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こわいがぞうやさん

【こわいがぞうやさん】


こわいがぞうです。


■画像のご利用について

・当サイトに掲載されているすべての画像は、無償でご利用いただけます

・加工・再配布・商用利用、いずれもご自由にどうぞ

・ただし、画像の使用により生じたあらゆる損害・不利益については、当方は一切の責任を負いません

※使用は自己責任でお願いいたします



 ーーなんだこれ?


 不気味な怖い画像の素材を探しているとたまたま妙なサイト名が目についた。しかし期待もせずに開いてみるとこれまで見た中でだんとつのサイトだった。 


 これは使える。一通り規約などを確認し、その中の一つの画像をダウンロードする。これだけのコンテンツでフリー素材とは太っ腹だ。ありがたく使わせてもらおう。


 ーーそれにしても。


 ここに載っている人達は一体何なんだろう。 







「この写真、なんか変じゃない?」


 大学の講義が終わった後、理沙に声をかけられ面倒に感じながらもどうしてもと言うので近くのカフェに入った所、彼女はスマホをおもむろに私に見せてきた。キャンプサークルの合宿で撮った集合写真。夜の焚き火を囲むように皆が並んで笑っている楽し気な画像だ。


「……なによ、これ」


 しかしすぐに違和感に気が付いた。理沙が指差したのは写真の一番左端。ちょうど木の影の向こう側に、赤いパーカーを着た何者かが立っていた。


「す、スタッフの人とか?」

「この時周りにはスタッフはもちろん他のお客さんもいなかったよ」


 言いながら理沙はわざわざ画像を拡大して見せつけてくる。写真の奥にいてフードを被っているので分かりづらいが、赤パーカーの視線は近くにいる私の方に向けられているようだった。


「これってまさか、心霊写真ってやつ?」

 

 ホラー番組やネットなんかで見た事はあったが目の前で実物を見たのは初めてだった。嘘みたいにはっきりと写っているのでさすがに俄かには信じられず、嘘であってくれと祈りも含めた意味で軽い調子で言ったつもりだったが、目の前の理沙の表情は真顔のままだった。


「だって他の皆にも聞いたけどこんな人見てないって言うし、同じように他の子が撮ったキャンプファイヤーの写真には一切写ってないのよ」


 それを聞いてすぐさま自分のスマホを取り出し写真フォルダを見返す。この夜自分も何枚か写真を撮っていたはずだ。しかし見返すと理沙の言うようにそんな人物はどこにも写っていなかった。


「最悪なんだけど」


 恐怖はもちろんの事だが苛立ちや腹立たしさの方が遥かに大きかった。相手に不快な感情を与える事が容易に想像出来るのにわざわざこれを私に見せてきた神経が何より気に障った。


「気を付けてね。なんかこいつ由香里の方見てる感じするし」


 睨みつけるように向けた視線を気にもせず理沙はのうのうとそんな事を口にした。一気に脳天に血が上り、衝動的に目の前のテーブルを思いっきり両手で叩きつけた。


「あんた何なの? 不愉快なんだけど」

「ちょ、どうしたのよただの心霊写真じゃん」

「最低。絶交だわ。二度と喋りかけんな」


 出来る限りの冷たい視線を浴びせ、当然のように会計もせずに店を後にした。

 何のつもりだ。まさか私がオカルト嫌いだって事を知ってわざとやってきたのか?

 分からない。何にしてもこちらからすれば急な謀反に近い。

 死ね。クソ女。ただこれで終わりじゃない。絶対に同じ気持ちを味わせてやる。

 

「もしもし。今日泊まってもいい?」


 まずは雄太に癒してもらおう。考えるのはそれからだ。







「うわ、何だよこれ」

「どしたの?」

「いや、これ。昼間見た時はいなかったのに」


 雄太の家に泊まり事を済ませベッドでまどろんでいた所、昼間の理沙への気持ちや心霊写真への恐怖がすっかりと薄らいでいた所に急に彼が驚いたような声をあげ自分のスマホをこちらに見せてきた。

 それを見た瞬間、私は彼の携帯を思いっきり振り払った。勢いよく飛んだスマホは壁にぶつかりそのまま床に叩きつけられた。


「おい何やってんだよ!」

「あんたこそ何考えてんのよ!」


 彼の身体から離れ脱いだ服を急いで着直す。


「帰る」

「帰るってもう電車ないぞ」


 鼓動が爆発しそうな私と違って冷静な雄太の声がまた神経を逆撫でる。彼の言う通り深夜で電車はもう動いていない。一人暮らしの雄太と違い実家通いの自分は電車通学だ。歩いて帰れる距離でもなければお金もない。


「ふざけんなよ、壊れてたら修理代出せよな」


 出すわけないだろと心中で毒づく。お前があんな画像を見せるから悪いんだろうが。


「あんたこそふざけんじゃないわよ。私が幽霊大っ嫌いって知ってるくせに何考えてるわけ?」

「うるせぇな心霊写真ぐらいでギャーギャー。子供かよ」


 雄太は反省どころか嘲るような笑顔を浮かべていた。

 信じられない。こんな無神経な男だったのか。ルックスはもちろん気遣いの出来る優しさと絶妙な甘い言葉に騙されたがいざ事を終えれば本性はこの程度か。

 

 ーーまさか、こいつが理沙に教えた?


「夜道には気をつけろよ」


 声だけでも馬鹿にした笑いを浮かべてるのが分かる捨て台詞を背に浴びながら、私は雄太の部屋を後にした。

 脳裏にはスマホに映った赤いパーカーがこびりついて離れなかった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

○○大学の女子学生、刺殺体で発見 赤いパーカーの人物が現場付近に 警察が行方を追う


【○○市】2日未明、○○大学に通う後藤由香里さん(21)が、○○市内の住宅街で刺殺された状態で発見された。現場付近では事件前後に「赤いパーカー」を着た人物が目撃されており、警察はこの人物を重要参考人として行方を追っている。


 警察によると由香里さんは深夜に帰宅途中だったとみられ、通行人が倒れているのを発見し通報した。救急隊が駆けつけたがすでに死亡が確認されていた。体には複数の刺し傷があり、凶器は現場に残されていなかった。


 周辺の防犯カメラや目撃情報から事件当時、近くに赤いパーカーを着た不審な人物がいたとの証言が複数寄せられており、警察は殺人事件として捜査本部を設置し情報提供を呼びかけている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「……どういう事よ。どうなってるのよこれ」

「冗談が過ぎるだろこんなの」


 私も雄太も顔色から血の気が失せていた。困惑、戸惑い、恐怖。理解できない不条理な状況をまるで飲み込めなかった。


 ーーなんで本当に……。


 消えろ。死ね。確かにそう思った事は一度や二度ではない。

 全ては由香里に向けてのただのイタズラだった。

 なのに、何故こんな事になってしまったんだ。







「由香里ってほんとうざいよね」


 一言で言えばこれがサークル全女子の総意だった。

 グラビアモデルばりのスタイルと女優のような端正な顔立ち。羨むなという方が無理な程、由香里という女はルックス面においては非の打ち所がない完璧な女性だった。

 しかしそれだけの女だった。口を開けば文句や誹謗中傷。自己中で傲慢で気遣いや優しさといった他人を考慮するといった思考回路は一切なし。世界は自分の為に存在していると心から信じて疑わないような、まるで漫画やアニメでしか見たことないのない嫌味なお嬢様そのものだった。

 救えないのがお嬢様ですらない事で特に本人や実家が金持ちという訳ではない。わざわざ一時間もかけて電車通学している普通の女学生なのに、抜群のルックスだけを活かして男を誑かせ貢がせる事で、外面はこれ見よがしにブランドもので塗り固めていた。


「何その服。だっさ。貧乏人丸出しね」


 サークルでは幽霊部員でほぼ顔を出す事がなかった彼女から初めてかけられた言葉は忘れもしない。あまりの言葉に一瞬自分の身に何が起きたのか理解できなかった。こんな人間が本当にいるんだ。驚きと共に呆れ果てたものだ。


『あいつ、幽霊めっちゃ嫌いらしいぜ』


 だからこそ彼女の弱点を知った時、ささやかな復讐を思いついた。





「何それおもしれー乗った」


 雄太は私の考えたイタズラに快く乗ってくれた。

 アイドル顔負けの美少年なのに口を開けば品の無さが丸出しの典型的な残念イケメンであり、現由香里の彼。二人が並んで歩けばまさに芸能人カップルそのものだが、二人の内面を知っている者達からすれば嘲笑の的だった。

 由香里もなかなかだが雄太もある意味では負けていない。大の女好きでとにかくルックスが良ければ誰彼構わず抱く。このご時世で面と向かって女性にブスと真顔で言えてしまうようなノンデリ男。

 彼を知れば毛嫌いする人間も少なくはないが、私は意外とこの男が嫌いではなかった。確かにろくでもない男ではあるが考えようによれば彼は素直なだけだ。変に嘘をつく事もしないので慣れてしまえば案外心地が良い。


「顔は全然好みじゃないけど、お前といると居心地いいよ」


 だからこそ雄太と付き合ったのもお互い自然な流れだった。由香里と二股である事は承知の上で、「あいつは顔と身体だけだから」と言いながら私を抱いてくれる事が妙に清々しく気持ち良かった。

 別れてくれなんて面倒な事は言わない。私との関係は続くがあの女は今だけだ。ほっておいても終わる。だから私は表で彼と付き合っている事は言わないし彼にも今以上を別に求めない。むしろ知られたら面倒だから隠しておいて欲しいとさえお願いしている。

 

 隠れながらでも人知れず雄太と男女の関係にある事に優越感に浸っていた。

 そんな時、雄太から由香里が相当なホラー嫌いという彼女の知らない一面を教えてくれた。


「生きた人間には横暴の癖に死んだ人間はてんでダメらしい。死人なんてなんも出来ない無抵抗な雑魚なのにな」


 当然のように幽霊なんて信じていない雄太からすれば由香里の反応は全く理解できないだろう。


「そろそろあの女飽きてきてんだけど、プライドたけぇから絶対に俺から別れようって言っても聞かねぇよな。あーめんどくせぇ」


 死人に対しての価値観はさすがに雄太ほど酷くはないにしても、そんな事よりこの弱点を使わない理由はないと瞬時に思った。


「ねぇ、由香里って今度のキャンプ参加するよね?」

「あぁ、俺が行くって言ったらじゃあ私も行くって」


 去年参加したので大体の流れは分かっている。喧騒から離れた山の近くにあるキャンプ場。夜空の下でキャンプファイヤーを囲み飲み食いする楽しいオリエンテーション。


「あのさ、良い事思いついた」


 





 緻密でも周到でもない杜撰なイタズラ。だが相手が由香里なら成立するであろう悪質な嫌がらせ。私が考えたのはキャンプ場で撮影した画像を加工して心霊写真に仕立てて怖がらせてやる事だった。

 雄太は面白がって賛同してくれた。うまくいけばこれで別れるきっかけも作れるかもと喜んでる彼の姿を見て私も密かに嬉しく思った。


 キャンプが終わり早速画像の加工に取り掛かった。ただの素人でも使える加工ツールが今は豊富にある。素材さえあれば誰でも簡単に望んだ画像が作れてしまう。

 不気味でゾッとするような画像。さすがにお金はかけたくないのでフリー画像で検索してみるも、インパクトはあるものの嘘っぽく見えて撮った写真に適さないものが多かった。何かないかと漁っていた所で辿り着いたのが【こわいがぞうやさん】だった。


 初めて見たサイトだったがこれがなかなか良質なサイトだった。荒いテキストと無機質な黒の背景の中に均等に敷き詰められた数多の画像。特徴的なのはイラストや絵ではなく実際に撮影されたであろう画像が素材になっている事だった。

 風景の類はなく全て人の画像。男性、女性、年齢もバラバラ。どれもが明瞭ではないが荒い見知らぬ誰かの画像というのは、求めている不気味さとばっちりマッチした。

 その中から私は赤いパーカーの男の画像をダウンロードした。フードに隠れた表情から覗く視線の不気味さが気に入った。早速キャンプの写真に取り込むと夜の暗さに溶けこませ自然な仕上がりに加工した。由香里の近くに置く事でより恐怖心を掻き立てる構図にして早速雄太に送った。


『めっちゃいいじゃん笑』


 そして雄太が撮った画像にも同じように赤パーカー男を出来る限り自然に紛れ込ませた。


『最高。あいつ多分ションベン漏らすぞ笑』


 相変わらずの品の無さだなと苦笑しながら出来上がった画像を改めてみる。フードを被った赤パーカー男は実に不気味な存在として写真からこちらを見つめていた。









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○○大学の男子学生が撲殺され死亡 赤いパーカーの人物再び目撃 連続殺人の可能性も


【○○市】2日未明に発生した女子大学生・後藤由香里さんの刺殺事件に続き、同じ○○大学に通う男子学生・今里雄太さん(20)が、市内の公園で撲殺された状態で発見された。警察は、両事件の関連性を視野に入れ、連続殺人事件としての可能性も含めて捜査を進めている。


 今里さんは3日午前、通行人によって○○中央公園内のベンチ付近で倒れているのを発見された。頭部を鈍器のようなもので激しく殴打された痕があり、現場に凶器とみられる物は残されていなかった。既に死亡しており、死後数時間が経過していたとみられる。


 現場付近では事件当時、再び「赤いパーカー」を着た人物が目撃されており、警察は2日前に発生した後藤由香里さんの刺殺事件との関連を調査中。両被害者が同じ大学に所属していたことから、計画的な犯行の可能性も否定できないとしている。


 警察は引き続き、防犯カメラの映像解析や聞き込みを強化するとともに、赤いパーカーの人物の特定に全力を挙げている。

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 気力も体力も根こそぎ奪われ、部屋の中で一人憔悴しきっていた。

 由香里も雄太も死んだ。何か知ってる事はないかと警察にも話を聞かれたが知るわけがない。むしろ私が教えて欲しいぐらいだ。

 

 何故、どうして。考えるのも疲れた。意味もなくスマホの画面を閉じたり開いたりを繰り返す。気付けば自然とあのサイトを開いていた。


 こわいがぞうやさん。無機質な画面と無造作に並んだ画像。その中には例の赤パーカーも存在しているが若干位置が変わっていた。どうやら画像の数が少し変動しているようだ。



■画像のご利用について

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・ただし、画像の使用により生じたあらゆる損害・不利益については、当方は一切の責任を負いません

※使用は自己責任でお願いいたします



 使用は自己責任。身近な人間が二人も死ねばどうしても頭に浮かぶものがあった。

 ここにある画像は全て呪われているんじゃないか。何かしらの強い念が込められた、または持った者達の画像。だからこそこれらを道具として使用した時に影響が生じる。よりによって手作りの心霊写真なんて罰当たりな形で利用したのだ。いかにも呪われそうな行動じゃないか。


 ーーじゃあ、私が殺したんだ。


 嗚咽が漏れ涙が零れた。途端に胃液もせり上がり盛大にトイレで吐き散らした。

 ただのイタズラだった。でももうイタズラでは済まないのかもしれない。私も近々殺されるのだろうか。

 干からびたように脱力し床に寝ころんだ。全く動く気力も起きず、気付けばそのまま意識を失うように眠りに落ちた。







 目を覚ましたものの気力も体力もまるで回復していなかった。身体を動かす気にはなれなかったがそれでも腕だけは動いた。日頃からスマホに頼った生活ですっかり中毒になっているらしい。何もなくてもスマホを開く習慣だけはこんな時でも離れなかった。

 なんとはなしにネット記事を開き見ていると、身体がぴくりと反応した。


【○○市で発生の殺人事件 容疑者の男を逮捕】


 まさか捕まったのか。途端に血流が速まり自然と身体が動いた。私は記事の内容に目を通した。






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【○○市】○○市内のアパートで今月1日に発生した殺人事件で、県警は5日、同市に住む無職の男・山本一樹容疑者(35)を殺人の疑いで逮捕した。


 事件は1日午後、○○市○丁目のアパート一室で、この部屋に住む会社員の女性・中村恵美さん(29)が血を流して倒れているのが発見されたもので、死因は鋭利な刃物による失血死だった。室内には争った形跡があり、警察は殺人事件として捜査を進めている。


 捜査関係者によると、現場からは山本容疑者の指紋が検出され、防犯カメラ映像や周囲の証言などから関与が強まったため、5日未明に逮捕に踏み切ったという。取り調べに対し、山本容疑者は犯行を認める趣旨の供述をしており、「自分を受け入れてくれなかった」と話しているという。


 警察は事件の経緯や動機の詳細についてさらに調べを進めるとともに、余罪の有無なども慎重に確認している。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「……違う」


 思わず声が漏れた。

 違う、こいつじゃない。てっきり赤パーカーが捕まってくれたのかと思った。しかし残念ながらどう見ても見た目が違っている。また内容も二人の事件とは毛色がまるで違う。完全に別の事件だ。

 また身体から力が抜けていきそうになった。だがその時何かが引っかかりもう一度画面に視線を戻した。


 山本一樹。肩にかかるほどの長いボサボサの髪と無精ひげ。黒縁眼鏡をかけていてもその奥にある暗い目が印象的だった。しかし何より自分を突き動かしたのはこの男に対しての既視感だった。私は慌ててスマホを操作する。

 やはりそうだった。山本一樹の画像はこわいがぞうやさんに掲載されていた。


 ーー……こわいがぞう。

  

 謎のサイトに載せられた見知らぬ誰かの画像。直接的な恐怖ではなく謎めいた不気味さや不穏さを演出する類のエンタメが今増えている。これもそのうちの一つだと思っていた。

 違うのかもしれない。何故このサイトに載せられた画像は”こわい”のか。

 

 私はサイトのいくつかの画像をダウンロードして検索をかける。全ての画像がヒットしたわけではなかったが、ある程度思った通りの結果が出た。

 ここに掲載されている人物はおそらく全員殺人犯だ。おそらくというのは既に逮捕された者もいれば、一切そういった情報が出てこない者もいたからだ。それがもしかするとこのサイトの言う所の”こわいがぞう”を意味しているのかもしれない。

 今ニュースになっている山本に関しても、初めて画像を見たタイミングではまだ報道されていなかった。赤パーカーもまだ逮捕されていない。そしてその他の検索結果の出なかった

者達。

 

 このサイトにはこれから殺人を犯す者達も載せられている。画像数が変動しているのは日々殺人犯が増えているからだ。


 過去の殺人犯を掲載しているだけならまだ理解出来る。それでも十分気味は悪いが、問題はどうしてこれから殺人を犯す者達まで載せられているのか。しかも山本和樹に関してはテレビで報道された際の画像と全く同じものが使われている。

 更に調べて見るともう一つ気持ちの悪い事に気付いた。検索結果が出た犯人達は皆、私の今住んでいる場所からそう遠くない地域で犯行に及んでいる。


 全国の過去、未来の近場に住んでいる殺人犯を掲載しているサイト。

 何故そんな事が出来るのか、何の目的でこんなものを載せているのか。全く意味が分からない。このサイトの作成者は何者なのか。

 今更ながら後悔した。こんな気持ちの悪いサイトの画像なんて使わなければ良かった。


「あ」


 ふと今しがた自分がしてしまった行動を思い出しさっと血の気が引いた。


 

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※使用は自己責任でお願いいたします



 画像の使用判定はどこからだ。

 加工、配布。だがもしそれ以前の段階だとしたら。

 ダウンロード。画像検索。しかも一枚じゃなく何枚も。

 使用は自己責任。まさかこんな簡単な事が引き金で殺される?

 

 でも少なくとも私はもう一枚画像を加工している。そしてそれを見ただけの由香里と雄太は殺された。

 じゃあ私だけが無事だなんてあり得るだろうか。 

 あり得ない。あり得るわけない。

 違う違う。そんな事が起こるなんて事があり得ない。

 

 そう思いながらも身体の震えは全く止まらなかった。


 













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女子大学生が切断遺体で発見 赤いパーカーの人物含む複数人が関与か 凄惨な犯行に戦慄広がる


【○○市】○○市内で4日深夜、○○大学に通う女子学生・高橋理沙さん(20)が、身体を何十もの断片に切断された状態で発見される事件が発生した。遺体はあまりに損壊が激しく、当初は本人の特定が困難だったという。現場周辺では赤いパーカーの人物を含む複数人の目撃情報があり、警察は集団による計画的かつ悪質な殺人事件として捜査本部を設置した。


遺体が見つかったのは、○○市○丁目にある廃工場跡地の敷地内。異臭に気づいた近隣住民が通報し、警察が駆けつけたところ、多数のポリ袋に分けて遺棄された人体の一部が発見された。袋は10袋以上に及び、内容物から頭部・四肢・胴体など、少なくとも30以上の断片に分けられていたという。


捜査関係者によれば、身元の特定にはDNA鑑定が必要だった。結果として、高橋理沙さんであることが確認されたが、顔や指などの個人識別に使われる部位も一部が損壊・欠損していたという。


現場付近では、事件当日の深夜に「赤いパーカーを着た若い男」が不審な袋を運んでいたとの目撃情報があり、さらに周辺の防犯カメラには複数人の人物が工場跡地に出入りしていた様子も映っていた。警察は理沙さんが事件前に何者かに拉致され、計画的に監禁・殺害された可能性も視野に入れて捜査している。


大学関係者は「学生がこのような形で命を奪われたことに、深い衝撃と怒りを感じている」とコメント。市内には動揺が広がっており、警察は情報提供を呼びかけるとともに、犯人らの早期特定と逮捕に全力を挙げている。

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