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13日目:出発と、人生の乗り換えについて


啓示を受けた翌日、わたしたちはこの町を出ることにした。

理由は単純だ。

目的地ができた以上、ここに留まる理由はない。


それに、もう十分だ。

この町で得られる教訓も、湿気も、すでに飽和している。


朝、荷をまとめていたとき、不意にあの兵士の男が姿を現した。

口火を切る前触れもなく、彼はごく自然にこう言った。


「俺も、一緒に行きたいんだ」


唐突で、まるで挨拶のような軽さだった。

少年は目を丸くしていた。

わたしは一応、驚いたふりをした。

演技は大切だ。


正直、予兆はあった。

この数日の会話、彼の目線――

人は選択の直前に、微かに匂いを変える。


わたしは彼に一つだけを確認した。


「死ぬかもしれませんよ?」


それに対し、彼はためらいなく答えた。


「ここにいたって死ぬときは死ぬ。だったら外の方がマシだ」


良い返答だ。

生を選ぶのではなく、停滞を拒否した者の言葉だ。


町を出る際、門の前で数人の兵士が見送りに来ていた。

彼らの表情は、送るというよりも「送り出された」ような顔だった。

仲間の決断に口を挟まず、ただ見ている。

あれが置いていかれる側の人間の顔だ。


街道は静かだった。

雲は高く、風は乾いていた。

理屈抜きで歩きたくなるような天気だった。



道中、少年と男が話していた。

神殿の話、訓練の話、これからの話。

少年の言葉はまだたどたどしいが、前に出るようになった。

これは感情の芽生えというより、「感染」だとわたしは思った。


言葉を持つ者の近くにいれば、無言の者もやがて音を持つ。

それが文明であり、伝播の本質だ。



明日には次の集落に着けるだろう。

道はまだ長く、終わる予定もない。


だが、今日ひとつだけ確かなことがある。


旅の人数は、今朝より一人だけ増えた。

それだけで世界の見え方は、少し変わる。


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