どうやら俺が追放されたほうがパーティーは強いらしい
「すまない、レイト。君との契約はこれで終わりだ」
ダンジョンから無事に帰還し、打ち上げでやって来た酒場で言われた言葉が、これ。
目の前に座る剣士が、気まずそうに告げる。
豪勢な料理を前に浮かれていた俺は、胸の奥が一気に冷えた感覚に襲われた。
「は、どういう意味だよ。俺たち今までいい感じにやってきただろ? それなのになんで」
「もう決めたことだ。すまない」
誰も俺と目を合わせようとしない。
マインもリーシャも、視線を下に落としている。
机の上に小さな袋が置かれた。見た目からして重そうだ。
「これは今日の君の分け前だ。それに解約金も入っている。君の回復には今まで助けられた、ありがとう」
剣士は淡々と告げる。そして俺からゆっくりと視線を外した。
つまり完全に俺をパーティーから追放するつもりなんだ。
いいだろう、乗ってやる。
俺は袋を乱暴に取り、椅子から立ち上がった。
「いいさ、こんなパーティー、こっちから願い下げだ」
俺が今までしてきたことを、こいつらは何もわかっちゃいない。
どうせ俺が抜けてダンジョンに向かったら、俺の回復スキル『無限回復』の重要性に気づくはずだ。そして泣いて詫びてくるだろう。
酒場から出ると、爽やかな空気が俺を包んだ。
一体誰が俺を追いかけてくるだろうか。
マインはツンデレだから、俺がいなくなったことで影で泣いているかも。よく俺の言葉に顔を赤くしているし、あいつは照れ隠しが下手だからなー。
リーシャは俺によく話しかけてくれたから、きっと俺のことが好き。だから追いかけてくるはずだ。
マインも一緒になって追いかけてきたら、あとでからかってやろう。
☆
「……行った?」
「ああ」
剣士アレクの返答に、魔法使いマインは大きなため息を吐いた。
「よーやく出てってくれた! まじでもっと早く出てってほしかったんだけど!?」
「一応契約期間が三ヶ月だったから、そこまでは耐えてくれって言ったじゃないか」
「あれに耐える!? ゴブリンの方がまだマシよ!」
マインはグラスになみなみ入ったジュースを豪快に流し込む。
ひどい言われようだ。アレクは苦笑いしながらマインを眺めていた。
怒りに身を任せ、グラスを乱暴に机へ叩きつけた。
「魔力が尽きなければ半永久的に回復出来るってあいつが言ったからパーティーに入れたじゃん? 最初は本当に自動で回復してくれてたから助かったけど」
「まさか自分の魔力が尽きたら周りの魔力を勝手に吸い取って回復を続けるスキルだったとはな」
戦士ゴードンが呆れたような笑顔を見せる。それは聖職者リーシャも同じだった。
「勝手に魔力を吸い取って回復している自覚が本人には無いのですから、なおさらたちが悪いです。しかもあの人は自分の魔力が無尽蔵にあると勘違いしていますからね」
「あいつ全然無いじゃない! 生まれたての幼児の方がまだあるわよ!」
今までの鬱憤を晴らすかのように叫び続けるマインは、喉の渇きを必死にジュースで潤している。
「あいつのせいで私の魔力がすっからかんになってて、ダンジョンで魔法が撃てなかったとき、あいつなんて言ったと思う!? 『マイン、今日調子悪いな。生理か?笑』 キモすぎる!!」
アレクは同じ男性として、レイトの言動に頭を抱えることしかできなかった。それはゴードンも同じで、気まずそうにおつまみをかじっている。
「私が湯浴みをしているのを知っているはずなのに、お風呂場に入って来た時は流石に血の気が引きました。わざとらしく手で顔を覆っていましたが、指の隙間から目が丸見えなんですよね」
「は? あいつリーシャにも変態行為してたの? まじで今から氷漬けにしてくる?」
リーシャは苦笑いをしながら首を横に振った。一応聖職者として、暴力は好まないのだろう。
「しかもその後に言った言葉が『背中流そうか?」って……馬鹿なんでしょうね」
温厚で誰にでも優しいリーシャから珍しく出た暴言に、アレクは思わず笑ってしまう。
ゴードンも調子を取り戻したのか、店員にご飯の注文をしている。
「それにしてもあいつ、絶対に俺たちの名前覚えてなかったよな」
それは本当にそうだった。覚えていないことをもはや隠そうともせず「剣士!」や「おい!」と呼ばれたのは星の数ほど。
ゴードンの言葉にまたしてもアレクは苦笑い。
自分がレイトのパーティー加入を許可してしまった分、気まずいところもあるのだろう。
「私とリーシャのことはキモすぎるあだ名で呼んでくるのに、ゴードンとアレクには目線すら向けなかったもんね。まじで脳みそ性器でできてんじゃない?」
「リーぴゃん、リーにゃん、リーリー……思い出しただけでも吐き気が……」
アレクは申し訳なさそうにリーシャの背中をさする。
レイトが嫌われていることは知っていたが、ここまでとは思わなかった。
ゴードンはでもまあ、と口を開いた。
「今度からちゃんと相手を見極める良い教訓が得られたじゃねえか。次のヒーラーはちゃんとしたやつを入れような」
「あいつ以上にひどいヒーラーはもう現れないと思うけど……」
「それもそうだな」
四人の会話は次第に明るい話題へと移り変わっていく。それは酒場の喧騒に段々と馴染んでいった。
そして二年後、新たなヒーラーを迎えたアレクのパーティーは、人類初のダンジョン最下層へと到達することになる。
それを裏で支えていたのは俺だ!と叫ぶ浮浪者がよくいるらしいが、誰にも相手にされていないとのこと。
☆
レイトのスキル『無限回復』
自身の魔力が切れた場合、半径5m以内で一番魔力保持が多い生物の魔力を使って味方を回復する。
本人はこれに気づいていないので、自身の魔力が無尽蔵だと思っている。それを鼻にかけ傲慢な態度をどのパーティーでも取っているため、どこもレイトを加入させてくれなくなった
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追記 様々な方に読んでいただいて感謝感激雨あられです!ありがとうございます!これからも精進してまいります!




