第2章 最初の村と最初の戦い
第4話 村の英雄
黒狼王を倒した翌朝、俺は村の広場で英雄扱いされていた。
「悠斗様! 本当にありがとうございます!」
「これで子供たちを森に遊びに行かせられます!」
「今夜は祝宴じゃ!」
村人たちが次々と握手を求め、子供たちは俺の服の裾を引っ張る。
正直、照れくさかった。現実世界では誰からも注目されなかった俺が、こんなに讃えられるなんて。
村長のリリアが、静かに近づいてきた。
「悠斗殿……黒狼王の横に、何か見ませんでしたか?」
鋭い質問だった。
俺は一瞬言葉に詰まったが、正直に答えた。
「石碑がありました。『第一の守護者 黒狼王レオン かつては人間。勇者として召喚されし者』って……」
リリアの表情が曇った。
「やはり……そうか。あれは99の守護者の一つじゃ」
「99の守護者?」
リリアは周囲を見回し、声を潜めた。
「この世界には、99体の特別なモンスターがおる。
普通のモンスターとは比べ物にならぬ強さで、それぞれが大陸の要所を守っておる。
昔から伝わる話じゃが……それらは、かつて神に召喚された勇者たちのなれの果てだという」
心臓が跳ねた。
「勇者たちが……モンスターに?」
「信じがたい話じゃろう。だが、石碑に刻まれた文字は嘘をつかぬ。
悠斗殿、あなたも召喚された勇者じゃな?
どうか、気をつけてくれ。この世界は、表向きの顔と裏の顔がある」
その夜の祝宴は楽しかった。
酒を飲み、歌を歌い、踊った。
でも、俺の頭の中にはリリアの言葉がこびりついていた。
第5話 旅立ちの朝
翌朝、俺は村を出る決意をした。
「もっと強くなりたい。そして、この世界の真実を知りたい」
リリアは黙って頷き、旅の支度を整えてくれた。
革の鎧、鋼の剣、回復薬、そして一枚の古びた地図。
「この地図には、99の守護者がいるとされる場所が記されておる。
すべてを回れば、世界の秘密が明らかになる……という古い伝承がある」
地図を開くと、広大な大陸と海が描かれていた。
果てが見えない。
赤い印が99個、点在している。
「悠斗殿。あなたは特別じゃ。
これまでの勇者たちは、みんなここで満足してしまった。
村を守り、家族を作り、静かに消えていった。
だが、あなたの目は違う。もっと先を見ている」
リリアは優しく微笑んだ。
「どうか、無事で戻ってきてください。
そして、いつか……この世界の真実を、教えてほしい」
村を出るとき、子供たちが手を振っていた。
俺は振り返らずに歩き続けた。
広い世界が待っている。
99の守護者。
石碑の記憶。
そして、神と呼ばれる存在。
俺は最後の転生者だという。
だったら、最後まで見てやる。
二つの太陽の下、大陸はどこまでも続いていた。
(第2章 終わり)
──悠斗の旅が、本格的に始まる。




