45日目:新しい朝と新しい王と新しい仲間と
朝が来た。
信じられないことに、ちゃんと朝が来た。
瓦礫の山と、火薬のにおいに包まれながら。
城下町は昨日と同じ場所にあるはずなのに、まるで別の場所のように見えた。
傷ついた石畳、崩れた屋根、煤けた壁。
けれど、そのひとつひとつに、人の手が伸びていた。
皆が、それを直そうとしていた。
そんな朝に我々のもとを訪ねてきたのは、新たに王となった第一皇子だった。
彼はまず、深く頭を下げた。
感謝と、そして謝罪。
これから王になる者が頭を下げるというのは並のことではない。
が、それをさせてしまうほどの出来事だったのだろう。
続けて彼は、小さな布包みを取り出した。
中に入っていたのは、光を宿す宝珠の片割れ。
「古代兵器の近くに落ちていた」とのこと。
意図か運命か、いずれにせよ“次へ進め”というサインと受け取るべきだろう。
そして、彼にとっての本題はそのあとに訪れた。
「ご一行にもう一人加えてみてはどうでしょうか?」
彼が軽やかに指差した先には、厳つい顔をした獣人の男。
野生と戦闘に長けた、無骨な戦士。
わたしには彼の顔に大きく「不服」という文字が書かれているように見えた。
そんなことお構いなしに、王は彼を仲間に加えることが我々にとってどれほど有益かを説いた。
まず第一に、実務面。
・彼の遠距離戦闘技術は、獣人族の中でも随一
・弓はもちろん、投擲武器や即席の狙撃器も難なく扱える
我々の編成の隙間を補完する役目として、これ以上の人材はそういない、とのこと。
第二に、感覚面での優位性。
・人間より感覚が鋭い
・夜間の監視や、魔獣の接近察知など使い道は多岐に渡る
戦闘における補助、索敵能力、斥候としての適性──実に理にかなった、まっとうな分析だった。
王は、子供が得意げに話すような仕草でもう一つ付け加えた。
「彼、ああ見えて手先がとても器用なんですよ」
手芸なんかもお手の物です、といって懐から小さな人形を取り出した。
なんでも、小さいころに彼が作ってくれたらしい。
無造作に暴かれた秘密に、獣人の男は見る間に顔をしかめた。
そんな彼を横目に王はにこやかに
「これからの旅でも、きっと役に立ちますよ」
と言った。
こういった“何気ない提案”こそが最も意図的であることを、私は知っている。
この発言の背後には、おそらく何層もの打算が塗り重ねられているはずだ。
たとえば――「勇者」となるかもしれない人間の少年と、獣人の男とが旅を共にする。
それは、二種族間の歴史的な軋轢を象徴的に上書きするための構図としては悪くない。
そんなふうに勘繰りはしたが、特段それを咎める理由も、否定する利点もなかった。
少年は迷わず頷き、「来てくれたら嬉しい」と笑った。
彼の率直さは時に外交よりも効く。
獣人の男は、ため息をついて肩をすくめた。
こうして、一行に新たな仲間が加わることとなった。
我々は、次なる精霊を探す旅へと、再び歩を進める。
旅は終わらない。むしろ、ここからが本番だ。




