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81日目:聖剣の刻、祈りの灯

久方ぶりに訪れた神殿は、あの日と変わらぬ柔らかな光を湛えていた。

けれど、我々の胸中は、あの日より遥かに重い。


光の巫女は静かに微笑みながら、少年にひとつの試練を課した。


それは、聖剣を受け継ぐための儀。

巫女自身がその化身であるということも、ここで初めて明かされた。


試練の場は、巫女の魔力によって作られた特異な空間。

肉体を持って入れるのは、選ばれし者――少年、ただ一人。


我々大人は、扉の前で立ち尽くすほかに術を持たず、ただ、彼が無事その手で光を掴んで戻ることを祈るしかなかった。




静かな神殿の中で、時間は不思議なほど緩やかに流れていった。


兵士の男は、言葉少なに調理の準備を始めた。

「きっと腹を減らして帰ってくる」――その一言で、彼が何をどれほど思っているか、十分すぎるほど伝わった。


香草を刻む音とともに、鍋に火がともる。

中身は、少年が一番好きなあの煮込み料理だ。


獣人の男は、古びた針と革布を手に、黙々と衣服の補修をしている。

ほつれた縫い目、裂けた裾、擦れた襟。

彼の指先がそれらをひとつずつ丁寧に縫い合わせる様は、まるで時間そのものを繕っているかのようだった。


花の魔女は、広げた布の上にずらりと薬草を並べ、手際よく瓶を煮沸し、何やら新しいポーションを調合している。

風味の調整にも気を配っているらしい。

「少年たってのお願いなのよ」と、頬を少し赤らめていた。


わたしはというと、しばらく迷った末に、少し高価な筆記紙と封蝋を取り出し、王都の主――我が王へと手紙をしたためることにした。


これまでの旅路。

交わした言葉。

重ねた戦い。

拾い上げた希望と、背負った痛み。


三か月。

日数にすればそれだけの時間が流れた。

けれど、その一日一日が、剣よりも鋭く、絹よりも繊細だったことを、わたしの言葉がどこまで伝えられるかは分からない。


インクが乾くころ、空には星の気配。

神聖な灯の揺らめきだけが、静かに夜の帳を引いていった。


少年が戻ってくるそのときまで、この夜が穏やかに続くことを、わたしはひとり、祈るばかりだった。



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