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ヴァルキリー Guns of Mercenaries 第3話

「あれか」


キノは高台からアイウェアの望遠機能を使いTDCのアジトと思われる施設を確認する

向こう岸に位置する施設の周りはフェンスに囲まれ、入り口のゲートは一つしかなくアサルトライフルやサブマシンガンで武装した警備兵6名がゲートに陣取り、固定機銃まで複数配備されており正面突破は得策ではないだろう


フェンス内の広場にも少なくとも数十人以上の警備兵が巡回し、六角形型の監視塔からはサーチライトが照らされており、おまけに対空砲まで数基設置していて潜入も楽にはいかないだろう


「ジメジメする...こんな所にアジト作らないでよもう!」


「そりゃアジトが目につく場所にあったら駄目だろうがよ」


すっかりびしょ濡れになったTEスーツ(Tempered Exoskeleton 運動補助機能により使用者の身体能力を格段に上昇させる軍用強化スーツ)に付いた雨粒を手で払いながらシェリルは愚痴を吐く

今は雷雨で視界が悪いが潜入任務でこれを利用しない手はない


「施設の様子はどうだ?」


背後から年相応の男性の声が聞こえ、キノとシェリルは後ろを振り返った。


そこには腰にマガジンパックを下げ黒い戦闘服を纏い、ガスマスクで顔を隠した兵士に問いかけられる。表情は読み取れず、周囲の薄暗さもあってか禍々しさすら感じる。


彼の後ろにはマリアと如月もおり、いつでも動ける状態のようだ


「ああ、正面突破は無理だウィリアム。隠密作戦で行く」


「ふふ…楽しくなりそうね」


「……それぞれの役割はどうします?」


悪巧みを思いついた様に笑みを浮かべる如月に少し呆れながらマリアはキノに問う


「マリア、如月はあの監視塔を制圧して狙撃ポイントの確保、敵の動きをこちらに知らせてくれ」


キノは五角形型の監視塔を指差して説明すると、マリアは軽くうなづいた


「如月は監視塔制圧後に対空砲にC4を設置してくれ」


「了解……」


「シェリルとウィリアムは俺と施設に潜入して研究員を救出するぞ」


「はいなー」


「了解した」


説明を終え、クリスに無線を繋ぐ



『プロフェット、こちらV1(ヴァルキリーワン)これより施設内に侵入する』


『了解、各員の視覚情報とバイタルはこちらで確認済みだ、ヴァルキリーの力を見せてやれ』


『了解。アウト』


無線を切り、HUDヘッドアップディスプレイを起動させると、アイウェアに自身と他メンバーのバイタル、銃の残弾数が表示される


「よっしゃ、グラップルの準備を。ウィリアム、こいつを腕のデバイスに接続しろ」


そう言うとキノはウィリアムに掌に納まるほどの長方形型の箱のような物を渡す


「これは?」

ウィリアムは左腕に装着しているデバイスにグラップルを接続しながらキノに問う


「使えば分かる、よし!行くぞ!」


「はい」


「ええ」


「待ってました!」


ヴァルキリーメンバー達はグラップルを起動させ、左腕を施設がある向こう岸に向ける

ワイヤーが射出され向こう岸の岩に深々と突き刺さり、キノ達はワイヤーが巻き戻る力を利用し向こう岸へと飛ぶ


「…なるほど」


後ろでその光景を見ていたウィリアムもグラップルを使いキノ達に続く


移動を終えグラップルを回収し、5人は施設を囲うフェンスの前に集まる


「うーん....」


シェリルが頑丈さを確かめる為にフェンスを掴み軽く引っ張る


「これなら網を引っぺがした方が早いね」


意気揚々にフェンスの網を剥がそうとしたところでウィリアムに静止される


「待て、いくら雨音があるとは言え流石に音で見つかるぞ」


「いえ、シェリル?私の合図で網を剥がしてください」


2人のやり取りを見ていたマリアは何か思いついたのかシェリルに指示する


「ん?分かった」


シェリルは網を掴みいつでも引き剥がせるように準備をする


数秒後、雷が放った光を確認し少し間を置いた後に合図を送る


「今です!」


「ふっ!」

網が剥がされる派手な音はすぐに雷の轟音と重なりかき消された


「さあ、お入りくださーい」


剥がされたフェンスの網はカーテンの様に丸められ、シェリルが先にフェンスの向こう側へ進んだ


マリアと如月は監視塔に向かい、他のメンバーは近くのコンテナに身を隠し監視塔の位置を確認すると、監視塔の見張り台へ通じる梯子付近には見張りはおらず、見張り台に敵3名を視認した


『こちらV2、これより監視塔を制圧します』


『了解、制圧したら見張り台から哨戒兵の位置をマークしてくれ。マークを確認したら移動を開始する』


『V2、了解しました』

マリアは如月を先導させ、通信を切り梯子へ近づく



「さて、馬鹿正直に梯子を上る?」


如月は試すようにマリアに質問する。彼女はこうやって人に分かりきったことを質問して反応を楽しむ悪い癖がある


「....グラップルで昇りましよう。見張り台ではなく監視塔の屋根に」


「フフ..賢いのね」


マリアは軽くため息とつきながらグラップルを射出し監視塔に昇り、如月もマリアに続く


キャットウォークに二人いるのを確認し、如月は腰に提げているマチェットを取り出した奇襲を仕掛けようとしたとき敵兵二人の会話が耳に入る


「なあ?拉致した二人の研究員だが一人撃ち殺したって本当かよ?」


「(射殺!?)」


マリアと如月は二人の会話に耳を傾ける


「ああ、助手だったらしいが問題ないだろうよ。元々は研究主任だけを拉致する予定だったしな」


「あれだけの犠牲を払って研究員を拉致した理由はなんなんだ?」


「雇われの俺たちに知らされるわけないだろ、ほら仕事に戻ろうぜ」


「ああ...監視の奴らはいいよな?東棟の屋内で監禁部屋を見張ってりゃいいんだからよ」


会話を終えたのを確認すると如月は屋根から飛び降り、真下にいる敵兵を着地と同時にマチェットを突き立て異変に気づき振り向いたもう一人の敵兵は放たれたスローイングナイフは喉に突き刺さり声を発する前に息絶えた


「クリア」


紅く染まったマチェットを死体の服で拭いながら屋根に待機していたマリアに伝え、屋根から下りるよう促す


「相変わらず鮮やかなお手並みですね」



「褒めても何も出ないわよ?それじゃ後はお願いね」


そう言うと如月はキャットウォークから飛び降り対空砲にC4を仕掛けに向かう


「こちらも始めないと」


マリアはキャットウォークに伏せ、背中に提げていたスナイパーライフルを構えスコープを覗き哨戒兵達の位置を確認する



キノ、シェリル、ウィリアムはコンテナに身を隠しマリア達の連絡を待っていた


『こちらV2、監視塔を制圧。これより哨戒兵のマークを開始します』


『V1、了解した』


キノが応答した数秒後にHUDを通して哨戒兵の位置が表示され遮蔽物越しからでも確認できる


「ふふん、便利でしょ?」


自分が作った訳でもないのに誇らしげにシェリルはウィリアムに自慢する


「今の時代、珍しくはないだろう?」


「まあ……ね」


『マーク完了。敵兵士達の会話によると研究員は東棟に監禁されているようです』


『了解。東棟に向かう』


キノはアサルトライフルを構え、できる限り姿勢を低くし先導する

拠点内に置かれたコンテナや軍用トラックを遮蔽物にし巡回兵達の警備を掻い潜り東棟への入り口の扉付近に停車していたジープに身を隠す


「いやー、この雨の中なら多少無茶してもバレないねー」


シェリルがそう無駄口を叩いた途端、豪雨が小雨に変わり、雷も止んでしまった


「あ……今の無し」


「言ってる場合かよ、これは急いだ方が良いな」


『V4、状況を報告してくれ』


キノは如月に呼びかけるが応答が無い


『おいV4、状況を』


何か思い出したように不意に黙り面倒そうな表情をする


「どうした?」


ウィリアムはキノに問いかける


「あー……これはまたいつもの悪い癖出たね」


シェリルは苦笑いをしながらキノの代わりに答える


『プロフェット、V4の位置を確認できるか?』


『同期がオフラインになっている。向こうが解除したんだろうがな』


『……分かった』


あの気まぐれ忍者ガールは任務中だろうが非番だろうが面白そうと感じたら突拍子もない行動を起こすのだ。その上隊内で一番腕が立つから尚更タチが悪い

「おいおい、大丈夫なのか?」


ウィリアムはあからさまに不安そうだ

無理もない、隊員が勝手な行動を取るなど部隊として致命的だ


「ああ、あいつは自分の仕事はちゃんとこなすだろうさ。それより……」


キノは東練入り口扉の前にいる2人の警備兵に目をやる


「うわー……きっちり陣取ってるね、面倒だよあれは」


シェリルがぼやいた通りこれは少々厄介だ

警備兵がいる位置には遮るものは無く、無理に排除しようものなら、サプレッサーがあっても直ぐに他の警備兵達に気付かれるだろう


「……シェリル、右の奴は任せた。俺は左の奴を殺る」


キノはグラップルを再び起動させながらシェリルに提案する


「うぇ?……ああ、りょーかい」


一瞬戸惑うがキノがグラップルを起動している様子を見ると何かを察したのか笑みを浮かべながらグラップルを起動させる


「もう1人居ないのが残念だ」


「ちゃんと活躍の場をやるさウィリアム。さて、俺の合図でいくぞ」

つまならさそうにぼやくウィリアムをなだめながらグラップルの狙いを定める


「3…2…1…今だ」


2人のグラップルが同時に射出され、警備兵達の首にワイヤーが巻き、悲鳴をあげる暇もなく身体がキノ達が隠れているジープの影に引きづり込まれる



「一本釣り!」

キノは引き寄せた警備兵の喉にナイフを突き刺し、シェリルは首に巻きついたワイヤーを絞め首の骨を折り絶命させた後、車体の真下に死体を隠した


「よし、行くか」

キノは2人を連れ東棟入り口の扉をゆっくりと開けクリアリングするが中にはテーブルと椅子が並べられているだけで警備兵はいないようだ


「確かマリアから聞けば人質はここに居るらしいが」


「我々を馬鹿にしているのか!」


キノが状況を整理していると奥の部屋から男の怒鳴り声が耳に入る

3人はアイコンタクトを取り奥の部屋へとすすむと覗き窓がある扉があり、声はそこからだろう


シェリルは気づかれないよう覗き窓を覗くと研究主任と思われる男が鉄製のテーブルに向かって椅子に座らされており、その前にはアサルトライフルを持った兵士が2人とその横に尋問官がいた


「うはー…酷いことするよ」


研究主任は捕虜用の服を着ていて白いシャツとジーンズは所々血で汚れており、顔は青アザだらけだ


「キノ、どうやって助け出すの?」


「配置からして突入するのは危険だな……仕方ない」


キノは腰のグレネードポーチからスタングレネードを取り出す


「俺がコレを覗き窓から放り込む。起爆した後にウィリアム、扉を蹴り破って制圧してくれ」


「了解だ」


ウィリアムはサプレッサーを装着したハンドガンのスライドを引き準備をする


「殺すなら……早く殺せ……貴様らが私の助手を殺したようにな……」


「我々に協力してからだ!お前が作った無人兵器は多くの同胞達の命を奪った!決して許すものか!」


尋問官は研究主任の髪の毛を掴みテーブルに顔を叩きつける


「テロリストに協力するくらいなら....死を選ぶ....」


「いいだろう...望み通りにしてやる!」


尋問官は腰に下げていた鉈を取り出し研究主任の首めがけて振り下ろそうとした瞬間、スタングレネードが覗き窓から投げ込まれそれが弾けると彼らの視界を白く塗りつぶし、聴覚を奪う


「行け!」


キノが合図するとウィリアムはドアを蹴り破り、混乱している尋問官とその部下達の胸部に弾丸を数発撃ち込み正確かつ迅速に無力化した


「クリア!」


シェリルは尋問部屋に入り、キノは入り口付近を見張る


「一体……何が……?」


まだ視界が回復していないのか、何が起こったかわからない様子だ


「貴方を救出に来ました。もう大丈夫です」


「ああ…ありがとう」


ウィリアムは研究主任に肩を貸す


『こちらV1、ターゲットを確保。これより脱出する』


『プロフェット、了解だ』


『V2、了解。出来るだけ急いでください』


ウィリアムとシェリルが尋問部屋から出ようとした時、突如警報が鳴り響く


「残念…だったな……」


傷が浅かったのか、這いつくばった状態で尋問官が傷口を押さえながらテーブルに設置されていた警報装置を作動させていた


「こいつ!」


シェリルは尋問官の首を踏み折りトドメを刺した


『敵兵達が東棟入り口に向かっています!急いでそこから脱出してください!』


「了解!急げ!」


キノは先導し道中の部屋をクリアリングしながら出口に向かい、扉を蹴り破るとサーチライトの光が目くらます


「っ!?」


手で光を遮ると目の前には60は下らない数の敵兵士達と装甲車の銃座がキノに銃口を向けていた


「武器を捨てろ!逃げ道ないぞ!」


部隊長と思われる男が拡声器を使い呼びかけると、キノは舌打ちしアサルトライフルを足元に捨て両手を上げる


『いいか、出てくるなよ』


小さな声でシェリル達にその場に隠れているよう促す


「残りの者も出てこい!5秒以内に投降しなければ攻撃を開始する!」


「(下手に刺激すればキノ達が……どうすれば!)」


マリアが何が打開策が無いが考えていると、あの気まぐれな忍者ガールからの通信が入る


『絶体絶命かしら?』


『.....誰かさんが遊んでたおかげでな』


キノは心底うんざりしている様子で答える


『あら、仕事はちゃんと済ましたわ。プランBといきましょう?』


如月以外の全員は一瞬戸惑うが直ぐに言葉の意味を理解した


「5!...4!...3!...2!...1!」


部隊長が0とカウントするのとほぼ同時に全ての対空砲から爆発が起き、激しい爆音に怯んだ敵兵士達は後ろを振り向く


『派手に行くぞ!』


『了解、攻撃開始!』


キノは足元に捨てたアサルトライフルを蹴り上げ、キャッチすると部隊長の胴体に風穴を開け、マリアは銃座の兵士を狙撃し頭部がトマトのように弾けた


「ウィリアム!あたしから離れないでね!」


「了解だ、少し走りますよ!」


ウィリアムは研究主任を背負い、ショットガンのフォアグリップを前後させキノの援護に向かったシェリルに続く


「ジープを奪って脱出するぞ!V2は援護を!」


『了解しました!』


マリアは急所を避け、敵兵士達の脚や肩を狙い撃つ

目標は敵の殲滅ではなく脱出であるこの状況では負傷者を増やし敵の攻撃の手数を減らす方が効果的だ

指揮官を失い対空砲の爆破、位置がわからない狙撃手による狙撃によりTDCの兵士達は混乱し負傷者を安全な遮蔽物に運ぶことがやっとの様だ


キノはジープに辿り着き運転席のドアを開け運転席に座るとエンジンをかける


「キーが差しっぱなしで助かった、早く乗れ!」


ウィリアムは後部座席に研究主任を乗せ、助手席に座り、シェリルは後方の敵を相手する為に荷台に乗り込んだ


『ジープを確保した!V2!そちらに向かう! 』


『できるだけ急いでください!こちらは制圧射撃を受けています!』


キノはジープを走らせマリアがいる監視塔へと向かう


シェリルは後方からジープを止めようと攻撃を加えてくる敵にショットガンで応戦する



ついに狙撃地点を特定され制圧射撃を受けているマリアは反撃すらままならず監視塔内に身を隠していた


『今だ飛び降りろ!』


キノはジープをドリフトさせ荷台を監視塔へと近づける


マリアは監視塔から飛び降り、脚への衝撃を逃がす様に着地時に前転する。着地を確認したキノはジープのアクセルを全開まで上げ入り口用ゲートを突き破りTDCのアジトから離れた


『プロフェット!今から合流ポイントへ向かう!到着まで約5分!』


『了解だV1、もし追っ手が来たら振り切るか排除してくれ。回収機が攻撃を受けるのは勘弁だからな』


ジープはガードレールなど無くろくに整備がされていない悪路を走り、シェリル達は激しい揺れに振り落とされないように荷台にしがみ付いている


「あ!如月は!?」


シェリルがそう言った瞬間、誰かから耳元に吐息をかけられ一瞬飛び上がった


「うひゃあ!き、如月!」


「ちゃんといるわよ?」


シェリルの隣に何食わぬ顔で腰掛け、ブレードの血を自身のスーツで拭っていた


「いつからそこに?」


マリアはもう慣れた様子で問う


「貴女が荷台に着地した辺りかしら……あら?お客さん達まで」


楽しそうな顔をしながら後ろを指差すと追っ手のジープ3両が現れ、内2両は荷台には銃座が設置されており、1両はフロントガラスや車体中に装甲板が貼り付けらている


キノとウィリアムもバックミラーで確認する


「ウィリアム!荷台に移って奴らの相手を!」


「ああ」


ウィリアムはアサルトライフルを担ぎドアを蹴り破って荷台に飛び移る


敵兵士達は銃座を使いこちらのジープのタイヤを狙って発砲してくる


3人は応戦するが激しい揺れの中狙いが定まらない

「任せてください」


マリアは激しい揺れにさらされながらも正確な射撃で運転手の頭を撃ち抜き、制御を失ったジープは横転しもう一両の銃座付きを巻き込み爆ぜた。7続いて装甲板付きを狙うが傷一つつかない


「っ!硬い!」


装甲板付きはついに並走し激しく車体をぶつけてくる


「こいつ!崖に落とす気かよ!」


キノもハンドルを切りジープをぶつけるが力負けしているのか、徐々に崖側に追い込まれる

他のメンバーは荷台から振り落とされないよう耐えるのがやっとだ


「如月!C4で吹き飛ばしちゃってよ!」


「全部使っちゃったわ」


「もう!ごめんキノ!多分またスーツ壊す!」


そう言うと立ち上がり装甲板付きのボンネットに飛び移る


「シェリル!?一体何を……!」


「だぁ!!」


シェリルはTEスーツの出力を右腕に集中させフロントガラスに張り付けれた装甲板を殴りひしゃげさせ、いとも簡単に引っぺがした


「じゃあね!」


信じられない光景を目にし唖然としている運転手の首根っこを掴み、崖へと放り投げると荷台へと飛び移り、装甲板付きは失速し運転手に続くように崖から落ちていった


シェリルのスーツの右腕外骨格は完全に折れ火花が散っている


「…………」


「相変わらず無茶を……」


ウィリアムは唖然としマリアは呆れ如月はニヤニヤしながらシェリルを見る


「倒したからいいじゃんか!」


『プロフェット、追っ手は片付けた』


『了解だ……修理費が高くつくな』


クリスの溜息が無線越しからはっきりと聞こえた


ジープを走らせ数分後、合流ポイントに到着した。

周りは開けて見通しが良く、前方に葉巻を吹かし航空機にもたれかかっているクリスとセンチネルのヘリが見える


キノ達はジープから降りクリスの元へ向かい、ウィリアムは研究主任に肩を貸しヘリに向かう


「おつかれさん皆の衆、大活躍だったな」


クリスはキノ達に気付くと葉巻を携帯灰皿に放り込む


「多少ハプニングはあったけどな……」


キノの冷ややかな目線を感じたシェリルは笑ってごまかし如月は笑みを浮かべながら航空機内に入る


「帰ろうぜ、長居は無用ってな」


「あいよ」


キノとクリスはそれぞれ操縦席に向かう


マリアもキノ達に続こうとしたとき、ウィリアムから声をかけられ足を止める


「ヴァレスディル中尉」


「……もう階級は不要です」


マリアは振り向かずに話す



「戻る気はありませんか?今なら私がなんとかします」


「ウィル、以前貴方に言ったはずですよ…私はもうセンチネルの為には戦わないと」


表情は見えないが少し苛立っている様子が声から伺える


「しかし、彼は……グレン大尉は覚悟の上で!」


ウィルアムが続けようとするとマリアは振り返り悲しげな表情をしながらこう言った


「やめて……お願いだから……」


「……お気をつけて」


そう小さな声で呟くとヘリに向かい、ウィリアムが搭乗するとヘリはこの場から飛び立った


「マリア!早く乗ってくれ!」


「……分かりました!」


マリアは飛び立つヘリを見送っているとキノに呼ばれ、返事をした後航空機に向かう


「……グレン……貴方は今の私を見て……どう思うのでしょうか……」



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