高校デビュー?
さて、高校デビューと言う言葉をご存知だろうか?
元々、地味だった少年女子が派手な格好をして非行に走る手助けをしている行事だ。
そう私は思っていたのだがいざ自分の番になるとこの認識を変えないといけない。
まず、外に出る為に自信をつけ様にも今のままでは無理だ。外に出ようとしたが部屋から出るのでさえ辛い私に何が出来る?
パソコンをカタカタ言わせる日々でネットサーフィンは得意でも外と言う大海を前にして私のボード技術も意味をなさない。きっとすぐに沈没しちゃう。
なんだかんだ言って受けた高校も割と伝統ある学校で実は兄も通っている。
今更ながら何故私はこの学校を受けたのだろうと後悔している。
いや、お母さんの実家方が私に対して五月蝿かったので牽制の意味を込めて、この学校を紹介されたのは知っているけど私も兄の情報や学校もネットとかで調べれば良かったと今になって思うが当時は色々とあったのだ。そう……色々ね。その時の今期のアニメが豊作などで目が離せなかったのだ。
……うん。まぁ、言い訳なんだけどね。
私は産まれながらにして嫌われ者である。お母さんとお父さんは私は知らないが大恋愛の末、駆け落ち、そして、離婚。
私に落ち度が無くても私はお父さんの子としてお母さんの実家から嫌われている。
……うん、話がそれた。このまま行くとネガティヴワールドに突入しちゃうので話を戻そう。
さて、本日だが輝かしい高校生になる為の第一歩として、まず私は14時までに学校に行かなくてはいけない。
こちら愛梨!大佐、これから脱ボッチ計画のミッションを開始する!
……そうは言ったものの外に行くまでに時間がかかる。そう、女の子としての準備ではなく引きこもりとしての外に出る為の準備である。
冬コミとかなら嬉しさ楽しみで外に出られると言うのに学校と聞くだけで外に出たくなくなるのだから不思議だ。
そして、2時間ずっとニ○動を見ながら考えた末に出た結論が今のままの私だから学校にいけない。新たにイメチェンして高校デビューをしよう!
そして、話は冒頭に戻る。
中学生の頃はそれ程クラスで目立たない存在(そもそも通ってない)なので高校生になるこの時期にイメージチェンジを行い、知らない場所で垢抜けた格好や振る舞いで新たな自分を作ろうと思う。
今の時刻は10時半だ。まだ3時間半ある。学校に行くまで30分と考えて3時間の間に何が出来よう?
本当ならお母さんが居たら車で送り迎えを頼めたのに本日はお仕事だ。
……やはり、行かないでおこうかな。
しかし、お母さんには心配をかけたくない。昨日のうちにメールで学校に行くと宣言したからには自力で行くしかない。
何故メールかって?
それはお家で家族に出会う可能性があるから部屋から出ないのだ。それにメールで送り迎えして貰おうと考えていたのだが先にお仕事だと言う情報を頂き、既にお母さんへ送った私の下心満載の学校行く宣言が取り消せなくなったのは仕方ない。
私の生活リズムは家族に合わせている。
昼間は熟睡して、皆が寝静まった頃を見計らってお風呂に入ったり御飯を食べる。朝方になると私は兄とお母さんの為に昼の弁当と朝御飯を用意して6時にはまた部屋に籠る。
常にステルスモードを展開し闇に溶け込む。
それが私の生活リズムである。
ん?何故弁当と朝御飯作るのかって?
私とて引きこもる事に罪悪感を感じない訳ではない。その罪悪感をどうしようかと考えた結果、兄に弁当を作ってあげてみたら兄が喜び、部屋のドアの下から投函したであろう『弁当有難う。美味しかった。また食べたいな』と書かれていた手紙が置いてあり、その日からずっと作り続けている。
『私はね!お兄ちゃんの為に弁当作ってるの♪』
なんて言えば聞こえは良く、ギャルゲーでも始まるのかと思われるかもしれないが実態は違う。
さながら私はこのお家のブラウニーと化していた。
私もブラウニーの伝承の様に髪は伸ばしっぱなしで腰まであり、たまにお母さんが整えてくれる以外手入れをしていない。
いきなり化粧を始めても無理だし、服を買っても学校は制服登校なので意味がない。今回やるならヘアーセットから始めよう。
制服に着替え、ゆっくりと部屋から出て家族が居ないのを確認して久々に玄関を開け外へ足を一歩踏み出す。
……ぎゃっ!ひ、陽射しが⁉︎眩しい、と、溶けそうだ。そして、思ったより寒い!
もう外に出ると弱音しか出ない。私は内弁慶なのです。
しかし、私の心には大佐がついている。そうだ、こちら愛梨、今より近くにある美容室に潜入する!
そんな調子で私は美容室を15分かけて探した。
だけどやっと見つけた美容室で少し問題があった。髪をショート位ばっさり切って整えて欲しいと伝えたのに店員に髪は切らない方が良いと仕事放棄された。
髪が綺麗だからとか長い方が良いなど私の髪を切りたくないからと言って、お世辞を並べられ整えるのならやりますときっぱりとカットを断られ私は泣きそうになる。
私の得意な初対面の人に発生する人見知りスキルもここでも発揮し、おろおろと吃りながらでも私は一生懸命イメチェンをしたいと懇願してやっと渋々カットして貰った。その時も本当に切って良いのですね?と念入りに聞かれ、まさか、美容室が店員にお客の方が髪を切ってほしいと懇願してお金を払って切ってもらう場だとは知らなかった。
ここの美容室の敷居が高かったのかも知れない。
トレンドがとか今年は重た目がとか言われても分からず、私の交渉スキルは低く、言い切られ背中位の長さで落ち着いた。解せぬ。
時間も良い時間になり、私は学校へと向かった。
その時もちゃんと人に溶け込む様にステルスモードを発動する。
学校に着き、門で警備員の人に止められ用件を伝えると中に案内して貰い、どうにか校長室へたどり着いた。
時刻もちゃんと5分前だ。
うん、ミッションコンプリートだ!
中に入ると目の前に座る校長らしき人ともう1人女子生徒が既に居た。
……ん?これはどういう状況?