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ヴァルキリー Guns of Mercenaries 第2話

続きが新規小説として投稿してしまってました……

内容は同じでキノの過去と新しい依頼の話です

ああ...まただ....白衣をきた研究員が俺に得体の知れない薬物を注射し、身体の自由を奪った後に実験場へ連れて行く...


そして昨日まで一緒に楽しく話していた奴と殺し合わなくてはならない...そうしないと処分されるからだ


「何をしている!?さっさと殺せ!」


もう何百回も聞いた罵声を浴びせられる。恐い……そんな感情が俺を支配していた


「まったく…所詮はクローンか」


「薬の量を増やせ、死んでも構わん」


不愉快な声が増えていく……俺は人間だ……俺は……人間なのに……


「この出来損ないが!」


「研究費の無駄だな」


「誰のおかげで貴様は生きていると思っている!」


うるさい……黙れ……殺すぞ……


「母体となった彼女が気の毒だ」


「こんな使えないガキを本当の息子のように育てていたらしいな」


「ハッ…最後まで哀れな女だったよ」


止めろ……黙れ……黙れェェェェェェ!!!




「キノ!」


自分の名前を呼ぶ声が聞こえ目を覚まし、そこにはマリアが心配そうな顔をしてキノの顔を見ていた


「大丈夫?うなされてたよ?」


シェリルが横からキノの顔を覗き込む。キノは身体を起こし、血の気が引き蒼白となった額に掌を当てる


「……大丈夫だよ」


「またあの夢ですか?」


「ああ…大丈夫だ」


キノはそう言って椅子から立ち上がる。キノにとっては確かに胸糞の悪い気分だったが、何も仲間を心配させるほどの事でもない。なにより仲間にこんな悲しい顔をさせるのは彼にとって不本意にだった


「着いたわよ?早く行きましょう」


そういうと如月は誰よりも先に輸送機から降りるのを見たキノは、「あの冷血女は人の心配なんてしないから問題なさそうだ」と心の中で呟いた



傭兵部隊ヴァルキリー

キノ・ウッドロウをリーダーとするPMC(民間軍事会社)だ。PMC言ってもほとんど肩書きで、最近の依頼は要人警護や武器違法売買の阻止、重要施設の警備ばかり。しばらく大きな依頼が来ていない


彼らの拠点は何年も前に閉鎖された小さな飛行場の管制塔を改装したもので、メンバーがキノとクリスの二人の時、安く買い叩いたのだ


改装する前はホコリやカビだらけでとても住めるものではなく、マリアやシェリルがヴァルキリーに加入した後、掃除にはほとんど縁がなかったキノとクリスに代わって彼女達が人が住むに相応しい環境に整えた


「あー疲れたー」


そんな年寄り臭い事を言いながらシェリルは談話室のソファへうつ伏せに倒れこむ。


「そのまま寝るなよ?」


「うーん…分かってるー……」


顔をクッションに埋めながら答えた。このまま眠ろうとしているのは火を見るより明らかで、心地よいソファの柔らかさは疲れ切った人間を深い眠りに誘うには充分過ぎる


「シェリル?寝るなら自分の部屋で寝なさい、シャワーもまだでしょう?」


「むー、寝る前に浴びるからー」


「そうやって以前談話室で眠ってたではありませんか」


まるで娘に言い聞かす母親のようにマリアはシェリルをソファから起こし、シェリルの自室へ連れて行く


「まったく……おやすみ二人とも」


「んー……おやすみ…」


「おやすみなさい、キノ」


マリアはシェリルを連れて二階の自室へと向かった


「キノ、お前も今日は寝ろ」


クリスは葉巻に火をつけながら言った


「クリスは?」


「俺はクライアントへの報告書を書かなきゃならん。こういうのは実戦担当じゃない奴がやるべきだからな」


「……悪いな、おやすみ」


「気にするな…また悪夢を見ない事を祈ってるぞ」


茶化すように笑うと隣なあるオフィスルームへ消えていった


「………俺もシャワー浴びないと」

自室に戻ったキノは服をベッドの側に脱ぎ捨てシャワールームへ入る。

シャワーから流れる温水が彼の一日の体の汚れを洗い流す。これを心地良いと思わない者はいないだろう


「はぁ…」


シャワーを止め、顔を上げると目の前の小さな鏡に自分の姿が映り、右肩の無数の痛々しい注射の痕が鏡越しに目に入る……この痕を見るとキノはいつも昔を思い出し、どんなに幸せを感じているときでも、一瞬で憂鬱な気分になる


「もう何十年も前なのにな……」


そう独り言を呟くとキノはシャワールームから出て、タオルで体を拭きジーンズを履いてベッドに横になった




ある国の研究所で優秀な兵士達のDNAを取り出し、それを遺伝子操作を施したクローンを作り人為的に最強の兵士を生み出す為の計画


不運にも俺はそのクローンの一人だった


母さんとの思い出なんてほとんど無く、俺が10歳の誕生日を迎えた日に母は殺された


母さんは俺を逃がそうと黒服の男の銃を奪おとしたが、そいつの仲間に頭を撃ち抜かれた……俺の目の前で


俺は床に落ちていたフォークを拾い上げ、母を殺した男の首に何度も突き刺した…だがその仲間にスタンガンを首筋に押し当てられ気を失った


目が覚めると俺は強化ガラスで隔離された部屋にいて、周りは俺と同い年の子供達がたくさんいた


中には俺と瓜二つな奴が何人かいたのをまだ鮮明に覚えている


そこで過ごした時間は地獄だった…過剰な薬物投与、クローン同士の戦闘訓練、VR訓練による大量虐殺のシミュレーションを強要された


薬物投与に耐えられず中毒死、戦闘訓練での死亡、中には脱走を図ろうとした奴らがいたが例外なく射殺された


研究員達が死体を無造作に焼却炉へ放り込む光景を見て俺は死体にはなりたくないと思った


そんな恐怖から必死にあんなクソみたいな仕打ちに耐え続けた


中々成果がでない事に苛立った研究員は俺たちに矛先を向けた、熱した火かき棒を押し付けられ、意味のない注射を繰り返し、殴る蹴るなんて日常茶飯事だった


俺は恐怖から反撃できなかった...ただ歯を食いしばり耐えるしかなかった


俺が研究所に入れられ2年経った日になにやら研究員達が騒いでいた


どうやらこの計画は極秘で行っていたらしくそれが外部に漏れたと言っていた


書類の焼却にデータベースのフォーマットを行い奴らは証拠の隠滅に必死だった...俺たちクローンも例外じゃなかった


大部屋に一列に並べられ、一人ずつ順番に頭を撃ち抜き、最後に俺の番が回ってきたときに突然天井が吹き飛び、特殊部隊と思われる兵士達が現れ銃を持った研究員を射殺し、研究所内を制圧した


そして1人の兵士が俺の前に来てしゃがみ込んでこう言った

「もう大丈夫だ、君を助けに来た」


そいつが後に俺の師であり父親代わりとなるクリスだった


ふと目を開けると窓から入り込んでいる日差しが冷たいコンクリートの床に反射し、部屋を薄暗く照らしていた


「....もう朝か」


気だるそうに体を起こすと着替えを済ませオフィスルームへ向かう


「おはようさん...寝癖ぐらい直せ」


オフィスルームに入るとデスクに座って書類整理をしているクリスに小言を言われる。テーブルには何本の葉巻の吸い殻が置かれた灰皿に飲み干した缶コーヒーが数本あり、徹夜で報告書をまとめたのだろうと予想できる


「別にいいだろうが、どうせ今日は仕事ないんだろ?」


露骨に面倒そうな顔をし反論すると盛大に跳ね上がった髪の毛を申し訳程度に手で整える


「それがだ、ついさっき依頼があってな」


「どっからの依頼だよ?」


「センチネル」


センチネルといえばマリアがかつて所属していた対テロ特殊部隊だ


「内容は?」


クリスは書類に目を落としたままタブレットをキノに無言で投げて渡す


「おっと」


キノはタブレットを受け取り起動させると、クライアントと思われる人間の声がタブレットから発せられ、画面には白衣の男女2人組の写真、山岳地帯の建物全体図が映し出される


『昨夜未明、反政府組織TDCがヴァスク陸軍施設を襲撃しドローン専門の技術者達が拉致された。奴らは技術者達の解放を条件に服役中のTDC幹部の解放、開発中の新型ドローン設計図の譲渡を要求している。72時間以内に要求を聞き入れない場合は技術者達を殺害すると脅迫してきた。ネゴシエーターが彼らと交渉している間にTDCの潜伏場所を襲撃してほしい。君たちにはセンチネル隊員アレクシー・ベルマン大尉と協力し、通信信号を探知した山岳地帯のTDCを一掃し、技術者達を救出してもらいたい。失敗は許されないがそれ相応の見返りは約束する』




「ふふん、やっとまともな依頼が来たね!センチネルにお手本を見せてやろうよ!」


久々の大仕事で出撃が待ちきれないのかシェリルはずっとこの調子で強化外骨格を纏った状態で、軽くジャンプし動作確認を行う


「また油断してスーツを壊さないようにね」


「うう…思い出させないでよ……」


茶化すように言うと如月はライフルなどが収められた武器ケースに腰掛け、日本刀を思わせる高周波ブレードの手入れに戻る


「キノ?」


「どうした?」


マリアはスナイパーライフルの点検をしながら武器ケースを航空機に詰め込んでいるキノに問う


「TDCは何を企んでいるのでしょう?最近、彼らによるテロや襲撃事件は増加しています。それもヴァスクだけでなく他国までにも」


「知らんし知ったことじゃないさ。俺たちはビジネスでやっている。そういう事は軍人様達に任せればいい」


まるで興味が無いと言わんばかりにキノは武器ケースを航空機に放り投げながらそう答えた


キノの腕部に装着されているのスマートフォン型デバイスからコール音が鳴り響く


「こちらヴァルキリー、キノ・ウッドロウだ」


『こちらはセンチネル所属、アレクシー・ベルマンだ。』


年配の男性だと思われる声がデバイスから発せられる


『こちらの準備は完了した。君達が現地に到着次第、作戦を開始する』


「了解、こっちは今から出発する。5時間後には到着するだろう」


『分かった。せいぜい足を引っ張らんようにな』


「……ベーっ!」


ウィリアムの上から目線の忠告が聞こえていたのだろうか、シェリルはふくれっ面になり舌を出した後、航空機に乗り込む


「了解だ、通信終了」


通信を切るとキノは先ほどのウィリアムの言葉に多少イラついたのか怪訝な表情を見せる


クライアントの中には傭兵を軍人崩れの便利な捨て駒扱いし、見下す者は少なくない。アレクシーのような言葉を投げつけられたことは何度かあったが、まったくカンに触らない訳ではないのだ


「気にする必要はありません。私達のやり方でやりましょう」


マリアはキノの肩を叩き先に航空機に乗り込む


「……了解」


マリアには聞こえない声で返事をし、最後の武器ケースを輸送機に積み込んだ

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