14 不死者
ジーベンの町から歩いて2時間のところにあるのが『不死者の街』である
元の名前をイツの街という
およそ300年ほど前、魔物の侵攻により壊滅的被害を受けたが、付近の街からの援護により何とか街の形は残った
しかし、救援部隊が帰還した後は連絡が途絶える
調査班が行ったところ生き残った住民の姿は残っていなかった
代わりにあちこちをアンデッドが徘徊していたという
今なお探索者が遺品の回収やアンデッド退治を行っているが、遺された怨念が街をダンジョン化したため、遅々として進まない状況が続いている
-ギルドダンジョン情報書より抜粋-
受付さんから情報をもらった俺はとりあえず走っていくことにした
歩くので時速3kmとしたら不死者の街まで10kmってとこだろう
…よくそんなとこに町作ったよな
走りながら体に魔力を流す練習をしていたらいつの間にか着いていた程度の近さだった
「さて、今日もお仕事頑張りますか」
火魔法、火魔法っと
使えるのかな?安易に狩りに来たけど
そうだな、イメージ的に火炎放射機でいいのかな
練習しておくか・・・
(『賢者』、サポートできるか?)
『わかりました、主』
んじゃ試しますか
(手のひらから、でいいか。向けてる方向へ5m先まで届く炎を)
豪っ!!!
「うわっち!あっつ!!!あっつ!!!!」
『火魔法は体から離れた場所で発生させないと火傷しますよ』
「先に言え!!!!!!」
『そんなに叫ばれますと、アンデッドを引き寄せてしまいますが』
「っ!」
やばいな、まだ練習が不十分なのに
「ぅぉあぁあああぁぁぁあ」
・・・少し気になるんだが、骸骨がどうやって声を出すんだ?
『魔力で声帯の代用としているようです。声の出るスケルトンはそれなりに強い個体ですのでお気を付けください』
(わかったよ。)
「デテ・・ィケ・・・・デテイケ!!!」
「おうっ!しゃべれるのかよ」
「ココハワレラノスミカ!アラスモノハデテイケ!!」
「ん?こいつら意識っていうか知性があるのか?」
そう、この骸骨から、確かに怒りを感じるんだ
表情があるわけじゃないのにな
「アラスモノデナケレバミノガシテヤル!デテイケ!!!」
・・・んー、ちょっと試してみるか
「了解、出ていくよ。ところで少し話してもいいか?」
「・・・そのような話をする者は初めてだな、お前。」
「突然流暢になったな、いやなんだ、ここってどうなってるのかって気になってな」
「どう、とは?」
「中は死人ばっかりなのかってことと、あんたみたいに知性あるものがいるのかってな?」
「両方、是だ」
「そうか。ギルドにも伝えておこう。」
「ギルド?」
「あー。俺みたいな戦いや探索を生業とする者の集まりっていうもんかな?」
「理解した。こちらにも似たような組織があるからな」
「そうなのか。ところで、あんた何か食えるか?」
「人間だったころと変わりなく、な」
「じゃあよかった」
と、道中仕留めたオルトロスの肉を取り出す
「飲み物なんか持ってきてくれや、食おうぜ」
「・・・は?」
「敵じゃないんだろ?なら俺が襲おうとしていたってことだからな。謝罪みたいなもんだ」
「・・・本当に変な奴だなお前。待ってろ、300年物のワインでももってこよう」
「酒は飲んだことないんだが」
「そうか、まあいい。待ってろ」
『本当に個性的なお方ですね、主は』
「うっさい」
賢司はもともと変人なんですよ、きっと




