便所掃除は王の仕事ではない!ご立腹の王、ミリタリースクールから逃亡か?!
【これまでのあらすじ】
ドーナツ・トランペットの望みはただひとつ――王様になること!
ハンバーガー101個でタイムリープする力を手に入れたドーナツ少年。
小学校で大事故を起こしたドーナツは、世界を統べる王になるため、ミリタリースクールに入学した!
ハンバーガーとタイムリープで、ドーナツはハチャメチャな人生を駆け上る!
「起床!」
ミリタリースクールの生徒は、毎朝6時に起床のラッパで叩き起こされる。5分で身支度をすませると、部屋の掃除から便所掃除まで奴隷のようにこき使われた。
だが、王たる俺が便所掃除などするはずもない。自宅の納戸よりも小さな8人部屋に詰め込まれた俺は、隣のベッドのピクルスって男が使えるヤツだってことに、すぐに気がついた。
「ピクルス、トイレ掃除が好きだって言ってたな」
ピクルスは、痩せっぽちの小柄な男で、いつも、おどおどしたような笑顔を浮かべている。だが、なかなか良いヤツで、俺がちょっと凄むと、何でも言うことを聞いてくれた。
今日も、俺の代わりに、すぐに雑巾を片手に部屋を出て行く。だが、俺が鏡を見て髪をなでつけていると、教官の一人が飛び込んできた。
「ドーナツ! 便所掃除は、お前の担当だ」
「王に奴隷の仕事をやれと?」
「王? 奴隷?」
筋肉バカの教官どもはオツムが弱いのか、分かりが悪い。
「俺がここに来たのは、王として軍を統率するためだ。便所掃除のためじゃない」
「走れ。校庭20周」
「馬車馬の仕事は、馬車馬にやらせろ」
教官は鼻血でも吹き出しそうな顔をしていたが、俺は構わなかった。
男だらけのむさ苦しい教室での授業が終わると、放課後は筋トレやジョギング、レスリング、そして、何より大嫌いな、ほふく前進訓練まである。王にミミズのように地面をのたうち回らせるなど言語道断。
他の生徒たちは馬鹿みたいに必死になって汗を流していたが、俺は、身体訓練の類には、一切参加しないと決めていた。
「歩兵どもの訓練など、王には必要ないからな」
それにしても、恋しいのは女の子たちの歓声だった。
入学から三日目の夜、訓練で疲れ切り、ろくにシャワーも浴びずにベッドに倒れ込んだ野郎どもの獣臭い匂いを嗅ぎながら、俺はパクドナルドへ走ることを決意した。
タイムリープして、そもそも、こんな学校に来るのはやめにしよう。
相部屋のやつらが、高いびきをかきはじめると、俺はそっと寝床を抜け出した。暗い廊下を抜け、宿舎の扉に手をかける。
「出て行くのか?」
声がして振り返ると、暗がりに一人の教官が立っていた。
その顔に見覚えがあった。年は30代半ばだろうか。他の教官たちと違い、口うるさく怒鳴ったりしないヤツだ。
俺は肩をすくめた。
「俺みたいなハンサムガイが、こんな野郎ばっかの場所にいちゃ、宝の持ち腐れだろ」
「それもそうだ」
そいつは、素直に認めた。
「珍しく分かってる教官もいるんだな。名前は?」
「ドリアン。ブルガリア・ドリアンだ」
「俺が軍を指揮する時には覚えておいてやるよ、ドリアン」
宿舎を出ようとすると、背後から声が聞こえた。
「残念だ。お前なら、キングスメダルをとれると思ってたんだがな」
「キングス、メダル?」
思わず、振り返っていた。
「何だ、その俺にぴったりすぎる名前のメダルは」
「毎年、卒業生の中で、最優秀生徒に送られるメダルだ。キングスメダルの受賞者は、卒業してからも、軍隊や政界、財界でも一目置かれる存在になる」
「俺が、そのメダルに相応しいと?」
ドリアンが、かすかに微笑んだ。
あまりにも、あまりにも俺に相応しい。
胸の中で、また何かが鳴った。
――キングスメダル。
キングスメダル! そして、どうなる?!




