15日目:依頼と夕餉
旅のなかでも、働いて食う日は健全だ。
どこか牧歌的ですらある。
――ただし、働く内容が「森林に出没した毒蛇型魔物の駆除」でなければの話だ。
依頼はまたしても国営ギルド経由。
昨日の鉱山ネズミに比べれば、今日の獲物は多少見た目が華やかだった。
斑模様の鱗、毒腺の膨らみ、空気を切る舌。
芸術とは、時に人体に致命的だ。
戦闘は滞りなく終了。
少年は一度、尻餅をついたものの、誰にも指摘されなかった。
つまり、彼はもう「見守られる対象」から外れたということだ。
さて、戦闘後に訪れるもっとも重要な儀式、それが「食事」である。
本日は兵士の男——常に正面からしか物事を見ない筋肉の塊が調理を担当した。
駐屯所仕込みの腕前とのことだったが、期待半分・観察眼全開で臨むことにした。
■本日のメニュー:野菜と干し肉の炊き込みご飯
材料(3人分)
干し肉:1枚(手でちぎる)
野菜:根菜1個、野草の葉(苦くない種類)少々
米(長粒種):2合
塩:適量
胡椒:携帯用ポーチからひとつまみ
水:炊飯用に500ml
手順
干し肉を細く裂き、刻んだ野菜と一緒に鍋に投入。
米を洗わずそのまま放り込む(兵士いわく「香ばしさが残る」ため)
水と調味料を加え、炊くこと約30分。
焚き火の火加減を見ながら、香りが立ち上るのを合図に蓋を開ける。
最後に葉っぱを刻んで散らし、完成。
少年は二杯目を要求し、男は嬉々としてよそっていた。
わたしは無言で食べた。
結果として、悪くない。
むしろ、非常に「まともな味」だったことが最大の驚きだ。
まとも、というのはこの旅では最上級の褒め言葉である。
食後、男は少年に火加減のコツを教えていた。
たぶん忘れるだろうが、教わること自体が意味を持つのだ。
教育とはそういう積み重ねでできている。
本日得た報酬は銀貨22枚。
毒蛇の牙も売れば追加収入になるが、それはまた別の日に。
明日には神殿にたどり着く予定だ。
彼の中の何が揺れるか。
わたしはただ、その揺れが形になるまで見届けるだけだ。




