17 対話
新年あけましておめでとうございます
「いやいや、新人にイタズラされただけだから、全然きにしてなんかいないよ?」
そうは言ってもギルド長の目が笑っていなくて怖いんだよ!
ギルド長は俺と見た感じではそんなに年齢が離れているようには見えなかった
せいぜい20歳といったところだな
「で、その新人君は、いやケンジ君はどんな用事なのかな?」
「えっと、ですね。『不死者の街』についてなのですが、あの街に探索者を送るのをやめてほしい、とのことです」
「それは、誰に頼まれたんだ?まさか聖神教からじゃないよね?」
聖神教といった時、ギルド長は顔をしかめていた。よほど嫌いなようだ
宗教にありがちな、自分の考えを他人に押し付けようとしているのか?
『ご明察です、主。聖神教はあちこちで信じられている有名な宗教です。有名なお教えに、『人は死しても人なり』とあります』
(わりとまともじゃないか?それって)
『その教えに則って、アンデッドも人として扱い、同様に魔物とも共存するべきだ、としているのです、主』
(うわ厄介な。人を襲う魔物と仲良く、ね。それは探索者ギルドと反発するわけだ)
「いえ、聖神教からではなく、その街のアンデッドから直接依頼を受けまして」
「へぇ・・・。続けて」
「そのアンデッド、スーというのですが、街のアンデッドにも知性があり、むやみに人を襲うものは少数で、そのようなアンデッドは犯罪死人として処刑されるようです」
「死んでるのに処刑できるんだ」
「少し話がそれますが、『不死の閃光』を知っていますか?」
「知ってるも何も、倒したのは僕だよ?」
「年齢が合わないとおもいます。あれが生きていると言ったら、どうします?アンデッドは核が残っていれば復活するのは知っていると思いますが・・・」
「半分はエルフだからね僕は。魔石は回収したからそれはないね」
「なるほど。長寿なんですね。魔石の本体は討伐時に砕けたかけらの方だったそうですよ」
「そんな馬鹿な!あれは今でもここにある!」
机に立てかけてあった長杖を目の前に突き付けるギルド長
その杖には確かにリンゴ程の大きさの魔石がはまっていた
しかし、
「この杖との接合部、すこし欠けていますね。おそらくこの部分が本体だったということでしょうね」
「そんな、バカな・・・」
椅子にドサッと座りこみ、そうつぶやいたギルド長
数分たった後、顔を上げてこう言った
「信じよう。君と、そのスーというアンデッドを。その代り、スーとやらにあわせろ」
そういったギルド長に俺はスーさんから聞いたことを細かく伝えていった
不死者の街にて
スーさんとあっているギルド長の顔は少し青くなっていた
ギルド長曰く
「30年前に倒した時よりも覇気を感じる」
だそうだ
俺は話しているのを横目に街のアンデッドたちとワインを楽しんでいた
今日のは200年物のワインだそうだ
ちょっと観察したけれど、ゾンビさんたちは腐臭がすることはなく、リビングアーマーの人たちは内部に何か黒いもやが詰まっていてそれが体の代わりになるそうだ
ゴーストの方々は体が透けているだけで、ぱっと見たところ普通の人のようだ
スケルトンは骨しかないのにな
もちろんこの街にくるまでにオルトロスを狩っているからつまみはそれを燻製(火魔法をつかったんだけど)にしたものを提供した
ギルド長は大のワイン好きだったそうで、歯ぎしりしながら妬まれた
あとで絶対参加するといってたからこの街はきっと不死者と生者が生きる街にしていく方向で話をまとめるんだろう
さぁ、仕事が終わって、人生の先輩と飲み会ってのも乙なもんだよね?
今年もよいお年を




