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90日目:最高の防具

鍛冶屋の村に戻った我々を迎えたのは炉の熱と鉄の匂い、そして職人たちの誇らしげな表情だった。

彼らは我々が持ち帰った鉱石を確かに最高の形へと打ち上げてくれていた。


完成された防具は、一目見てただものではないと分かる代物だった。

淡い紫を帯びた金属の表面は、光を受けるたびに不気味なまでの輝きを放つ。

それはまるで夜空の星を閉じ込めたかのようで、同時に近寄りがたい冷たさも感じさせる。



鍛冶師の男は言った。

――あの鉱石は採掘する難易度もさることながら、加工の難しさが尋常ではない、と。

ひとりでは到底仕上げられなかったので、この村にいる鍛冶師総出で叩き、削り、磨き、幾度も炉に入れては鍛え直したという。

まさしく村全体の技術の結晶。

超一級品であると胸を張ったのも無理はない。


その防具を前にした少年は珍しく神妙な表情をしていた。

差し出された鎧を、ためらいながらもひとつずつ身に着けていく。

胸甲は胸板に吸い付くように馴染み、籠手も脚甲も、まるで最初から彼のために形作られていたかのようだ。

いや、実際そうなのだろう。

何度も採寸を繰り返し、細部に至るまで調整された結果がこれだ。

鎧姿の少年を見て、鍛冶師のひとりが「よく似合う」と呟いた。

その声音には、職人の誇りと、孫を見守る祖父のような温かさが混じっていた。


これで一応、魔王と対峙するための「最低限の準備」が整ったことになる。

……もっとも、細かい事柄は山ほど残っている。

食糧の確保、移動の段取り、護符や薬草の追加調達、隊列の確認、そしてわたしの睡眠時間の確保まで。

現実というやつは、いつも地味で面倒な積み重ねの上に成り立っている。


この鎧に守られて少年が立つ姿は、見慣れたはずの背中でありながらどこか遠くなったように感じられる。

あどけなさを残していた肩は、確かに逞しさを帯びていた。

魔王との決戦が近づいている緊張を、職人の誇りと少年の成長とが、ひしひしと肌に伝えてくる。


――さて、我々はいよいよ、大詰めだ。



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