22日目:素材探しの旅は続く
剣の重さは、鋼だけでは決まらない。
握る手の覚悟、作った者の技術、払われた代償——それらが混ざってようやく「重さ」になる。
午前、村から西に伸びる林道を進む。
目的は少年の新たな装備に必要な素材集め。
刀身そのものは鍛冶場で成形中だが、柄や鞘には別の素材が求められる。
軽さと柔軟性、そして耐久性——魔物の皮や植物繊維などがよく用いられる。
「魔物の皮」といっても、理想的には既に死んでいる個体から剥ぎ取るのが望ましい。
今日のように、生きている方から直接いただくのは、手間と出血を伴う。
幸い、出血は向こう側のみにとどまった。今のところは。
◆今日の採取対象
・ケラトの繊維(強靭。見た目は芋のひげ根)
・牙蛾の外殻(軽量で加工性あり。臭い)
・バルサ樹皮(剥がすのに時間がかかる)
少年は、今日も黙々と作業に集中していた。
新しい剣の完成が近いことが、彼の中で何かを張りつめさせているのだろう。
何も言わないその背中は子供のままだが、それでも昨日よりも少しだけ頼もしかった。
重い枝を一緒に運び、蜘蛛の巣に顔をしかめながらも手を止めないその姿に、わたしはふと——少しだけ、安心した。
◆今日の昼食:鍛冶師の奥方が持たせてくれたサンドウィッチ
具材は卵と野菜と少しの加工肉。
パンには彼女の自家製らしいマスタードが塗られていた。
それらを大判のハンカチに丁寧に包み、「道中、ちゃんと食べるんだよ」と念を押されたのが思い出される。
包装を解いたとたん、少年の目がきらきらと輝きだしたのは言うまでもない。
彼は「いただきます」と唱えた数分後には二切れおかわりをした。
相当気に入ったのだろう。
……勢い余ってわたしの分を食べてしまうくらいには。
午後、帰路。
収集物は概ね、目的を果たすに足る量となった。
鍛冶師の話では、素材の調整と仕上げに数日を要するとのこと。
つまり剣の完成は、そう遠くない未来。
さて、火を起こすとしよう。
夜の森は温度も音も緊張している。
油断すれば眠りも殺気に呑まれる。
我々が生きるとは、つまり眠る権利を得るということなのだ。




