バーガー101個、食べて食べて食べて--王になる!
「パパ」
「勝て、倒せ、王になれ」
親父のブレッド・トランペットは、これまで俺たちが何度となく聞かされてきた言葉を口にした。トランペット一族には勝利しか許されない。
「さっさと作れ、パクドナルド。じゃないと、店の家賃がはね上がるぞ」
親父は、このクイーンズ一帯で住宅開発の仕事をしてる。何千って家族が親父の作ったアパートで暮らしてるってわけだ。つまり、親父はクイーンズの王様だ。
パクドナルドは肩をすくめてカウンターの奥に引っこんだ。
すぐに、3つのトレーからこぼれ落ちそうなほどのビッグパックがテーブルに運ばれてきた。俺のシャツをせっせと拭いていたママ・マカロンは、あ然とビッグパックの山を見つめる。
俺は、一つ目のビッグパックに手をのばすと、包み紙を破り、タスマニアンデビルのような大口でかぶりついた。
クイーンズの王が嬉しそうに笑った。
「いいぞ、ドーナツ。カルボナーラに勝って、王になれ」
10個、20個と平らげていく。
隣にいる兄貴のブレッド・ジュニアが、心配そうに俺を見た。
「ドーナツ。大丈夫か?」
8歳年上のジュニアは親父とはまるで違う。
大学生だってのに、親父の代わりに家賃の取り立てに行って、哀れな身の上話を聞かされたりすると、すぐに丸め込まれて帰ってくる。跡取りだってのに情けない話だ。
だけど――俺が腹を立てるたびに話を聞いてくれるのは、いつもジュニアだった。
「音楽の先生がロックをまるで分かってないんだよ。クソつまらない歌ばっかり歌わせるから、俺がその歌をエルビスみたいに、ノリノリで歌ってやったんだ。クラス中がフィーバしてた」
「やるな。さすがドーナツだ」
「だろ? なのに、ちゃんと四拍子で歌えだと。だから、殴ってやろうと思ったんだ。そしたら、あの女が出てきて、イカサマとか文句をつけてきた。だから――」
「おいおい、女の子を殴ったのか?」
「殴るまでもないね。何があっても俺の勝ちだ」
ジュニアは小さく笑って、俺の頭をくしゃりと撫でた。
「勝つよりも、守る方が俺はいいけどね」
「俺は勝つんだ。絶対だ」
まさか、殴ろうとしてクロスカウンターを食らい、無様に床の上に伸びていたとは口が裂けても言えなかった。
思い出すだけでヘドが出そうだ。
俺は、闘いに勝つために、またもビッグパックを口に押し込んだ。
もしも、俺が101個のバーガーを食べ切ったら、俺は俺に勝ったってことだ。あの屈辱の瞬間もチャラになる。
俺はそう決めて、バーガー101個の闘いに挑んでいた。




