第5章 第三の守護者「炎の巨人ガルド」
第14話 海への道
風の谷を離れてから一ヶ月。
大陸の南端、港町「潮風の港セイル」へ辿り着いた。
ここは、海を渡るための最後の拠点。
地図の次の赤い印は、遥か南の火山島「灼熱の島カルデラ」にある。
港は活気に満ちていた。
船乗りたちの叫び声、魚の匂い、帆を張る音。
宿屋「波止場の灯り」で一泊し、情報を集めた。
「灼熱の島? あそこは魔物どころか、熱だけで死ぬぜ」
「最近、島の火山が活発で、船が出せないってさ」
「でも、噂じゃ……島の中心に“炎の巨人”がいるらしい。
あいつに近づいた奴は、誰も帰ってこねえよ」
第三の守護者、ガルド。
俺は船を探した。
港の端で、古い船長が煙草をくゆらせていた。
「灼熱の島へ行きたいんです」
船長は俺を一瞥して、笑った。
「死にに行くのかい?
いいだろう。明朝出航だ。
ただし、熱死したら俺の責任じゃねえぞ」
俺は頷いた。
第15話 海の旅
翌朝、船は出航した。
甲板に立つと、海風が心地よい。
二つの太陽が海面をキラキラと照らす。
船員たちは俺を珍しがった。
「一人で島に行くなんて、勇者か?」
「いや……ただ、終わらせたいことがあるだけです」
夜の甲板で、船長が話しかけてきた。
「99の守護者、ってやつを知ってるか?」
「ああ、俺もその一人を倒してきた」
船長は目を細めた。
「昔、俺の息子が……風の魔女に挑んだって聞いたことがある。
あいつは、優しい姫だったらしいな」
俺は静かに頷いた。
「エレナは……幸せだったって、最後に言いました」
船長は黙って海を見つめた。
「なら、いい。
お前が次を倒せば、俺の息子も、少しは報われるかもな」
第16話 灼熱の島到着
三日目の朝、島が見えた。
黒い岩と赤い溶岩が広がる、荒涼とした火山島。
空気が熱く、息苦しい。
船は沖に停泊し、俺は小舟で上陸した。
「生きて帰ってこいよ!」
船長の声が遠くに響く。
島は熱波が立ち込め、地面が赤く光っている。
足を踏み入れるだけで、靴底が溶けそう。
耐熱のブーツとポーションを惜しみなく使って、奥へ進む。
途中、火の精霊が襲ってきた。
【マグマエレメンタル レベル40】×4
剣に水の魔法を纏わせ、斬り倒す。
【レベルアップ! レベル45→52】
さらに奥へ。
火山の中心に、巨大な洞窟。
入り口から熱風が吹き出している。
「……ここだ」
俺は剣を抜き、踏み込んだ。
第17話 炎の巨人の咆哮
洞窟の奥は、広大な溶岩湖だった。
中央に、立っていた。
【炎の巨人ガルド レベル65】
岩と溶岩でできた巨体。
身長15メートル。
全身が赤く燃え、目だけが黒く輝いている。
「…………人間か」
低く、地響きのような声。
「第三の守護者、ガルドだな。
俺は佐藤悠斗。最後の転生者だ」
ガルドの目が、ゆっくりと俺に向いた。
「……最後の……
なら、俺の苦しみも、終わるのか」
巨人が拳を握る。
溶岩が飛び散り、洞窟が揺れる。
「来い。
俺を倒せば、石碑がすべてを語る」
俺は息を吸い、剣を構えた。
戦いが、始まった。
第18話 炎と剣の激突
ガルドの一撃は、溶岩の波だった。
拳が振り下ろされ、地面が割れる。
俺は横に飛び、剣で反撃。
刃がガルドの腕に触れるが、熱で弾かれる。
「くっ……熱すぎる!」
【スキル発動:耐熱Lv4】
体が熱に耐え、動きが少し速くなる。
ガルドは咆哮を上げ、溶岩の柱を呼び起こす。
「燃え尽きろ、人間!」
俺は柱の間を縫って突進。
剣に水の魔法を最大限に纏わせ、一気に跳ぶ。
剣先が、ガルドの胸の核に突き刺さった。
巨体が揺らぎ、炎が弱まる。
「……よくやった……」
ガルドの声が、優しくなった。
「俺は……もう、十分燃えた」
巨人の体が崩れ、溶岩が静かに収まる。
第19話 石碑の記憶 (ガルド編)
溶岩湖の中央に、赤い石碑が浮かび上がった。
俺は触れた。
記憶が流れ込む。
──ガルドは鍛冶屋の息子だった。
日本で、家族と小さな工房を営む日々。
「いつか、世界一の剣を作りたい」って夢を語る。
召喚された時、喜んだ。
神に与えられた炎の力で、仲間を守り、戦った。
最終決戦で、魔王を倒した。
神が現れ、言った。
「お前は強い。
この炎は、永遠に島を守るのにふさわしい」
体が溶岩に変わっていく。
「待って……家族に、帰るって……」
神の冷たい言葉。
『家族は、もうお前を必要としない。
お前は今から、第三の守護者だ』
ガルドの最後の叫び。
『俺の炎は……みんなを守るためだったのに……』
記憶が終わった。
石碑の文字。
『第三の守護者 炎の巨人ガルド
召喚順番 第2,134,892人目
人間だった頃の願い 「世界一の剣を作り、家族を守ること」
神に与えられた役割 炎の支配と、転生者の試練』
俺は石碑の前で、静かに拳を握った。
「……ガルド。
お前の炎、俺が継ぐよ」
第20話 島からの帰還
洞窟を出ると、島の火山が静かになっていた。
熱波が弱まり、溶岩の流れが穏やかになる。
沖に待つ船が見えた。
小舟で戻ると、船長が迎えてくれた。
「……生きてたか。
島の熱が弱くなったな」
俺は頷いた。
「ガルドは……解放されました。
彼も、昔は家族を想う普通の男だったんです」
船長は黙って海を見つめた。
「そうか……
なら、俺も息子に伝えてやるよ。
もう、誰も苦しまなくていいって」
船は港へ向けて出航した。
俺は甲板に立ち、地図を開いた。
次の印は、また新しい場所。
あと96人。
俺は静かに呟いた。
「みんな……待っててくれ。
俺が、全部終わらせる」
二つの太陽が沈む海を、船は進む。
(第5章 完結)
──次は第6章 第四の守護者へ。




