表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/12

番外編〜魔界地獄で素材集め前編


 ――魔界地獄極東部、巌骨山。

 その場所は毒霧の噴火口ならぬ噴霧口を頂に持つ、数多の骨が積まれて出来た山であった。

 かつて大昔、勇者に倒された魔王の配下で凶悪の巨人、破滅の巨人と呼ばれたひとりの巨大な鬼が、己の強さを知らしめるために、犠牲者の遺骸を築き上げたという。

 まあ実際はどうであれ、この骨が堆く積み上げられた山の麓には、歴女垂涎の名所がある。

 こちらは勇者側の美形な剣士と魔王側のこちらも美形な魔族が一対一で戦った跡といわれ、彼らの組み合わせが大好きな腐のつく婦女の方々にとっては聖域だとか、ないとか。

 リテイラの勤める会社の企画担当は、腐のつく婦女の方々に向けたツアーを提案、その目玉の名所のひとつとしてこの名所を選び、付近の事前調査がリテイラに回ってきたのである。

 リテイラの勤める会社は、社員一同にある一定の戦力を求める会社である。観光客が万が一、旅行先の現地で何かに巻き込まれたときに、盾となり剣となり観光客を守るためであった。

 観光客の安全を謳う会社としては、ツアーの企画段階での安全調査も手を抜かない。とくに魔界地獄のように魔物が野生として存在する場所では、通常以上にさらに念入りに、かなり念入りに安全調査を行う。その安全調査を行う担当は、自然と強者が選ばれる。社内強者ランキング入り常連や、リテイラのように殿堂入りを果たしていたりする強者が。

 今回は、その人選が大当たりという結果であった。


「毒竜がいるとはね」


 毒があるところを好む、肉体の八割が毒でできた全長二メートルくらいの小柄な竜。吐く息は毒、体液はもちろん毒。切りつけて流す血も毒、鱗まで毒。毒でできた竜、それが毒竜。成体になってもまだ二メートルくらいの小柄な竜、というところだけがまだ救いかもしれなかった。

 そして、この毒竜という存在が真に厄介な点はそれらではなかった。


「この個体は、腐毒か……!」


 毒竜は、個体によって持つ毒性が千差万別だったりする。

 リテイラが今対峙している毒竜の毒性は、全てを腐らす腐毒であった。毒竜の中でもかなり厄介な毒であった。

 槍での接近戦が得意なリテイラにとって、厄介な相手かもしれないといえた。

 けれどもリテイラは、上空で滞空しリテイラを睨む毒竜を見上げたまま、決して厄介などと思っていないようだった。

 リテイラは笑っていた。


「――マックイールの血を、甘く見るな?」


 リテイラは槍を二本持っていた。長い槍を、二本だ。一本の切っ先を地面に思いっきり突き立て一気に空へ跳躍し、リテイラは片方の槍を思いっきりぶん投げた。ぶん投げた、ただ、それだけだった。

 毒竜はすぐさま槍の軌道から逃げつつも、腐毒の息を大きく吐き、翼で起こす風で腐毒の息を槍へ向ける。


「甘い!」


 降下しながら、リテイラは手元をくいっと動かした。その手には細い鎖が握られていた。鎖はぶん投げられた槍の石突きに続いていた。

 ――果たして、鎖がくいっと動いた、そうすれば鎖と繋がった槍はどうなるか。

 答えは、毒竜の悲鳴がよく表していた。槍は当初の軌道をそれ、毒竜の背後に回り、一気に毒竜の体を貫いたのだ。


「っらあああああ!!」


 そして、リテイラは鎖に思いっきり体重をかけ、落下。鎖に落下するリテイラの体重が一気にかかり、槍はさらに毒竜に食い込む。

 毒竜はリテイラより重い。つまり、リテイラより速く落下するわけで。


「逝けぇえええ!!」


 毒竜が地面に激突する寸前、リテイラは落下する力を利用して鎖を力強く、大きく弧を描くように振り抜いた。

 ――結果。毒竜は遠心力も加えられたため、骨の山からも名所からも離れた場所の地面にずどんと穴を作ったのであった。

 名所も、骨の山に被害がでないようにするリテイラは、残る方のもう一本の槍を使い落下の力を極力減らし着地した――その足を覆う靴は、ヒールであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ