表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドーナツ・トランペット バーガーリーパー  作者: マサ・イワムラン
17/31

過酷すぎる行軍訓練!キングスメダルをとっとと諦めた王、地すべりで死亡か!

【これまでのあらすじ】


 ドーナツ・トランペットの望みはただひとつ――王様になること!

 ハンバーガー101個でタイムリープする力を手に入れたドーナツ。

 ミリタリースクールで最優秀生徒に贈られるキングスメダル獲得を目指し、過酷な行軍訓練で『アイツ』を叩き潰すことを決意する!

 ハンバーガーとタイムリープで、ドーナツはハチャメチャな人生を駆け上る!

 その日は、あっけなくやってきた。


 卒業前の行軍訓練は、ニューヨーク・ミリタリー・スクールでも最も過酷な訓練だ。

 敵がいるという想定で、一週間かけて山を縦断する。

 舞台はホワイトマウンテン。ニューハンプシャー州にそびえる、東海岸屈指の難所。強風や地すべりで命を落とした者も少なくない。


 俺は決意していた。


 ――行軍訓練で、モッツの筋肉バカを叩き潰す。

 

 これまで俺は、フリ芸とタイムリープで好成績を叩き出してきた。

 だが、ついにフリ芸にも限界がきた。最終学年で本気を出したモッツの評価は急上昇。キングスメダル候補の下馬評は、モッツが一位、俺が二位。

 王なのに二位。そんな屈辱、耐えられるはずがない。


「俺が先陣を切ります!」


 行軍がはじまると、俺は意気込んで先頭に立った。

 だが、ホワイトマウンテンは地獄だった。

 曇天の下、吸い込まれそうな深緑の森がどこまでも続く。

 

 一時間後、俺は最後尾にいた。


「重い! 痛い! 王にクソ重い荷物を持たせるな!」


 簡易テント、寝袋、着替え、一週間分の食料と水。

 三十キロオーバー、もはや罰ゲームのようなリュックが肩に食い込む。

 おまけに、使いもしないライフル銃がガチャガチャと足にまとわりついてくる。

 フリ芸で誤魔化してきた体には、すべてがきつすぎた。


「ピクルス、下僕の仕事だぞ」

 

 俺は、前を歩くピクルスのリュックの上に自分のをドンと乗せた。ピクルスはオドオドした笑みを浮かべる。


「教官にバレたら、キングスメダルがとれないよ」


「必要ない。考えてみれば、子供騙しのメダルなんかなくても、俺は生まれながらの王だ」


「そうか。そうだよね」


 ピクルスは間抜け面で笑った。


「とにかく行軍訓練なんざとっとと終わらせて、筋肉バカしかいない学校からはおさらばだよ」


 身軽になった俺は、ピクルスのケツをライフルの先でつつきながら、山道を歩き続けた。





 そして、六日目の朝になった。


「11時方向に敵影発見! 散開しろ!」


 士官志望の連中は、いもしない敵を相手に目を血走らせて走り回っている。全く、馬鹿げた芝居だ。


 すっぱりとキングスメダルを諦めた俺は草むらに座り込むと、リュックの底に押し込んでいた新聞を広げた。


 親父が見ていた不動産情報。

 ミリタリースクールに来てからは、俺も毎朝のようにチェックしていた。

 

 連中の声が遠くなる。

 パラつきはじめた雨が紙面に落ちる。

 黒い雲が渦を巻く。

 それでも、俺は新聞を読みふけっていた。




 昼間に降り出した雨は、夜には滝のようになっていた。

 だが、最終日の夜は、テントを使うことさえ許されない。激しい雨は、木陰に敷いた寝袋の中にまで、流れ込んでくる。

 清潔好きな俺には苦行でしかない。

 それでも疲れ切った俺たちは、やがて、一人、また一人といびきをかきはじめた。


「起きろ! 敵兵だ!」


ようやくうつらうつらしたと思ったら、叩き起こされた。


「敵なんていない」


 眠気と寒さで頭が回らない。なのに班の連中は、容赦なく俺を引きずり出した。


「起きろ、ドーナツ!」

「連帯責任はごめんだ!」


 結局、俺も泥だらけで行軍を再開するはめになった。

 最後尾をノロノロと歩く。

 眠い。寒い。服はびしょびしょだ。

 先頭を行くドリアンの背中を見つめながら、俺は思った。


 ――こいつら全員、アホだ。


 ミミズみたいに地面をはい回って、何が面白いんだ? 

 そもそも、こんな思いまでして闘うことに何の意味がある? 

 戦争なんて愚か者のすることだ。

 世界を動かすのは力じゃない。

 金だ。ビジネスだ。


 クソ重い荷物がまたも肩に食い込み始める。ピクルスに持たせてやろうと思ったが、見当たらなかった。


 やれやれと頭をふる。

 その俺の視線の先――暗闇に浮かぶ崖の上に赤い閃光が走った。

 だが、こんな悪天候の中、夜更けの山奥で、火が上がるなんて、あまりにも不自然だ。

 見間違いだろうか――。

 

 筋肉バカのモッツが、立ち止まっている俺にイラついたように言った。


「いそげ、ドーナツ」


「王に命令するな!」


ガツンと指導してやった、その瞬間だった。

地面が揺れた。

唸るような地響きと共に、土砂が崩れ落ちてくる。


「地すべりだ!」

「逃げろ!」


 だが、逃げる間もなく、濁流のような土砂が俺たちを呑み込んだ。

 激しい衝撃。

 目の前が暗くなる。

 そして――


 静まり返った森に、雨の音だけが残った。


【ドーナツからのお知らせ】

 やあ、みんな! 王様ドーナツ・トランペットだ!

 これまで木曜と日曜の週2で更新してきたけど、

 今、新章準備のため、さらなる夢を仕込んでいる最中だ!

 今後は、週1回更新に変更する。

 多少前後しても怒らないでくれよ。

 じゃ、また会おう。

 Stay hungry. Stay royal.


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ