表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/93

62日目:輪郭



獣人国の王都に足を踏み入れるや否や、王が直々に我々を迎えに現れた。

その顔には、これまでにないほどの陰りが差していた。

わざわざ門前まで足を運ぶ王の姿に、何かが起きたのだと悟るには十分だった。


案の定、王の口から語られたのは、昨夜から続く不穏な連鎖の輪郭だった。

すでに王の耳にも残党の動きは伝わっているという。

彼の調べによれば、やはり――魔王崇拝者たちとクーデターの残党は結託しているとのことだった。

あのとき見た刃の紋様は、やはり偶然などではなかったのだ。


その報告を終えるより早く、兵士が駆け込んできた。

顔面蒼白という表現がこれほど似合う場面もあるまい。

彼の報せは簡潔だった。


――王族の少女が、連れ去られた。


前王の弟の娘。

彼女の乗った馬車が何者かに襲撃されたのだという。

生き延びた従者の証言によれば、襲撃してきたのは人間と獣人の混成集団だったらしい。

あまりにも分かりやすい構図。

だが、それこそが我々の心をざわつかせた。


誰も口に出さなかったが、全員が同じ結論に至っていた。

魔王崇拝者と、クーデター残党――あの連中の仕業だ。


少女の身柄は、単なる「人質」にとどまらない。

その存在は、王族の象徴であり、国の安定そのものでもある。

彼女が「連れ去られた」という一点だけで、王の立場が揺らぐ可能性すらあるのだ。


重苦しい沈黙の中で、ひときわ強い声が上がったのは獣人の男だった。

彼の瞳には、これまでにないほどの烈しさが宿っていた。

もともと少女とは旧知の仲だったらしい。

言葉にせずとも、その表情がすべてを物語っていた。


「俺が行く」と彼は言った。


王はほんの一瞬、目を伏せた。

そして頷いた。

――その静かなうなずきが、全ての許可を意味していた。


かくして我々は、王に代わり少女救出に向かうこととなった。


崇拝者と残党が結託しているという確証。

混成部隊による襲撃。

攫われた王族の少女。

そして、追いかける我々――


徐々に事態の規模は膨れ上がっている。

それでも、足を止める者は誰一人としていない。



今はただ、目の前の少女を救い出すこと。

それだけが、我々の使命だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ