第4章 第二の守護者「風の魔女エレナ」
第10話 風の渦と記憶の叫び
塔の最上階で、エレナの風が俺を包み込んだ。
それは攻撃ではなく、まるで抱きしめるような優しい渦だった。
でも、すぐに鋭い刃に変わる。
「本気で来て!
でないと、私を解放できないわよ!」
風の刃が四方から飛んでくる。
俺は剣を振り回し、ステップを踏んで避ける。
レベル45の体は、ようやくこの世界に慣れてきた。
「エレナ……お前はもう、十分苦しんだ!」
俺は叫びながら、階段を駆け上がった。
エレナは空中に浮かび、両手を広げる。
「風よ、唸れ! 嵐を呼べ!」
塔全体が揺れ、巨大な竜巻が俺を飲み込もうとする。
視界が白くなり、足が浮く。
「くそっ……!」
【スキル発動:耐風Lv3】
体が重くなり、地面に着地した。
そのまま剣を振り上げ、竜巻の中心へ突っ込む。
剣先が、エレナの胸に触れた瞬間。
彼女は微笑んだ。
「……ありがとう、悠斗」
光が爆発し、エレナの体が風に溶けていく。
最後に、彼女の声が耳元で囁いた。
「みんなに……伝えて。
私、幸せだったって」
風が完全に止んだ。
塔は静寂に包まれた。
第11話 石碑の記憶 (エレナ編)
塔の中央に、淡い青い光の石碑が現れた。
俺は震える手で触れた。
記憶が洪水のように流れ込んでくる。
──エレナの日常。
日本の大学キャンパス。
友達と笑いながらカフェで過ごす時間。
「いつか世界を旅したいな」って夢を語る声。
召喚された瞬間。
神の優しい言葉に、目を輝かせて飛び込んだ姿。
仲間との冒険。
風の魔法で嵐を鎮め、村を救う日々。
みんなから「風の姫」と呼ばれ、抱きしめられる温かさ。
そして、最後の夜。
魔王を倒した後、神が現れる。
「よくやった、エレナ。
君の魂は、この世界に永遠の風を与えるのにぴったりだ」
背中を刺されるような痛み。
体が風に変わっていく感覚。
「待って……みんなに、帰るって約束したのに……」
神の冷たい笑い。
『約束は、神の前では無意味だ。
お前は今から、第二の守護者になる』
エレナの最後の涙。
『みんな……ごめんね。
私、ずっとここにいるよ……』
記憶が終わった。
俺は石碑の前に膝をつき、泣いていた。
石碑に刻まれた文字が浮かぶ。
『第二の守護者 風の魔女エレナ
召喚順番 第1,682,447人目
人間だった頃の願い 「この世界で、みんなとずっと一緒にいたかった」
神に与えられた役割 風の支配と、転生者の試練』
「……エレナ。
お前の願い、俺が叶えてやる」
第12話 風の谷の別れ
塔を出ると、谷全体の風が穏やかになっていた。
町の人々が塔の下に集まっていた。
「風が……止まった?」
「魔女の呪いが解けたのか!?」
「塔から光が……!」
俺はゆっくりと下りて行った。
町長らしき老人が駆け寄ってきた。
「旅人さん……あなたが、魔女を……?」
俺は頷いた。
「彼女は、もう解放されました。
エレナは……本当は優しい人でした。
みんなを、ずっと守りたかっただけなんです」
町の人々が静かになった。
老人が涙を浮かべて言った。
「昔から伝わっていた……
魔女は、誰かの姫だったって。
ありがとう、旅人さん。
これで谷は、本当に自由になった」
子供たちが花を差し出してきた。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
俺は受け取り、胸に押し当てた。
「みんな、エレナの分まで、幸せになってください」
その夜、町で小さな宴が開かれた。
風の歌を歌い、踊り、笑った。
でも、俺の心は次の地図の赤い印に向かっていた。
第13話 旅立ちと新たな決意
翌朝、俺は風の谷を離れた。
新しい装備、回復薬、そして町の人たちがくれた風の結晶(風の魔法を少しだけ使えるアイテム)。
地図の次の印は、海の向こうの島。
第三の守護者。
俺は独り言ちた。
「レオン、エレナ……
お前たちの分まで、俺は進む。
神に会って、全部終わらせる」
二つの太陽が昇る空の下、俺は歩き始めた。
果てしない大陸と海が、まだまだ待っている。
99の守護者。
あと97人。
(第4章 完結)
──次は第5章 第三の守護者へ。
海を渡り、新しい島での出会いと戦いが始まる。




