな。

 となると魔法が使えるのは分かったから、次はどの位魔力を持っているか確認しておくか。

 あと、他の魔法も覚えておきたかも。


「他に魔法について知りたかったらどうしたらいい?」

「そうですねぇ。簡単な魔法について知るだけでしたら魔術士の方に聞く、冒険者ギルドで聞くの2つでしょうか。専門的なものでしたら魔法学院で学ぶですね」


 おお、冒険者ギルドと魔法学院はあるか。やっぱりこの2つは異世界なら押さえておきたいものだ。


「魔法について詳しく知りたかったら魔法学院に行った方がいいのか」

「えぇ、まぁそうなんですが・・・」


 メルシャさんが少し困った顔をしてる、何か間違ったこと言ったかな?


「何か間違ってた?」

「いえ、たしかに魔法学院は身分に関わらずどなたでも入学できます。しかも、魔法の研究・開発等もしているそうですのでより詳しく学ぶのでしたら一番かもしれません」


 よかった身分は問題無いみたいだ、だったら何故メルシャさんは困った顔してるんだろうか。


「特に問題は無いみたいだけど」

「・・・・・高いのです(ボソッ)」

「えっ?」

「高いのです! 入学金も年間の学費も凄く、とても普通の平民が払える金額ではありません。ですので、どなたでも言っていますが実質有力商人の子供や貴族・王族の子供だけしか入れません」


 酷い話だ、さっきの俺の喜びを返せと言いたい。


「酷い話だな」

「全くです」


 メルシャさんが少し憤慨している。


「もしかして、魔法学院に行きたかった?」

「それはもちろん行きたかったに決まってますよ。魔法学院の卒業生ってだけでも箔が付きますし、本格的に魔法が使えれば仕事を探す幅も広がりますからねぇ」


 思っていたより打算的だった。

 もとから魔法が存在している世界なのだから俺みたいに魔法に夢に持つわけないか。


「そっか。・・・とりあえず魔法学院の話はもういいや、もう1つの魔法陣について聞いていいかな?」

「魔法陣は・・・」


 メルシャさんがさっきのコップと同じようにどこからか取り出した物をテーブルに置く。

 どうやら羊皮紙のようだが表面に何か描かれている。


「このように魔法文字でできた魔法式を描いたものになります」


 召喚された時に見た魔法陣より小さく描かれている魔法式とやらもかなり少ない、たぶん魔法により必要な魔法式の数が違うからだろう。


「使い方は?」


 メルシャさんが羊皮紙の触れると魔法陣が輝き出し、さっきと同じ灯火トーチが現れる。


「魔法陣に魔力を込めるだけです」

「詠唱よりも使い勝手が良さそうだけど」

「そうでもないですよ。描き間違えていたらもちろんダメですし、必要な魔力を込めることができなければ当然発動しません」


 たしかに魔力はともかく見た感じこの時代は中世くらいだろうからコピー機なんて無いだろう。

 となると魔法陣を描く時は当然手描きとなり間違えたら一からやり直し、羊皮紙もタダじゃないから資金のことを考えたら效率は悪すぎるな。


「それに魔法文字を読める人がいませんから新たな魔法式を作ることができません。なので魔法陣は今分かっているものしかなく、その数も詠唱魔法よりも少ないそうです」

「魔法文字が読めない、なんでそんな事になってるんだ?」

「大昔にあった戦乱が原因で継承が途絶えてしまったと言われています」


 なるほどね、話を聞いた限りだと覚えるのは詠唱の方が良いってわけか。


「私が知っている魔法についてはこんなとこですね」

「色々教えてくれてありがとうメルシャさん、かなり助かったよ」

「いいえ、また何か御用がありましたらいつでもお呼び下さい」


 優雅に一礼してメルシャさんが部屋から出ていく。


「あっ、私のことはメルシャで大丈夫ですから」


 ちょこんと顔だけだし一言伝えてから今度こそ去っていった。



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